第11話 やる気爆発
深い眠りの中。音が聞こえる。震える機械の音……。
「はぁ!? 今何時? あぁ~、寝過ごした~!?」
缶ビールの散乱する部屋。ピザの残り香がお腹を鳴らす。
でも、何かを食べる時間もない。そして、無情なインターホン。
『サカキ様。お迎えに上がりました』
「あ、はいはい。すみません。寝過ごしちゃって。1時間待てます?」
『1時間ですか? それは流石に』
「あ、じゃあ30分でいいです!」
お迎えの運転手に声を上げる。運転手のごつい男性は完全にドン引きしてる。
女性は旅立ちの準備に時間がかかるのよ。って急いでシャワーとか浴びないと。
「ハァハァ。すみません、お待たせしました」
「あ、はい。急がせてすみません」
急いで準備をして車に飛び乗る。待ってくれてた運転手に深く謝る。やっぱり都庁の近くに引っ越すべきね。お酒はやめられないし。
「あ! サカキさん。急いでください!」
「あ、え? ミズキさんどこへ?」
「倉庫ですよ。すぐにプラス装備を作ってもらわないと」
都庁に着くとミズキさんに腕を引っ張られて倉庫へと走る。
「サカキさんは冒険者がチャンネルをやっているの知っていますか?」
「え? あ、はい。丁度昨日見ていました。ウエダさんの」
「そうですか。それなら今の状況も少し理解できますね」
倉庫の前にやってくると人だかりができてる。昨日の50人が一気に来たと言った感じみたい。
「昨日のお客さんの中にチャンネルをやっている冒険者が数人いました。そのすべての人が自分の成長を配信したんです。それでその装備を手に入れようと来てる」
「この人たちが全部?」
「そうです……」
配信って凄いな~。と思いつつ、ウエダさんのように感じた人が他にもいたことにやりがいを感じてしまう。
「既に鍛冶職はフル稼働しています。昨日よりは少ないので。すぐに終わってしまうかもしれませんが」
「了解です」
ミズキさんと一緒に倉庫へと入る。私達以外は居ない空間でカード化と合成を進めていく。
「ミズキさん。プラスは3まででいいんですか?」
「あ、はい。すべての冒険者に配るにはそのくらいでなくては数が足りません。数に余裕ができてから更なる強化を施していきましょう」
ミズキさんは色々考えているみたい。頼りになるプロデューサーと言った感じかな。
「メイスを3本と盾を1つ。サカキさん。追加です。置いておきます」
「は~い。そこにおいてくださ~い」
強化した装備を手渡すとすぐに製作された武具が運ばれてくる。すべてミズキさんがやってくれる。
私を秘匿するためとは言え、なんだか悪いな~。
「大丈夫ですかミズキさん?」
「あ、はい。大丈夫です。これでも冒険者なので」
「え!? そうなんですか?」
「はい。ギルドマスターも他の職員も一応冒険者ですよ。ゲートの向こうに行くのを諦めた冒険者と言った感じですね」
普通の人には重い装備の入った木箱はきつい。ミズキさんを心配して声をかけると衝撃の事実を知る。
みんな冒険者だったなんて思わなかった。
「ふふ、結構常識ですよ。冒険者を管理するには同じ冒険者の方がいいだろうってことになって。引退した冒険者とかをあてがったんです。どうしても冒険者って一般人より強いから。管理しにくくなりますからね」
常識だったみたい。私ってDモン以外の知識がまるでないんだよね~。
「ミズキ~。まだ作るのか?」
「あ、ドモンさん。はい、今日はずっと作ってください。管理はこっちでするので。もうすぐアカザワさんも来ますし」
ミズキさんと話していると、倉庫の入り口から顔を出す髭面の人が現れる。
ドモンと言われたおじさんは私に気がついてニヤリと笑う。
「噂はかねがね。俺の製作物を強くしてくれてるみたいだな。ありがとよ。俺は土門だ」
「あ、初めまして。私はサカキ アユミです」
握手を求めてくるドモンさん。大きな掌は鉄のように硬くて、同じ人とは思えない。
「凄い感謝してるんですよドモンさん。鍛冶職になって初めて冒険者に役に立つものを作れたって」
「恥ずかしいからそういうことを俺が言う時に言うなミズキ」
ミズキさんとドモンさんは仲が良さそうに会話を交わす。
そうか、ドモンさんも初めて実感したんだ。なんだか仲良くできそう。
「それにしても驚きだな~。あんなにあった装備の山がこんなに少なくなって……。見ていても信じられねえ。ここ、あの倉庫だよな?」
「ふふふ、サカキさんは凄いんです。1日ですべてこなしちゃったんですよ」
ドモンさんが圧巻の表情で倉庫を見つめる。なぜか得意げなミズキさんに私も鼻が高い。
「じゃあ、俺は仕事に戻るぜ。帰るまで三つセットで装備を作っていくな」
「はい! 三つずつ揃えてください」
ドモンさんがそう言って倉庫を出ていく。もうシステム化されてるみたい。流石はミズキさんと言ったところね。
「ふぅ~、いったん休憩っと」
装備を作るのが一段落。私が合成する方が早いから結構装備が底をつく。お客さんも落ち着いてきたから席を外しても大丈夫そう。
「コーヒーでいいですか?」
「あ、いいですよ。そんな」
「安心してください。ここの自販機は無料ですから」
「ええ!? 無料……。凄い」
都庁の自販機は無料なのね。凄すぎる。
「じゃあ遠慮なく。あ、おでんとしるこがある」
「ふふ、非常のときように入ってるんですよ。たまに普通に食べます」
「わかる。しるこなんてほんとに普通に食べたいですよね」
都庁の自販機は凄いな~。色々と考えられて配置されてる。どうせなのでしるこも食べよ。
「サカキさんの仕事のペースだと明日にでもゲートに行ってもいいかもしれないです」
「あ、装備の数の関係ですか?」
「はい。ドモンさんだけしか鍛冶職は居ないからどうしても数は少なくなってしまうんですよ。3つも作らないといけないじゃないですか? それで……」
やる仕事がないならゲートに行けるってわけね。それならエザキ君との約束を守れそうね。
「今日はサポーターの試験もやってるみたいですね」
「サポーターですか? どんな試験をするんですか?」
「モンスターの情報やゲートの中での豆知識を教えていますよ。試験と行っても国家試験レベルではないので。そんなに落ちる人はいないです」
「あ、そうなんですね。安心しました」
そうか~、今日試験してるのか~。もしかしたらエザキ君がいるかもしれない。受かると良いな~。




