第2話 ゲートのその先
カード化したこん棒を眺める。
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【ゴブリンのこん棒】
【攻撃力5】
【防御力1】
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Dモンのカードとほとんど一緒だ。新しいパックを買うよりも嬉しい……。早く帰らないと!
「どうやって帰るんだ?」
「わからない!」
「騒ぐな。モンスターが来る」
同志達が騒ぎ出す。あまり大きな声を上げるとモンスターが気付きだす。ゴブリンなら倒せるかもしれないけど、他のが来たら大変なことになる。
「ゴブリンはカード化できないんですね」
「あ、そういえば……。残念」
「ははは。えっと、僕は江崎 英明」
「あ、私は榊 歩美です」
エザキ君はゴブリンを調べながら自己紹介をしてくれる。
ゴブリンもカード化できたらよかったんだけどね。戦いなんて私はできそうにないし。
「あの空の時空の歪みに入れたら帰れるんじゃないか?」
「ええ!? あの高さに入るの?」
空を見上げるみんな。木よりも高い位置にある門。あれに入るには階段を作らないとダメだよね。
「と、とにかく救助が来るまで生き残ろう」
「生き残るって。モンスターと戦うの? そんなことできないよ!」
声を上げる男性に怯える女の子。この中で戦えるのはもしかして私だけ? 職業を得た私しか戦えないよね?
「サカキさん。無理しないでください」
「で、でも。私しか武器を持てないから」
カード化したこん棒を手に持って立ち上がる。エザキ君が心配してくれるけど、私しかできないならやるしかない。
あのパワハラ課長をぶん殴るような気持ちでやればいいんだ! ……思い出したら殴りたくなってきた。
「キャ~!? ゴブリン!?」
「出たわね~!」
女性の声で振り返る。
そこには私のお尻で倒れたゴブリンと同じモンスターが見えた。急いで駆け寄ってこん棒を振り回す。
「カキ~ン!」
困惑するゴブリンの頭をホームラン。勢いよくぶっ飛んでいくゴブリンは動かなくなる。
「倒せた?」
「あ、はい。死んでます……Dモンのカード情報って正確ですね。ゴブリンは弱い」
エザキ君がゴブリンの調べてくれる。生物の命を取ることに不安を感じていたけど、あまり罪悪感がない。
もしかしたら職業を得たことで適応しているのかもしれない。勝手な解釈だけど、助かる。拒絶反応で戦えないとみんなを助けられないしね。
「男性なら倒せるかもしれない。倒せたらレベルが上がって職業が手に入る」
「まじか! よ~し!」
エザキ君の声で男性にやる気が満ちてく。私みたいな人が倒せたから自信がついたのかもしれない。恐怖を感じるよりはいくらかましよね。
「ハァハァハァハァ。俺は倒してもレベルあがらねえや。才能無し」
「こっちもダメだ……。軍隊が退却する羽目になるわけだ。確率が悪すぎる。冒険者にならなくてよかった」
出てくるゴブリンを何人かで倒してみてる。男性は一人もレベルがあがらない。彼らが言っているように確率が悪すぎる。
10人程の中で私だけ。もしかしたら女性が多いのかな?
「エザキ君もダメだった?」
「は、はい。もしかしたらって思ったんですけどね」
こん棒をいくつもカード化して彼に話しかける。冒険者に憧れがある子も多い。残念だな~。
「更にレベルは上がらないですか?」
「うん。あれから2匹倒したけど、ダメだね~」
「そうですか。もしかしたらレアな職業とスキルなんじゃないですか? レアな職業だと必要な経験値も高くなりますし」
レアな職業とスキルか~。カード化は確かに便利だけど、モンスターを召喚できるわけでもないし。そんなに高くなさそうだけどな~。
「スキルの前に星のマークがついていませんか?」
「星のマーク? ああ五つ星のマークがついてます」
「ええ!?」
エザキ君が驚愕してる。五つ星のマークがダメだったのかな?
「それ激レアですよ。カードで言うとLRとかSSRです……」
「ええ!? もしかして、政府が管理するようなレア度?」
「……はい」
が~ん……。政府に生活を管理されてしまう。今からでも秘匿に出来ないだろうか?
「救助が来たら経緯を説明することになります。みんなを助けることになるサカキさんのことはみんな話すと思います」
「そうだよね~……」
エザキ君が私の考えてることを察して残念そうに呟く。
カード化のスキルがそんなにレアだとは思えない。もしかしてまだまだ成長するスキルなのかな?
「あれ? カード化したこん棒が光ってますよ」
「え?」
カード化したこん棒を集めているとエザキ君が声を上げる。カードが光る……もしかしてこれって?
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【ゴブリンの棍棒を複数確認しました】
【合成しますか?】
【YES/NO】
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合成……。カードゲームでさんざん見た光景。こん棒が強くなるってことか。今は助かる。YESよ!
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【ゴブリンのこん棒+10】
【攻撃力50】
【防御力10】
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単純な成長率。プラス10で10倍になってる。これならゴブリン以外も行けるかもしれない。
「ゴブリンの死骸って売れるのかな?」
「ゴブリンは売れないけど、魔石は売れるって聞きます」
「じゃあ、それをみんなに分配するか。苦労してる分、還元しないとね。私はこん棒貰っちゃったし」
エザキ君に声をあげると答えてくれる。ゴブリンの心臓の魔石が高値で取引される。と言ってもゴブリンの魔石だからそれほど高くないって聞いたな~。
「魔石はバッテリーと同じように使われるようになりましたしね。環境にいいエネルギーとして注目されてますよ」
「あ、そういえばスマホにも使われてるよね」
時空の歪みは沢山の資源をこの世界に与えてくれた。被害と一緒に有益なものも与えてくれたんだよね。
でも、その有益なもののせいで時空の歪みをどうにかしようと考えることが無くなってしまった。
そのせいで悲劇も起こってしまったんだっけ。時空の歪みを禁止したインドでモンスターが出てきてしまった。沢山の一般人が被害にあって、インドの半分が血を見ることになった。
今回の秋葉原の時空の歪みがあんなことにならないようにしないと。
「救助遅くないか?」
「東京で起きたのに遅いよね」
「……北海道に冒険者が集まってるからか?」
『あ……』
みんなの疑問で気が付く。
日本の時空の歪みは北海道にあるものだけ。今回の秋葉原での発生は寝耳に水。東京にいる冒険者はもしかしたらいないのかもしれない。
「お、おい。それじゃ一日くらいかかるんじゃないか?」
「その間。ゴブリン以外が来たら……」
私達はゲートの中で一日を過ごすことになる。戦えるのは私だけ……生き残ってやる!




