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第1話 サカキ アユミ

 2126年 冒険者の時代になった。

 主要な国々に現れた大きな時空の歪みによって世界が変わったのだ。

 時空の歪み、大きな門のようなそれは地面に急に現れた。当初は軍を投じた国々。大きな被害を出してしまう。

 現代兵器の悉くを無効にしてくる歪み。通った先で待ち構えるはファンタジーの住人達。

 スライム、ゴブリン、オーク、コボルト。止まった戦車はただの鉄の塊、銃も撃てなければただの鉄のこん棒。

 屈強な兵士達の多くは少しの戦果を残した。だが、相手が強力になるにつれ被害が多くなった。

 被害が増えたのと同時に成果も増えた。兵士の中に異能に目覚めるものが現れた。

 スキルと言われる異能は多種多様。物をいくらでもしまえるといったものや、火を操るものなど。スキルにはレア度が星で示される。一つ星から五つ星までのレア度があり。五つ星にもなると国が管理するようなものになる。

 国々は沸き立った。新たな人的資源に高揚を隠せずにいた。日本はいち早く次元の歪みを一般に開放した。

 未成年は禁止され、成人を迎えたら許可される。簡単な身体検査だけで通された先は地獄。

 入り口付近の魔物は狩りつくされ、奥へ奥へと進む一般人。初めて戦うのはオーク、はたまたリザードマン。狩るものから狩られる者へと変わっていった。


 そんな激動の時代から50年後。私は東京でカードゲームに熱中していた。


「新しいパックが出る~! どんなデッキが組めるかな~」


 次元の歪みの先にいるモンスターの書かれたカードゲーム。ディメンションモンスター、略して【Dモン】の新しいモンスターが売られる。

 早く仕事を終わらせて買いに行かないと。


「おい! 榊(サカキ) 歩美(アユミ)! これもコピーしとけよ! 使えねえな~!」


「はい? それはあなたの仕事でしょ? なんで私が?」


「あぁ~? 何口答えしてんだ! お茶しか入れられないのか? 言われなくても仕事を探せ! これがその仕事だ!」


「はぁ~?」


 早く仕事を終わらせたいのに仕事をよこしてくる神崎課長。自分が仕事遅いからって私によこしてくる。

 私はちゃんと自分のプロジェクトの資料はまとめてある。明日の会議でプレゼンするだけ。それなのにこの人は。


「やるわけないじゃん」


「はぁ? やるんだよ! 俺は帰るんだからな。コピーしてなかったら明日後悔するぞ」


「後悔するのはあなたですよ。あ! 人事部ですか? パワハラされてます!」


「な、何電話してんだ!」


「じゃあ、お疲れ様で~す!」


 神崎課長の言うことは聞かずに提示で上がる。私は私の仕事を終わらせた。彼が彼の仕事をするのは当たり前よね。

 この2126年にまだあんな奴が生きてるなんて、時代錯誤も甚だしい。あんなの百年前に絶滅したはずなのにな~。


「ふんふんふ~ん。Dモン楽しみだな~」


 私は急いで電車に乗り込む。秋葉原のショップで予約してある。

 あそこで予約するとスリープとかがタダでもらえるんだよね~。おまけも沢山もらえるからあそこ以外では買えない。


「あ! 列ができてる! サイコ~ウ!」


 これだよね。人気が目に見えて嬉しくなる。Dモンはもっと人気が出てもいいものだと思う。

 それから1時間程して店の前までたどり着いた。やっと買える、そう思った時。地面に門が現れた。穴のように開いた門に私達は入ってしまった。


「キャ~!」


 私と周囲にいた人は別の次元に落とされた。二階程の高さから落とされた私はお尻に何かが当たって痛みが走る。


「いたたたた……。何が起こったの?」


 周りを見回すと同じ同志達が驚き戸惑ってる。一面草原の風景。まるで北海道……。北海道というと頭に浮かぶのは時空の歪みだ。


「ど、どうなってるんだよ!」


「これ時空の歪みの先の世界じゃねえか?」


 混乱する同志達。私も不安になってくる。でも、そんな不安もかき消すことが起きた。


『レベルが上がりました』


ーーーー


 サカキ アユミ


レベル2 職業カードゲーマー


【スキル】【★★★★★カード化】を取得しました。


ーーーー


 レベルが上がった声と共に目の前に透明のウィンドウが現れた。

 スキルが手に入った? なんで私が? レベルアップ?


 訳の分からない状況にお尻の痛みを思い出す。お尻の先を見ると緑色の肌をした小人が泡を吹いて倒れているのが見える。


「きゃあ!? ご、ゴブリン!?」


 私の落ちた先にゴブリンがいたみたい。私の体重で死んでる? ……ゴブリンは最弱のモンスターだよね。こんなに弱かったんだ~……。決して私が重いんじゃないよね?


「君凄いね~」


「あ、あはははは……」


 メガネをかけた同志に褒められる。しかし嬉しくないな~。お尻で倒しましたなんて恥ずかしすぎる。


「このこん棒が使えれば使った方がいいよ。僕らは持てないから」


「え? 持てますけど」


「それなら持ってた方がいいよ。僕らは無職だから装備できないんだ」


 メガネの青年はそう言って教えてくれる。Dモンの説明であったような気がする。

 私達は時空の歪みの先では赤子になる。レベルが上がって初めて戦闘ができるようになるらしい。

 職業という力を手に入れないといけない。そんな私はカードゲーマー……これって職業なの? 嬉しいけどさ~。


ーーーーー


【ゴブリンの棍棒を確認しました】


【カード化しますか?】


【YES/NO】


ーーーーー


「え……」


 透明なウィンドウに選択肢が現れる。試しておかないといざという時に使えない。YESを選ぶとこん棒がカードに変わる。キラキラしたカード、私はそれを見て顔が高揚するのを感じた。


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