民間ボディーガード会社
2008年2月――
坂下さんたちがアメリカに出発する。
智子さんも、経理と会計を学ぶために専門学校の短期修得コースに通っている。
母と恵さんも「私たちも身につけたい」と言って、一緒に通うことになった。
3人は仲がいいな。
秋葉原ビルの8階は、未来技術研究所と父のビル管理会社の共用スペースだ。
ビル管理会社のスペースには、机が2つ並んでいる。
父の横には村岡さんが座っていて、残りのスペースを俺たち3人が使っている。
セキュリティソフトの開発は優子と彩乃ちゃんが、AIの開発は俺が担当している。
どちらの開発も前世で経験済みなので、それをベースに、さらに高レベルな開発が進んでいるのだ。
(飛び抜けて……世界……最高水準だと思う……!)
***
2008年6月――
30億円分購入していた“電池会社の株”が10倍になり、資産は240億円に。
俺からの借り入れという形で、未来技術研究所に50億円を融資する。
証券会社に法人口座を作り、そこに50億円を入金しておいた。
タイミングを見て、数社の銀行株を信用売りしておく。レバレッジは2倍。
あとは9月のリーマン・ショック待ちだ。10月に1/3の価格で買い戻せばいい。
SS警備の事務所では、8月に坂下さんたちがアメリカから帰国すれば、すぐ業務を始められるように準備が進められている。
バラバラになっていた旧社員たちが、新しい会社に戻りつつある。
坂下さんの人徳だ。
戻ってきた数人の社員が、アメリカの坂下さんと連絡を取りながら、備品や制服の準備、電話対応、挨拶回りなどで忙しく動き回っている。
智子さんが社員の業務を確認し、雅人さんに毎日報告している。
経理業務も彼女が担当している。
これまで会社のことには一切関わってこなかったが、倒産を経験し、智子さんにもスイッチが入ったようだ。
母や恵さんも、楽しそうに手伝っている。
この3人はとにかく仲が良い。
社員全員が総合格闘技経験者であること、そして社長を含む3名がアメリカで爆弾処理やテロ対策の技術を学んできたということが業界に広まり、仕事の依頼が殺到している。
依頼内容は、ストーカー対策、爆破予告対応、有名人や要人の警護など多岐にわたる。
民間ボティーガード的な会社になってきているようだ。
***
2008年8月――
坂下さんたちが帰国した。
3人とも筋肉質に変貌し、ずいぶん精悍さが増している。
今月から業務開始だ。坂下さんは「今度こそ!」という意気込みに満ちている。
坂下さんのリベンジマッチ。頑張ってください。
秋葉原ビルの1階から4階までは、募集したテナントが入っているが、5階から7階はSS警備の事務所にしている。
うちの家族もしっかり守ってもらいたいからね。
今日は3家族で、坂下さんの帰国祝いを兼ねた飲み会を開催する。
「カンパーイ!」の掛け声で、両親たちは飲み始める。
「ここまで来ることができたのは、相馬さんたちのおかげです。本当にありがとうございました」
坂下家の3人が涙ぐむと、それが皆に伝染する。
考えてみれば、ここにいる3家族は本当に訳あり家族だな。
父や裕太さんが、坂下さんの肩を軽く叩いている。
このしんみりムードを少し変えようと、俺が話題を変える。
「坂下さん、仕事の依頼状況はどうですか?」
「すごく多いです。特に芸能人や企業のVIPからの警護依頼が中心ですね」
「TVやネットで、皆が知っているような著名人もいますか?」
「もちろん。芸能人は、ストーカー対策が多いですね。有名女優のHさんからの依頼もありますよ。この方も、ストーカーにもお悩みのようです」
「お父さん、彩乃ね! ネットでの中傷や、詐欺の発信元を探し出すのもできるようになったのよ!」
彩乃ちゃんがうれしそうに言う。
「彩乃ちゃん、ニーズは確かにすごくあると思うけど、もう少し待とう。いろいろ面倒なことに発展する可能性が高いからね。この3人は、目立たないようにしておいた方がいいんだ」
「……鈴森会長にも、我々のことは秘密にしてもらっているぐらいだからね。あまり目立つと、誘拐されちゃうかもしれないんだ」
彩乃ちゃんの両親も、うなずいている。
彩乃ちゃんは、ネット系のプログラミングが得意らしく、スポンジが水を吸うように知識を吸収している。
「世界のトップハッカーに近づいてきた」と自慢しているほどだ。
(それにしても、腕試しで変なところにハッキングしてないだろうな……心配だ!)
坂下さんからも、しっかり注意しておいてもらおう。
CIAとかハッキングなんて、万が一にもやったら取り返しがつかないからな。
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