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転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


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田沼秀次リターン

2014年9月――


田沼秀次が仮出所した。


彼は、未来技術研究所の乗っ取り事件で、警察に自分が捕まりそうだと知ったとき、急いで妻と離婚した。


それにともない、離婚の慰謝料という名目で、自身のすべての預貯金と自宅を妻に譲渡した。

偽装離婚をすることで、自分が再起するための金をなるべく多く残せると考えたのだ。


妻には、財産を守るための偽装離婚であることを告げていたし、その態度から、それに同意してくれているものだと思っていた。


仮出所してすぐ、自宅へ向かう。

妻名義にした自宅の前まで来て、掛かっている表札を見ると、表札の文字が妻の旧姓でもなく、まったくの他人の名前に変わっていた。


おかしい……いったい……どういうことだ?

刑務所を出たら妻と再婚し、離婚によって妻に預けた金で再び会社を作るつもりだったのに……騙されたな……


全財産を持ったまま、妻は行方不明……自宅も売却……

騙しやがって……怒りがこみ上げてくる。


深呼吸をして落ち着くと、小さな声で「やられたな……」と呟く。

所詮、似た者夫婦か……やるな。


まあいい……これから進む道は修羅の道だ。家族なんかいてもしかたがない。

あれだけの金があれば、俺の子供も生きていけるはずだ。

さらばだ……永遠に!


本来なら、全財産を失って途方に暮れるところだが、田沼は違っていた。

そのまま、両親が眠る墓のある場所へ行くようタクシーに告げる。

タクシー代は、俺の最後の所持金……これで残金は数百円だな。


田沼は墓地の静けさに包まれ、両親の墓前に座り込むと、ふと目を閉じ、静かに呟いた。

「俺は、まだ終わらないぞ……あの世で見ていてくれ」

その言葉には、彼の執念が込められていた。


手を合わせた後、田沼は周囲を再確認する。

誰もいないようだ。


田沼家の大きな墓、両親が眠るはずの納骨室の扉を開けると、そこに納められていたのは両親の骨ではなかった。

金地金きんじがねと現金が、目一杯詰め込まれている。


危ない橋を渡りながら会社を大きくしてきた田沼は、自分が逮捕されることも当然想定していた。


再起を果たすには金がいる。妻との偽装離婚で資産を残すのもその一つだったが、妻が裏切ることも見越していたのだ。

田沼はそういう人生を歩んできたし、これからも歩んでいくだろう。


この金を失ったら終わりだ。

再度、周囲を確認しながら、現金と金地金を急いで鞄に詰め込む。


(情けない姿だ……俺にこんな姿は似合わない……!)


「覚えていろよ。俺はこのままでは終わらない! もう一度会社を立ち上げてやる。悪徳金貸しだろうが、詐欺だろうが、何でもやってやる! 金は力だ……金を増やす! ガキどもも、鈴森も地獄に落としてやる。待ってろよ!」


重い鞄を抱えながら墓地を後にする。

しばらく道を歩いていると、道端にベンチが置かれているのが目に入った。

そのベンチに腰掛け、一息つく。


(さて、これからどうする……?)

とりあえず渋谷に店を構えるか。現実を見ずに夢だけ追いかけているITベンチャーの若造どもから、金も技術も根こそぎ奪ってやる。

フフフ……金儲けなんか簡単すぎる。


部下がいるな……。

何でも言うことを聞いてくれる奴で、ITに詳しい奴だ!

あいつか……首にしたあのハッカー社員。名前は山口と言ったよな。


裏社会部隊に始末するよう伝えたが、奴らも俺の逮捕のゴタゴタで、始末する暇はなかったろう。


……電話をかけてみるか──。

呼び出し音が五回鳴ったところで、山口が受話器を取った。


「ああ、田沼だ。おまえ、今何をしている? 俺のところで働かないか?」

受話器越しに低く鈍い声が響く。


──しばしの沈黙。山口は言葉を呑み込み、力なく返事をするしかなかった。

「はい、よろしくお願いします」


「まあ、いい。渋谷駅前の──というホテルのロビーに来い。18時に待ち合わせだ。わかったな!」

田沼の口調には強引さと余裕が混ざっている。


「はい、社長」

山口は小さくうなずき、受話器の重さを感じながら応答した。


「逃げたら、奴らをおまえのところに向かわせる。いいか、わかったか?」

短い脅しの言葉が冷たく突き刺さる。


「は……はい……」

震える声で答えた直後、電話は切れた。


しばらくして、田沼はタクシーに飛び乗り、渋谷へ向かっていた。

これまで使っていた裏社会の部隊はもう使えない。新たに荒事のできる手先を見つけねばならないのだ。


だが、そういう連中は町のあちこちに転がっている。

あいつら、金さえ積めば、彼らは何でもやってくれるからな。


さあ――ビジネス開始だ。

渋谷を、ITベンチャーの墓場にしてやるか。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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