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裏の《百物語》 ― 木彫りの猫のはなし ー  作者: ぽすしち


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14/19

はじめは鼠(ネズミ)




 七、



 『 あの、キヘイジという男がおれの家に・・・いや、おれを彫った男の家にまよいこんできたのは、キヘイジも、おなじようなこころもちの職人だからだろう。 あの山家やまがはな、そういう職人の男をよぶのだ。 だがな、どの男も、おれをあの家から連れ出そうとはせぬ 』


 キジトラの猫はすこしくちをとじ、まるでわらうように横にくちをひらいた。



「 それは、どのおひとでも、キヘイジさんのように、夜中に声をかけるのでございますか?」


 真っ暗闇の中から、突然こえをかけられても、彫り物をする職人はみな、おそろしくはないのか、とダイキチは気になった。




『 おおよ。なにしろおれは、あの家では夜中にしか動けぬからな。 ―― ああそうか、まずはおれのことをはなすか。 おれはな、あの家を建てた大工に彫られたネズミよ 』



「ね・・・《ネズミ》、でございますか?」



『 まあ聞け。 ―― そうよ。はじめはねずみの彫り物だった。ちイ、とは鳴けたし動けもしたが、まだひとのようにしゃべることはできなかった。あの家の中で、おれを彫った男が、ほかの彫り物をするのをいつも見ていた。男はおれを彫るまでに、何百、何千もネズミを彫っておったが、動けたのはこのおれだけよ。 おとこはおれをみるたびに、良い出来だとほめたてたが、それから彫るものは、どれもみな動くことはなかった。 そのうちに、彫り物に命をふきこむことができる彫り師が、ほかにもいると耳にして、それを見にゆくと家をでてから、戻っては来なかった。 ―― それから数百年たったころ、家にまた、彫り物をするおとこがやってきた 』



 その男はどこかで仕事をしてきたらしく、仕事道具をかつぎ、山で迷ったすえにこの家にたどり着けたのをありがたがって家の中のようすをうかがうと、キヘイジとおなじように土間にちらかった木屑や、彫りかけの作をみつけ、じぶんとおなじ職人の家のようだと見当をつけ、主が帰ってくるのを待った。


 だが、いくらまってもだれも戻らない。





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