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裏の《百物語》 ― 木彫りの猫のはなし ー  作者: ぽすしち


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17/19

いつのまにやら居た男




 八、



 この山家やまがは、彫り物をする職人の男だけをよぶのかとおもっていたのに、その男は坊主のようだった。



『 ―― なぜというに、なにやら念仏のようなものがきこえてきたのが先なのでな 』



「ああ、それで、お坊さまがきたようだと?」



『 だがあれは、・・・この世の坊主ではなかろうよ。なにしろ龍を彫っていた男がその念仏を耳にして、いままで一度もとめなかった彫りをとめた 』



 手をとめた《木屑の男》は、念仏が聞こえてくるほうへむきなおると、ふうわり、と、いちど木のくずのかたまりにくずれ、おおきな口だけの化け物へとかたちを変えた。




『 念仏が近づいてくると、家がガタリガタリとゆれはじめおった。 彫りものをする職人をよびよせる家自体が、そういうバケモノになっておったようでな 』




 近づく者をこばむように家が揺れ、《化け物のかたちになった木屑》が戸口をふさぐように前にでたとき、板の間でそれをみていた猫の横に、いつのまにか男が座っていた。気配もないような男が、「あれはコッパか?」ときいてきた。



『 おれがそうだとこたえるとな、くえ、とゆうたわ 』



「『くえ』?」



『 おうよ。このおれに、あの木っ端クズの化け物をな 』




 念仏はまだ家の戸口あたりからきこえている。この男はどこからはいってここにいる?


 そう思ったが、男の気配が人のものではないものだとは感じていた。


「 よいか、 」と男は彫りかけの龍をさした。

「 あれが彫りあがれば、龍として動き出す。ただし、神のつかいにはならぬぞ。念がこりかたまった魂がこめられた龍は、オロチなどの、人のはなしが通じぬ災いにしかなれぬ。そうなればまず、暴れまわって人をとって喰う。そうなるまえに、おまえが喰っちまえ 」

 汚く伸びた髪をひとつにゆわき、汚い着物をきてまばらなひげをかく男は、おもしろそうにわらいかけてきた。





『 おれは男のゆうことなど聞く気もなかったが、戸口をむいていた木屑の化け物がこっちをむいて、口の中にあった目玉がぎょろりとおれを見た。からだ中の毛がさかだったわ。 とたんにとなりの男がまた 喰っちまえ とおれにゆうた 』






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