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転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


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量子コンピューター

2008年――

前世ではリーマン・ショックのことを鈴森会長に教えたが、今回はやめておく。


あのときは、保が宮原会長にリーマン・ショックのことを漏らしてしまい、日本からアメリカに夜逃げする羽目になった。


やはり、お金が絡んで有名になるとろくなことがない。

特に株で利益が出たなんて、リーマン・ショックで損した人だらけなのに、良く思われるはずがない。


***


2008年10月――


空売りしていた銀行株を、リーマン・ショックで急落したところで買い戻す。

未来技術研究所の法人口座は300億円に増加した。


俺から未来技術研究所に融資していた52億円を返してもらい、同社の運転資金は250億円になる。

株式投資は、前世と同じ流れをトレースして、順調に資産を増やしてくれている。


とりあえず、俺の証券口座には140億円を残し、残りを20年以上保有する資産として、S&P500とナスダックのETFをそれぞれ50億円ずつ購入しておく。


前世では優子もETFを買っていたが、今回はお金がないので買えない。

優子にも彩乃ちゃんにも給料を払っているので、少しずつETFの積立購入をするようアドバイスしておくか。


ところで、SS警備は絶好調のようだ。

秋葉原ビルを本社にして、大阪と名古屋にも支店を作りたいという話で盛り上がっている。


とにかく坂下さんが、「今度こそは」と、リベンジマッチに燃えているのだ。

坂下さん、本当に良かったね。


それにしても、SS警備の社員は、全員が筋肉モリモリだ。事務所にはトレーニング器具が置いてあり、社員たちは空き時間にトレーニングに励んでいる。


***


今日は、秋葉原の研究所に鈴森会長がやって来る日だ。


「リーマン・ショックの影響は大きかった。これからしばらくは景気が悪くなるだろう。経営は苦しいが……K社も地道に頑張るしかないな」

鈴森会長は湯飲みを手に取り、少し疲れた顔で言葉を漏らした。


――前世とは違う展開だ。


「鈴森会長! 僕たちは量子コンピューターの研究も進めています。目的はAIの学習計算を、より高速で処理できるようにすることです。コンピューターシミュレーション上での理論検証は、すでに終わっています」


その瞬間、前世と同じように、鈴森会長の目が『量子コンピューター』という言葉に吸い寄せられたのが分かった。


どうやら量子コンピューターは、リーマン・ショックの景気悪化とは関係なく、会長の関心を引き続けるらしい。経営者の感というやつなのか!


「なるほど……詳しく聞かせてくれ」

会長は何度も、何度も説明を求めてくる。


俺はホワイトボードを使いながら説明した。

「AI開発を加速させるには、従来のコンピューターでは限界があります。そこで、量子の重ね合わせや並列性を利用して、膨大な計算を一気に処理できる量子コンピューターを応用しよう考えています」


会長は身を乗り出し、頷きながらメモを取っている。

俺も熱が入り、言葉が自然と弾んでいく。


実際、AIと量子コンピューターの相性は抜群だ。

AIの未来を切り拓くためには、どうしても欠かせない技術になる――そう確信している。


「量子コンピューターは、昔からぜひ手掛けてみたかったのだよ。K社の主力研究者を集めて、本格的に開発を進めたい。どうだろう、協力してもらえないか? この通りだ!」


鈴森会長が椅子から腰を浮かせ、深々と頭を下げた。

大企業の会長がそんな姿を見せるなんて、胸が熱くなる。


「頭を上げてください。もちろん、一緒に開発させてください」

俺も慌てて身を乗り出す。

「そもそも僕たちには、デバイス開発や素材開発の設備もノウハウもありませんから……」


会長はほっとしたように息を吐き、頷いた。

俺は続けて、少し声を落として提案する。


「量子コンピューターが完成したあとのことを考えると、アメリカと日本が共同出資した会社で開発したほうがいいと思います。どう思われますか?」


「それは言えるな」

会長は顎に手を当て、一瞬考えてからすぐに答えた。

「その方が、成功したときにアメリカから叩かれずに済む」

――さすが鈴森会長、決断が早い。


「アメリカ人の友人が経営しているU社がある。企業向けのソリューションシステムを開発している大きな会社だ。そこをK社と未来技術研究所とで共同出資して、新会社を立ち上げてはどうだろう。名前は……そうだな、“W社”にしよう」


俺たちはさらに細部を詰めて話し合った。

最終的に、サンノゼにあるK社の研究所を量子コンピューターの開発拠点とすることに決まった。


その間、俺たちも研究所の近くに引っ越すことになる。

住居はサンタクララで探してもらえるらしい。


――やはり、前世と同じ流れになってきた。


もっとも、前世のように「匠くんに進呈する」なんて話にはならないだろう。今回は株で儲かっていないし。

だが、儲かっているのは俺の方だ。いっそ自分で買ってしまえばいい。


(アメリカもリーマン・ショックでヘナヘナだ。驚くほど安く買えるかもしれないな……!)


前世では夜逃げのようにしてアメリカへ逃げ込んだ。

だが今度は違う――堂々と、日本とアメリカを行き来できるのだ。


鈴森会長を儲けさせることはできなかったけど、この違いは大きい。

アメリカを楽しもうという、心の余裕がある。

こういうことが、人生を良い方向に展開させてくれるといいのだけれど。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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