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転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


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太一と由香里

2018年2月――


千葉太一も町工場に勤めていた。

彼も、日々の暮らしの中で、相馬家に対する恨みは忘れつつあった。


太一の母親が仮出所し、太一の住むアパートを訪ねてくる。

母親はすっかり憑き物が落ちたように、おとなしくなっていた。

太一が「おかえり」と由香里に声をかけると、由香里もニコリと笑う。


「まだ見習い扱いで稼ぎが少ないんだ。生活は苦しいけど、母さんは養えるから安心して」


「ありがとう。母さんも何か仕事を見つけるから大丈夫。2人で静かに暮らしていこうね」


「今日はお酒とツマミも買ってあるし、母さんも飲もうよ」


「ありがとう」


「かんぱ〜い。長い間、お疲れさまでした。刑務所では何を考えて過ごしていたの? やっぱり相馬家のことを考えてたの?」


太一が杯を掲げてそう問いかけると、由香里はしばらく考え込み、ゆっくりと箸を置いてから口を開いた。


「ええ、あのオンボロアパートでね……あなたも聞いていたと思うけど、実さんが相馬社長のことをずっと悪く言っていたのよ。刑務所で一人になって、今までのことを静かに振り返ってみたの」


彼女はお酒をテーブルに置き、話を続ける。


「実さんは、10年ほど相馬さんの会社からお金を騙し取っていたの。でも、先代の社長も和也社長も、実さんを心から信じて、大事な仕事を任せていたのよ」


由香里の声には、ため息とともにどこか重い後悔が混じっている。


「実さんは、『騙される方が間抜けだ』って平然と笑っていた。私も刑務所で色々な人と話をしてきたけれど、生活に困って悪さをした人はいても、自分を信じてくれた人から金品を騙し取るような人には、あまり出会わなかったの」

「……詐欺を働いた人もいたけど、どの人に聞いても、自分を信じてくれた人を平気で裏切るような話は出てこなかったのよ」


彼女は顔を上げ、小さく目を潤ませながら言葉を続ける。


「だから、実さんって一体どういう人だったんだろうって、ずっと考えてたの。和也社長も、信頼していた人に裏切られて、どれほどがっかりしただろうって。もちろん、私も信頼されていたはずなのに、実さんの横領に加担してしまっていたのよ」


その言葉には、深い悔いと反省の色がにじんでいた。太一は黙って母の顔を見つめ、言葉を飲み込む。


「私は、本当にバカだったと思うの。和也社長を恨む資格なんて、私にはないわ」由香里はそう言って、ゆっくりと首を振る。


太一は何も言わず、母の話に耳を傾けている。

そして太一が語り始める。


「今は、職人の見習いとして工場に勤めているけど、社長の信頼に、皆が真剣に応えようとしている。皆がいいものを作ろうと努力している。父さんは、性能の悪い設備機器を騙して取り付けていたんだよね」

「職人はそんなことをやるべきじゃない。モノ作りは誇りを持ってやるべきなんだ」


その言葉に、太一は少し笑みを浮かべる。由香里は続ける。


「太一は成長したね。その会社の社長さんに、お礼を言わないといけないね。私たちはこれから貧乏でもいい、誠実に生きていきましょう。ずっと先になるかも知れないけど……許してもらえるか分からないけど、和也社長とその家族にお詫びをしましょう」


由香里の瞳には決意が灯っていた。

「母さんは前科がついてしまったけれど、働ける場所があれば、どんな仕事でも一生懸命やるつもりよ。明日から職を探すわ」


***


2018年3月――


千葉の襲撃事件から、随分と時間が経ったな。

ここまで無事に生き残ったのだ、死亡フラグは消滅したと思いたい。


俺たちは、2016年に3人でS大に飛び級入学した。

単位も随分と取得していたので、短期間で卒業させてもらった。


学長からは「このままS大の研究者として大学に研究室を作って残ってくれないか」とお願いされたが断った。


俺には、KSセキュリティ社と未来技術研究所があるし、大学の研究者なら、いつでもなれるしね。


***


それから月日が過ぎ――


俺は19歳になった。

来月には、優子と結婚することになっている。


早くはないよ……優子とは前世から一緒だから、もう随分長く人生を共にしているし、自然の成り行きだと思う。


来月の結婚式には、多くの人たちがお祝いに来てくれることになっている。

この人生では、たくさんの人との繋がりができているからね。

住むのは秋葉原ビル。10Fが俺たち、9Fが両親が住む。


ところで……

陽一君はF社に入社し、将来の社長を目指して修行中だ。鈴森会長は「もう10年は陽一君のために頑張る」と公言している。


彩乃ちゃんは、なんと陽一君とラブなのだ。

手術ロボット開発で何回か会って話しているうちに、2人がすごく気が合うことが分かったそうだ。


その手術ロボット開発だが、アメリカの会社と合弁で作ったI社が大成功を収めている。


優れた医師の手技を学習したAIシステムが微細な縫合作業をサポートしてくれたり、AIによる医療データ診断を活用できたりと、多くの病院が納入を待っている状態だ。


雅人さんは、F社の次期社長と将来結婚……?

あの鈴森会長と親戚に……?

彩乃で大丈夫なのか?


いつもその話題で、父さんたち3人は仲良く酒を飲んでいる。


***


未来技術研究所は社長として継続するが、来年からはKSセキュリティ社の社長に就任することになっている。

KSセキュリティ社は既に売上が500億を超えており、社員数も300人に増えた。


去年から、KSセキュリティ社の副社長として経営を勉強中だ。

リーダーとして300人もの社員を引っ張っていくのは、自分に向いているか分からないが、頑張ってみようと思っている。


もちろん優子にも手伝ってもらう。

共働きだからね……助け合わないとね。


経営とかリーダー論とか、困ったら鈴森会長に教えを仰ごう。

もう俺のお祖父ちゃんみたいなもんだしね。


それにしても、高齢なのに依然としてオーラがすごい。

俺もあんな迫力のあるリーダーになれるのかな。

まあ、自分の身の丈に合ったリーダーになればいいよね。


***


とにかく、3家族の両親たちも元気で良かった。

俺も19歳まで生き延びることができたし、この人生に大満足だ。

さすがに、もう死亡イベントはないだろうと願いたい。


考えてみれば、相馬家は前前世で死んでいるし、村岡家の両親は前世で死んでいる。

優子にしても、俺たちと出会わなければ、前世ではどうなっていたか分からない。

坂下家も同様に、俺たちと出会わなければ死んでいたかもしれない。


そう考えると、この3家族は本来であればこの世にはいない人たちばかりということになる。


この人生における俺たちの身の処し方は、人の役には立つが、あまり出しゃばらないのが良さそうな気がする。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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