お寺と猫ではなしあい
「 ・・・神棚の横の棚で、そんなふうにおどしてきやがるんで。おれはためしに包みをさわりましたが、布のうえからさわっても、猫のかたちはしてるがただの堅い木だった。なのに、次の日の朝に、またあのキジトラの猫が家の中にいて、そんで棚の黒いつつみをみたら、 ―― なかみがないみたいに、つぶれてるんですよ。そこでようやく、こりゃあきっと、陽があるうちは本物の猫になって、夜になると木彫りの猫にもどるんだとわかりまして、かみさんもこどもも本物の猫だとおもって撫でたりしてるが、ほんとに『さわり』がでるかもしれねえんで、そこでヒコさんにはなしてみたしだいで・・・」
ダイキチはうなずきながら、先生と目をかわし、うなずきながらじぶんもお茶にてをのばした。
「ヒコイチさんも心配しておられましたからなあ。早いに越したことはございません。 ―― それではキヘイジさん、その猫の彫り物。わたくしのほうでおさめてよいのですな?ことによると、寺におさめるだけではすまずに、お焚き上げということになるかもしれません」
この男なら、火にくべるのはご勘弁、とでもいうかもしれない。
キヘイジはお茶といっしょにだされた練り菓子をつまんでそのままくちにほうりこみ、くちをうごかしながら黒い包みをじっと見ている。
ゆっくりとのみこみ、さいごをお茶でながしてから、布のうえから猫の背中とおもわれるところを、押すようになでた。
「 ・・・うん。そりゃ、お寺さんとこの猫とで、はなしてきめてくれりゃあいい。夜中になりゃあこいつは話せるんだ。きょう、こうして木彫りのままここへ来たのだって、きのうの夜中におれとはなして、ご隠居のところに行くには、このほうがいいって、猫が決めて、この格好できたんだからよ」
ほめるようにそういうと、キヘイジはすわりなおして膝に手をおき、それじゃあこいつのことはたのみます、と頭をさげて帰っていった。




