T社への報復
「そのパソコンに、首謀者とやり取りしたメールがあるはずです」
「こいつはハッカーです。不用意にそのパソコンを触らせると、データを消されてしまう可能性があります。警察署での解析が手に余るようでしたら、KSセキュリティ社で警官立ち会いのもと、共謀犯とのメールを確認しますが、いかがでしょうか?」
「上司と相談して、北山さんに連絡いたします」
北山が名刺を警官に渡す。
息を切らせた野口が部屋に入ってくる。
蓮君が野口のもとに走り寄る。
野口が蓮君を抱きしめ、親子で泣いている。
気づいてすぐに、自宅で待つ母親に電話をかけていた。
警官たちが次々と部屋に入り、パソコンや証拠になりそうなものを押収していく。
北山が鈴森会長に連絡を入れる。
任務完了で、SS警備は会社に戻ることになった。
北山は調査部に戻り、今後の対策会議に臨む。
俺は北山さんから連絡を受けて、蓮君が無事だと知りホッとしたが、田沼に対する怒りがこみ上げてきた。
自宅に戻った野口と子供に、母親が抱きつく。
とにかくよかった。怪我もなく無事で、本当によかった。
「何か食べましょう。蓮の無事な姿を見たら、お腹が空いたわね」
「僕もお腹すいたよ」
「何も食べさせてもらってなかったの?」
「僕が食べなかったんだ」
「とにかくお腹いっぱい食べてくれ。食べるものがなければ、大急ぎで近所のスーパーに買いに行くぞ」
「じゃあ、お願い。蓮の好きなもの、いっぱい買ってきてね」
「念のためだ。ドアには鍵をかけておいてくれ。何かあれば、俺の携帯に連絡だ。ドアの前に来たら、携帯に電話する。それ以外は何があってもドアを開けないこと。……もう大丈夫だと思うけどな」
「分かったわ」
翌日、警察から北山に電話がかかってきた。
パソコンの中身を確認してほしいとのことだった。
KSセキュリティの社員と北山が、すぐに警察署に出向き、警官立ち会いのもとパソコンの中身を確認することになる。
社員が、彩乃から渡されたハッキング用USBをパソコンに差し込むと、ログイン不要でメールを閲覧することができた。
山口とT社幹部社員との間でやり取りされたメールが見つかる。
複数のメールから、T社幹部社員が裏社会部隊に指示して蓮君を誘拐させ、山口が子供を1週間預かるよう命じられていたことが判明した。
前回の逮捕の教訓から、田沼は決して表に出ないようにしている。
このままでは田沼を逮捕できない。
警察署から戻ったKSセキュリティの社員が、USBを未来技術研究所に返却しに来た。
受け取ったUSBには仕掛けが施されており、パソコン内のデータやメールの中身がすべて自動でコピーされていた。
3人で話し合うまでもなかった。
「やっちゃうか」
「賛成〜」
うれしそうな彩乃ちゃん。
山口がメールでやり取りしていた幹部社員に、ウイルス爆弾メールを送ることにした。
まだ山口の逮捕を知らなければ、彼からのメールは必ず開くはずだ。
山口になりすましてメールを送る。
メールを開けば、T社は終わりだ。
***
T社では――。
山口からのメールを、幹部社員が開いてしまった。
会社のサーバーも、社内のパソコンもすべてロックされる。
「チィッ、またやりやがったな、あのガキども!」
田沼がゴミ箱を蹴飛ばし、あたりかまわず怒鳴り散らしている。
「社長、警察が来ています。どうしましょう」
「佐々木、いいか! 誘拐は、すべてお前が考えて指示したことだ。俺は関係ない。だが、黙って刑務所から出てきたら、3000万円をお前にやる。俺の名前を出せば、その3000万円は手に入らないからな。お前の家族も無事だと思うなよ。忘れるな」
「分かりました。社長、必ず3000万円くださいよ。出所した時に3000万円がなければ、社長のことを警察に話しますからね」
「……俺を信じろ」
(この社長のどこを信じればいいというのだ……しかし、それ以外に選択肢はない)
佐々木は、警察に連行されていった。
それにしても忌々しいガキどもだ。
次はお前たちだからな。
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