↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏の《百物語》 ― 木彫りの猫のはなし ー  作者: ぽすしち
六

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/19

バケモノどうし





 六、




  キヘイジを玄関まで先生がおくるあいだ、ダイキチはその黒い包みとむかいあうことになったが、布の中の猫は動きもせずしゃべりもせず。



 夜中にならないと話せないのか、それとも、ここでのようすをうかがっているのかは、ダイキチにはわからない。ただ、キヘイジに対しては、ひどく正直でまっとうな態度をとっている。


「 ―― では、夜中にフキミソで、酒でも飲みながらおはなししましょうか」


 キヘイジがでてゆくときに、開けたままにしてもらった障子のむこうにある庭の池に、まだ蓮の芽も顔をださないのをながめていたとき、まだ灯(とも)したままだった燭台(しょくだい)の火がぼっつ、と音をだし、ダイキチがむかいに目をもどしたときには、キヘイジがすわっていた座布団のうえに、どっしりとしたキジトラの猫が座っていた。



 キヘイジがいったように、そのキジトラの猫は、《いいつらがまえ》をしていた。まえあしをピンとのばしてこちらをむき、その金色の眼をじっとダイキチにそそぎ、あくびをするようにおおきくくちをあけると、ナゴウ、とおかしなこえをだし、あけたままのくちから


『 よい 池だな 』


 とこえをだし、庭をみた。




 なるほど。《こもったようなとしいった男の声》だが、ダイキチよりよほど若そうだ。

 猫がすわる座布団のまえには、中身が抜けた黒い布が結び目もそのままにある。



「 ―― おほめにあずかりまして、おそれいりましてございます。履物屋の隠居が道楽で買ったバケモノ屋敷だと、世間様ではわらわれておりますようで」



『 ただの妬(ねた)みよ  だが ―― バケモノ屋敷は言い当てておるな 』



 猫はくちをあけたままで、ちいさな牙と舌までみえる。声はそのクチというよりも、身体(からだ)すべてからでているようだった。



「 それは、 ―― わたくしのせいでございましょうか? 」

 戻ってきた先生が、ダイキチにほほえみかけ部屋へはいると、また、ダイキチの後ろにひかえるよう隅にすわった。

 だが、障子は開け放したままだった。


 ということは、先生がそれほど『あぶない』とは思わなかったということか。


 まあ、よく見なくとも、あいてはただの猫。これがいきなり虎に変わる事はどうやらなさそうだ。



『 おお そうともいえるがそれだけでもなかろう。 どれ、 バケモノどうしのよしみで、ここはひとつ、おれのはなしもきいてくれるか 』



「それは、ここで頂戴してもよいおはなしで?」



『 蝋燭もまだともっておろう。 ここでひとつ、―― おれもはなしをおさめようぞ 』



 キジトラの猫があいていたくちをさらにあけ、舌をだしてくちのまわりをべろりとなめると、ダイキチをみてはなしだした。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。