14歳の8月が近づく
2012年6月――
小学校を卒業し、俺は中学生になっている。
特別研究体験プログラムは、未だに継続中だ。
大学の単位はかなり取得している。高校卒業認定資格を取得して飛び級入学をしても、取得しないといけない単位は少ししかない。
とはいうものの、もう自分の会社もあるし、学歴自体に意味があるのかな。
よく分からなくなっている。
いろんなことがあったけど、今はサンタクララの自宅で過ごしている。
久しぶりに自宅でバーベキューパーティを開催しようということで、ご近所さんたちに声をかけ、父さんたちにもアメリカに来てもらっている。
年末の旅行で、父さんたちもアメリカ好きになったみたいだ。
父さんたちもバーベキューパーティに慣れたみたいで、それぞれコミュニケーションを楽しんでいる。
ソフィアちゃんの家族も参加してくれている。
改良されたアイ・アシストシステムを付けているみたいだ。
ソフィアちゃんがどんどん使いこなしてくれれば、アイ・アシストシステムのAIがどんどん進化していく。先が楽しみだ。
ソフィアちゃんの両親からは、改めてお礼を言われる。
ファンさんもパーティに参加してくれているし、仲良くなったS大の教授たちも来てくれている。
量子コンピューターの開発チームの人たちや、KSセキュリティの開発部隊の人たちも参加してくれている。
この人生では、人との繋がりがすごく増えた。こういうのを豊かな人生というのかな……
とにかく前世よりも、ずっと幸せなのは確かだ。
しかし、前前世と前世でも死ぬことになった、因縁の14歳の8月が近づいている。
こんな幸せな人生を送れているのに、死ぬのは絶対に嫌だ。
宮原康之に依頼された殺し屋を撃退し、田沼秀次に依頼された裏社会部隊も撃退した。
宮原も、田沼も刑務所にいる。
この人生では、もう14歳イベントは起こらないような気がする。
いや、絶対に起こってほしくない。
しかし万が一、前世のような爆殺イベントが起これば、ここに集まってくれている人たちや、優子や彩乃ちゃんと、その家族まで巻き込んでしまう。
念のため、7月の誕生日の前には帰国することにしよう。
そして、何も起こらなくても9月になるまでは、秋葉原ビルに籠もることにしよう。
それが良い……
***
パーティが終わった翌日――
「日本で用事があるので、6月末に日本に帰ります」と、皆に告げる。
優子は俺の考えが分かっているだろう。
付き合いが長いからな。
「それなら、父さんたちと一緒に戻るか?」
「そうするよ」
「匠が日本に戻るなら、母さんも帰るわよ。日本の友達にも会いたいし」
(ダメだよ……母さん……そんなことを言ったら……)
結局3家族全員と、美月さんも帰国することになる。
***
2013年6月下旬――
皆で、帰国の飛行機に乗って日本に移動だ。
無事に空港に到着する。
前世が爆殺なので、移動中もずっと飛行機が爆発するかもしれないと、心臓がドキドキしていた。
優子も同じ気持ちだったろうな。
田沼が逮捕されてから、怪しい奴はウロウロしなくなっているそうだが、念のために空港から秋葉原ビルまでは、SS警備の車で移動する。
俺たち家族は、秋葉原ビルで車を降りた。
引き続いて、2家族を自宅までSS警備が送って行った。
(さあ、秋葉原ビルに帰ってきたぞ……とりあえず、ここは安心だろう……)
心臓のドキドキも治まってきた。
とにかく、ここから外に出なければいい。
ここに籠もっている限り、安全は確保されるのだ。
(本当に、作って良かった秋葉原ビル要塞……!)
ずっと籠もっていても、俺はインドア派だから気にもならないし、仕事も特に問題なし。
念のために7月末には何か理由を作って、俺と坂下さん以外の3家族にはアメリカに戻ってもらおう。
とにかく、誰かが殺しに来たとしても、前回同様に全部撃退する!
来るなら来い……いや、来ないでいい。
***
2013年7月上旬――
村岡家の玄関のカメラ付きインターホンが、何回も鳴る。
訪問販売か何かと思い、裕太さんがカメラの映像を覗き込むと、なんと弟夫婦が立っているではないか。
服も顔も汚れているし、今までどこでどんな生活をしてきたのだろうか?
裕太さんは、呼び出しには応じずに、そのまま調査部に連絡する。
「行方不明になっていた弟夫婦が、玄関前に来ています。どうすればいいですか? また火を付けられるかもしれません。急いで来ていただけないでしょうか?」
優子からも、俺に電話がかかってきた。
嫌な展開になってきた……優子もそう思っているだろう。
わかるのは、俺たちだけだ。
心拍数が上がってくるのが分かる。
思い出すのは、前世の爆死の記憶だ。
優子も心の中で「なぜだ……」と叫んでいるだろう。
これから何が起こるのか……もういい加減にしてほしい。
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