第3話 生還
「はぁはぁはぁはぁ。これで10匹……」
時空の歪みの中でも時間の流れがある。暗くなってきた草原。ゴブリンが居なくなることがない草原。
ある一定の間隔で生まれてくる。休む暇もない。
「サカキさん。休んでください。ゴブリンの相手は僕らがやります」
「す、すみません」
「謝らないでください。ゴブリン以外が来たら頼らないといけないですから」
ゴブリンなら男の人達だけでも倒せる。彼らもゴブリンを倒してレベルが上がるかもしれないという期待もある。
でも、レベル1の人がモンスターを倒したら必ず2になるようになってる。この世界のルールみたいなものね。
だから彼らは絶対に2レベルにはならない人達。残念だけど、希望はない。
「日が上がって来た」
「も、もう無理だぞ……」
朝日が上がる。暗くて周りが見えない草原に光が射す。見えるようになると別の恐怖が現れる。大きなモンスター。
「オークだ……」
「え!?」
エザキ君の声に私も視線を向ける。ゴブリンの3倍程の身長のモンスター。Dモンでしか見たことのないモンスターだ。
「オークの攻撃力って1000あったよね?」
「……はい」
「防御力は?」
「500ですね」
「私の攻撃力は100……」
ゴブリンのこん棒を更にプラス10した。それで100の攻撃力を得た。あんな大きな相手に5回も攻撃を当てないと、防御力を貫通できない。
「サカキさん! 安心してください! ゴブリンの攻撃力はDモンでは100でした」
「え? あ! そうか。Dモンはあくまでもここをモデルに作ってるカードだったわね」
エザキ君の言葉で勇気の火が灯る。ゴブリンなんて防御力50あったんだからね。それを私の体重で倒せるんだから……やっぱり私の体重重いのかな?
って言ってる場合じゃない。
「フゴ!」
迫りくるオーク。錆びた槍を持つオークは私に迫ってくる。豚っ鼻の鼻息で草原の草がなびく。恐ろしい、だけど、私が前に出ないと、一撃で致命傷になる。
こん棒と槍、リーチでも勝てない相手。でもやるっきゃない。
「こ、こっちだオーク!」
「エザキ君!?」
エザキ君が石を投げつける。見事なコントロールでオークの目に当たる。目つぶしは聞くみたいね。オークは目を抑えて顔を赤くさせる。
「今ですサカキさん!」
「危ないエザキ君!」
エザキ君の声でオークを見つめた。オークの標的は私じゃない。持っている槍を投げようと構えてる。
鋭く放り投げられる槍。槍はエザキ君の太ももに食らいついた。
「ぎゃ~~!」
けたたましい叫び。大量の出血、私は彼に駆け寄る。
「だ、ダメです! 早く今のうちに攻撃を! 相手は素手ですから!」
「エザキ君……」
痛みで顔が青くなっていく彼。それでもこの子は私達のことを考えてる。私は振り返ってオークへと攻撃を繰り出す。
「フゴ!」
オークは素手でも怖気づくことはない。腕を振り回して襲い掛かってくる。こん棒でその腕を叩く。
一回、二回、三回、腕を叩くとオークは手を抑え始める。利いてる? 武器がどれだけ大事かが分かる。戦うことなんて初めてのことだけど、オークの視線で何がしたいのかが分かる。
「狙わせない」
エザキ君を狙うオーク。何度も何度も叩きつける。悶絶するオークは倒れて動かなくなる。
「サカキさん。流石です」
「エザキ君……」
槍が刺さったままのエザキ君。どうすればいいのかもわからない。
「抜いちゃダメだ。血が噴き出るぞ」
「で、でも」
おじさんが槍に触れようとすると声を上げる。すぐにでも治療しないと。エザキ君は死んじゃう。
『レベルが上がりました』
「レベルなんてどうでもいい。エザキ君死んじゃダメだよ!」
レベルが上がったことを知らせてくる声。今、そんなこと気にしてる場合じゃない。人が死ぬか生きるかの瀬戸際。
「服を使ってくれ。少しでも血が出るのを抑えるんだ」
おじさんが服を差し出してくる。それでも止まらない血……このままじゃ。
「ご無事ですか!」
「あ!」
空から声が聞こえてくる。次元の歪みから冒険者が降りてくる。縄を使ってるんだ。
「こっちです! 助けてください!」
「これは酷い、オークにやられましたね。でも、皆さんで倒したんですか? 凄いな~」
冒険者は世間話をするように近づいてくる。早くエザキ君を助けてほしいのに。
「すぐに回復させます。【ヒーリング】」
「え……」
冒険者はエザキ君に手をかざす。白い光が彼の怪我に注がれていく。
「痛いですけど我慢してくださいね」
「は、はい。ぐ、ううう」
槍を抜きながら回復してる? 凄い……魔法ってやつなのかな?
「あ、うう……」
「エザキ君! エザキ君!」
「痛みで気を失ってしまったんでしょう。失った血は戻らないのですぐに外へ連れて行きます。自力で上がれる人はどんどん上がっていってください」
縄が3本時空の歪みから下りてくる。男性は次々と上がっていく。上がれない人は回復魔法を使った人がおんぶして運んでいく。私は一人で上がれた。レベルが上がったおかげかな? かなり体が軽く感じる。
「あなたが冒険者になった方ですね。一緒に来てください」
「……はい」
回復魔法を使ってくれた冒険者が外に出た私に声をかけてくる。私は嫌だったけど、従った。冒険者になったら登録をしないといけないっていう法律があるって聞いたことがあったから。
知らなくていい法律だとおもったんだけど。まあ、今はみんな無事に出れてよかった。




