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転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


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迷惑な夫婦

「ところで、奴らの嫌がらせはどれくらい続くものですか?」

坂下さんが腕を組み、険しい表情で尋ねた。


「概ね3ヶ月ほどかと思います」

野口さんは即答し、落ち着いた声で言葉を重ねる。


「それと、我々をサポートしていただくSS警備の方々には、警護における注意点を、こちらから詳しく説明させていただきます」


そのとき、彩乃ちゃんが手を挙げ、少し身を乗り出して口を開いた。

「あの、質問いいですか? F社のハッカーだと思うのですが、最近このビルのサーバーに侵入しようとした形跡が残っていました。そこで……侵入したハッカーにウイルスを持って帰ってもらおうと思うのですが、どうでしょう?」


一瞬、場の空気が張り詰める。

野口さんは目を細め、考えるように顎に手を当ててから答えた。


「……そんなことが可能なのですか。確かにハッカーにしてみれば、そのウイルスがどこで感染したかを口外できませんからね。有効ではあります。ただし――実行はせず、あくまでも“準備”に留めてください」


***


あれから三家族は、昼間は秋葉原ビルでなるべく過ごし、夜になるとタクシーで自宅に帰るという生活を続けている。


母さんたちはアメリカで一緒に暮らしていたから、夜も秋葉原ビルに泊まってもらってもいいのだが、父さんたちの要望で夜は自宅に帰ることになったようだ。


説明を受けた翌日から、調査部の人たちがSS警備の事務所に常駐している。

昼間に三家族の誰かが外出する際には、SS警備の人間が2名、調査部の人間が1名という体制で警護にあたっている。


ここまで防御しているのに、それでもF社の裏社会部隊は仕掛けてくるのだろうか。


***


2011年10月――


俺たち3人は基本的にビルに籠もっているが、父さんや母さんたちは当然外に出ることになる。

やはり、不審な奴らが周りをうろつき始めたそうだ。


混んでいない場所なのに、父さんや母さんたちに故意にぶつかろうとする奴らが、何人も出てきているらしい。


村岡家、坂下家族がタクシーで家に帰る時も、怪しい車が追跡を始めたため、調査部の人にタクシーに同乗してもらっている。


***


しかし……思わぬところから事件が起こってしまう。

村岡さんの弟が運転する車が人を轢いてしまったのだ。

この叔父夫婦は、前世で優子を苛めていた嫌な奴らだ。


轢いた相手は、裏社会部隊から依頼された当たり屋の可能性が高い。

しかも運転していたのは妻の方――あの村岡の意地悪ババアだ。


普通の事故なら自動車保険で保険屋さんが何とかしてくれるだろうが……こともあろうに、ダメ弟は自動車保険を少しでも安くするため、本人限定の保険契約にしていたのだ。


村岡の意地悪ババアは保険対象外。

(バカなのか……この夫婦……意地悪しか取り柄がないのか……!)


裏社会部隊からしたら、格好の獲物だ。

ガードの固い俺たちに難癖をつける手間が省ける。

当たり屋から、多めの賠償金を弟夫婦に請求するだけで済むのだから。


法外な賠償を求められれば、ダメな弟が泣きつく相手は、お兄さんの裕太さんになる。

裏社会部隊にとっては、理想的な展開になってきた。


***


事故から数日が経過――


案の定、弟夫婦が裕太さんを訪ねて自宅にやってくる。

「お金を貸してください。一生のお願いです」

裕太さんの目の前で、ダメ弟が「お金を貸してください」を繰り返す。


優子は、前世での仕打ちを忘れてはいない。

「さっさと帰れ」と心の中で叫び続ける。


しかし、この人生では前世のような仕打ちを受けていない。

嫌なことをされてもいないのに、怒ることができないのだ。

もどかしい……腹が立つ。


「3000万円を貸してください。お願いです、このままでは殺されてしまいます」

ダメ弟は泣きながら頭を下げる。


そんな金額を貸せるわけがないし、持ってもいない。弟にそんな額を返済できる能力もない。でも……弟だしな。どうする?


「お父さん! 話は聞いたのだから、取りあえず帰ってもらいましょう。3000万円なんて簡単に貸せるお金じゃないわ。いくら何でも金額が無茶苦茶すぎます」

我慢できず、優子が大きな声を出してしまう。


村岡のババアが、ヘビのように意地悪そうな顔で優子を睨みつけている。

この顔だ……前世で私を苛め続けた顔だ!


「そうだな……取りあえず事情は聞いた。亮太、今日は帰ってくれないか」


「すぐに用意しないと殺される。奴らはこの家の前で待っている。殺される……兄さんは僕が殺されてもいいの?」


「お父さん、調査部の人に電話して! それと、この人たちには玄関の外に出てもらってください」

前世のことがあるので、優子はすごい剣幕で裕太さんに迫る。


「亮太、常識で考えろ! 3000万円もの金を、すぐに何とかできるわけがないだろ。いったん帰れ!」

強い口調で言うと、弟夫婦は残念そうに玄関の外へと出ていく。


裕太さんが急いで調査部に連絡している。

優子がこっそり窓から外をうかがうと、弟夫婦は玄関の前に未練がましく立ったままだ。


その後ろには、典型的な“ヤ……”御用達の“べ……”が停まっている。


「お母さん! 外に危ない人たちの車が停まっているわ。玄関も窓も、全部の鍵を締めましょう」


「そうね。そうしましょう」

2人で鍵を閉めて回るが、手が震える。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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