秋葉原ビル防衛戦
「ビルの8Fから10Fまでは、高強度の防犯ガラスに取り替えています。さらに、防犯ガラスの表面には防弾シールも貼り付けています。明後日には作業が完了します。また、防犯センサー類も多数設置しているところです」
「それと、匠くんに依頼されていた脱出シューターですが、隣のビルのオーナーと話をつけてきました。このビルの屋上から、シューターを使って隣のビルの屋上に逃げることができます」
坂下さんが本当にいろいろやってくれて、助かる。
秋葉原ビルの要塞化には、いくらお金がかかっても構わないと伝えているし、警察OBの顧問にも十分な謝礼をお願いしておいた。
きっと面倒見の良い顧問だろうから……後輩の警察の人たちにもお金が回るだろう。
その方が頑張り度も違うと思う。
命がかかっているのに、お金の問題じゃないのだ。
(こういう時でしょ。お金を使うのは……!)
「1Fから7Fまでは、SS警備の事務所になっているのが心強いですね。当分の間、夜間も10名の社員に待機してもらいます。危険度が上がれば、もっと人数を増やします」
SS警備が好調なこともあり、2009年から秋葉原ビルは1Fから7FまでSS警備が使用している。
つまり秋葉原ビルは、最強の兵士に守られる要塞になっているのだ。
それから4日が過ぎ、ビルの要塞化に向けた対策が完了する。
ところで、俺たち3人はビルに立て籠もっていても、TV会議システムがあるから仕事にはまったく支障はない。
セキュリティシステムも量子コンピュータの開発も、リモート参加で問題なしだ。
警察から、康之氏が帰国したとの連絡をもらう。
3家族全員に緊張が走る。
警察の本気度も上がることだろう。
俺たち3人がこのビルに籠もっているわけだから、殺し屋は必ず秋葉原ビルを襲撃に来るはずだ。
どう攻めてくるのだろう?
既に警察は、康之がどこに逃げても逮捕できるようマークしているし、どこの殺し屋組織に依頼したのかも調査中だそうだ。
SS警備から連絡がありしだい、万世橋警察署から秋葉原ビルにパトカーが駆けつけることになっている。
ロケット弾も、ビルの外壁が破壊されるほどのドローン爆弾も、日本国内で入手できるとは思えないが、対策は考えておく必要がある。
このビルにロケット弾を打ち込もうとする場合も、爆弾ドローンを遠隔操作する場合も、犯人が陣取る場所はおのずと限定される。
対象となるいくつかのビルの屋上には、警察の許可をもらってバッテリー式の監視カメラを設置させてもらっているし、ビルのオーナーからビル入口のキーをコピーさせてもらっている。
もちろんビルのオーナーには謝礼を支払っている。
命の値段だから安いものだよ。
万世橋警察との連携だが……
坂下さんは時々、警察の道場に格闘技を教えに行っているし、SS警備の連中も警察の道場で警官に混じって稽古しているので、警察官との連携も問題なしだ。
***
2010年2月下旬――
秋葉原ビルに立て籠もって、さらに5日が経過した夜……
秋葉原ビルの1F入口で、ガラの悪い奴ら10人が騒ぎ始める。
坂下さんがすぐに警察に連絡する。
まもなく警察がビルの入口に到着するはずだ。
坂下さんは、1F入口で騒ぐガラの悪い奴らは陽動だと考え、ビルの屋上に設置しているカメラを確認するよう部下に指示を出す。
同時に、俺たちにはビル屋上に避難するよう指示する。
いざとなったら、隣のビル屋上に避難するシューターを使用すればいい。
モニターを見ている部下が慌てている。
「対面のビルの屋上に、ロケットランチャーらしきものを持った男が現れました」
「警察に連絡して、屋上に向かってもらう。ビル入口の鍵を持って、SS警備も屋上に向かえ。他の場所はどうだ!」
「他の場所にはいません!」
(SS警備の警備員は……まだ屋上に到着しないのか……発射されてしまうぞ!)
「今、ロケットランチャーを持った男と、うちの警備員5人が格闘しています。1人が怪我をしたようですが、犯人を無事取り押さえました。警官も来ました。犯人に手錠をかけています」
「5人と連絡を取れ。怪我の具合も確認しろ!」
「かすり傷のようです」
「あいつらはSS警備の中でも、特に猛者だからな」
「他のモニターは問題なし。1Fのガラの悪いやつらが逃げ始めようとしています」
「逃がすなよ! 待機しているSS警備も出動しろ。全員、取り押さえさせろ」
「警官たちが取り囲んで、ガラの悪いやつらを取り押さえています」
「警官が取り逃がしたやつらがいたら、必ずSS警備で捕まえろ!」
襲撃に来た連中は、すべて警察に連行されることになる。
「ふ〜、これで秋葉原ビルの襲撃は終わったのかな?」
国と国との戦争じゃないのだから、康之が依頼できる程度の殺し屋なら、今頃は自分たちが捕まらないように姿をくらますのに精一杯だろう。
2度と攻撃してくることはないと思いたい。
犯人逮捕の連絡を受けて屋上から自宅に戻ってきた家族たち、さすがに緊張で疲れ切っている。
母が「コーヒーでも入れましょう」と声をかける。
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