表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/96

康之がAIを開発する会社を作る

鈴森会長が帰り際、ふと思い出したように口を開いた。


「宮原会長が康之社長を引責辞任させた後、康之に1年間の謹慎を命じ、小さな関連会社の社長を任せたそうだ」

会長は少し眉をひそめ、声を落とす。


「その会社の業績を伸ばせば、次はもう少し大きな会社、最終的にはA製薬本社の社長に戻すつもりだったらしい。しかし……左遷された社長に対する厳しい目に、康之のやつが耐えきれず、半年あまりで退職してしまったそうだ」


俺は思わず息をのむ。前世をじわじわとトレースしてきているからだ。

会長は肩をすくめ、苦笑いを浮かべて続けた。


「楽をして自分の力を示したいと考えたのだろうな。息子の保がAIを開発できると分かり、今はマサチューセッツ州のM大の近くにAI開発の会社を作る準備をしているようだ」


――「怖いから」とか言っていたはずなのに、どういうことだ?

(まさか……保のやつ……父親に転生のことを打ち明けてないだろうな……?)


胸の奥に冷たいものが走る。

そんなことをされたら、俺たちはまた夜逃げ同然の立場になる。世界中から奇異の目で見られ、居場所を失ってしまうじゃないか。


それよりも深刻なのは――神様との約束を破れば命が危険にさらされることだ。

(保……お前、本当に大丈夫なのか? 人生が終わってしまうぞ……)


「転生のことを口外していないかどうか、確認しないとな」

俺は唇をかみ、パソコンに手を伸ばす。


横を見ると、優子がすでに慌てて検索を始めていた。

彼女は真剣な顔で掲示板をスクロールしている。

保には“前科”があるから、なおさら不安なのだろう。


しばらくして優子が画面から顔を上げ、ふっと安堵の息を漏らした。

「……出ていないみたい」


ネットや掲示板には転生の話は一切出ていないようだ。

それを見て俺も胸をなで下ろす。


(もし保が転生のことをしゃべっていたら、あの父親のことだ。絶対に株で大儲けする方法を思いつくに違いない……)


ただ、鈴森会長の話の中には、康之がリーマン・ショックで大儲けしたというくだりはなかった。

(……ひとまずは大丈夫、そう考えていいのだろうか……)


それにしても、保がAIを開発できることが、どうして分かったのだろうか。

もしかすると、俺たちが宮原会長の肝いりでアシストAIシステムを共同研究していることを、どこかで聞きつけたのかもしれない。


その流れで「保も頭は良いのだから、AIシステムぐらい作れないのか?」とでも言われたのかな?


強く迫られると逆らえない保は……おそらく目を伏せながら、「AIシステムは僕にもできます……」なんて、小さな声でつぶやいたのだろう。


しかし、息子とのそんな会話で、アメリカにAIを開発する会社をよく作る気になったものだ。

息子にプレッシャーをかけて会社を作っておけば、自然と成果が出るとでも考えたのか。短絡的すぎるが、あの父親らしいとも言える。


保は、前世で俺たちのAI研究を間近で見ていた。

その経験があるから、もしかするとレベルの高いAI開発もある程度はできてしまうかもしれない。


だが――危険だ。

もし前世において、俺たちのAI開発に対して“歴史の修正力”が働いたのであれば、保は容赦なく抹殺されるぞ。


……まあ、仕方がない。俺にはどうすることもできない。

親が子に望みを託し、そして保自身がそれを受け入れたのなら、第三者の俺が口を挟んでも意味はない。


それでも願わずにはいられない。

できることなら、この二度目の人生では、保が自分の意志をはっきりと伝えられる人間に成長してほしい。


前世と合わせれば、もう23歳になるんだ。

しっかりしろよ。


それにしても、康之がAIを開発する会社を作るというのは、俺たちにとって良くない流れだ。


前世ではその会社が原因で、康之が俺たちを殺そうと思った可能性もあるからだ。

もちろん証拠もないし、俺と優子の推論に過ぎないけど。


康之は注視しておかないといけない。


さあ、来月はアメリカに引っ越しだ。

アメリカに行くメンバーは、俺と優子、彩乃ちゃんに、母さんたち3人。


父は秋葉原でAKビル管理の経営。

今年から始まった仕事に、早く慣れてほしい。


村岡さんはアシストAIシステムの開発窓口を継続。この開発は長期にわたって続く。

坂下さんは、今はSS警備の経営を軌道に乗せないといけないから忙しいだろう。

というわけで、父さんたちは日本に居残りだ。


坂下社長には、シリコンバレーの日本企業向けの警備会社を、アメリカ現地法人で作れないかも調査してもらおうかな。

忙しいから、それどころじゃないと言われてしまうかもしれない。


***


2008年11月――


アメリカに出国し、前世で住んでいたサンタクララの住宅に入居する。

俺と優子は2度目なので、アメリカでの生活にはもう慣れたものだ。


アメリカ行きの話が出てから、彩乃ちゃんもインターネットで英語を勉強したようで、すでにペラペラしゃべれるレベルになっている。


ヘレンさんにお世話になりながら、ここからしばらくは、前世をトレースしたイベントが進行していく。


当面は生活の準備が優先だが、来週からはサンノゼの研究所に定期的に通い、集められた研究スタッフとディスカッションを行う予定だ。


研究スタッフの建設的な意見に対して、俺と優子、彩乃ちゃんがコメントし、さらに進化したアイデアへと導いていく。


そういえば、前世ではディスカッションに1回だけ参加した保が、ひたすら黙って下を向いていたな。


俺たちが秋葉原からサンノゼに移ったことで、KSセキュリティ社の開発部門もサンノゼにやって来ている。


午前は量子コンピューター開発チームと、午後はKSセキュリティ社の開発スタッフとのミーティングを行う。


こちらも優秀なメンバーばかりなので、建設的で有意義なディスカッションになる。

プログラムが得意な優子と彩乃ちゃんが議論を主導し、俺が時々理論的な補足をする形で進んでいく。


中国系のお姉さんが自宅を訪ねてくるイベントも、前世と同じ展開だ。

名前はファンさん。“グ……”という会社でAIの研究をしている人だ。


前世と同じく、来年1月に行われるAI研究についての講演会でのプレゼンに誘われる。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


励みになりますので

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ