SS警備で守ってくださいね!
坂下さんは、まったく理解が追いついていない。
橋の上で人生を諦めようとしていた状況と、匠に言われていることが、頭の中でまったく結びつかないのだ。
「智子さんは、経理と会計を学んでみてはどうですか? 警備会社と未来技術研究所の経理・会計をお願いします。専門学校に通う費用は、未来技術研究所が負担しますよ……」
警備会社の経理に自分が関わっていれば、あのとき横領なんてされなかった……そう思っていた智子さんは、すっかりやる気に火がついている。
「1月までに準備をして、2月には行動を開始してください。でも、アメリカの警備会社は、坂下さんの人脈で何とか探してください」
「……警備会社の登記関係は平山弁護士にお願いしておきます。1月中には、坂下さんが警備会社の社長になります。それと、寸暇を惜しんで英会話の勉強もしておいてくださいね」
坂下さんは理解が追いつかないまま、父と酒をガバガバ飲み始める。
「匠のやることに、いちいち驚いていても仕方ありませんよ」
父は笑いながら杯を重ねている。
何だか3度目の人生は、少しずつ良い方向に展開してきている気がする。
「匠くんってすごいですね。私も何かできませんか?」
彩乃ちゃんが話しかけてくる。
「そうだな……私と優子ちゃんはプログラムが組めるんだけど、彩乃ちゃんはどう?」
「私、勉強すれば作れると思う。作ったことはないけど、きっと大丈夫。そんな気がする」
その笑顔を見ると、俺も明るい気持ちになる。陽気な性格なのだな。
7歳でコンピュータ雑誌を楽しそうに読んでいたからな。
この子は、俺や優子側の人間かもしれない。早く確かめてみたい。
もしそうなるなら、3度目の人生では、保の代わりが、彩乃ちゃんか……。
保はちょっと暗かったけど、この子は明るくていい。
俺がいろいろ考えていると、
「彩乃は少し変わった子なのよ。この年で難しい漢字の読み書きもできるし、計算も得意なの。でも学校が嫌いで……」
――合格です。天才児3人グループ、再結成。
うれしいな。話し相手が増えて。
「彩乃ちゃん! 明日は僕たちと一緒に研究してみようか? 分からないところは僕が教えるから大丈夫だよ。研究室は8階のフロアーだからね」
「いいの? やった〜!」
彩乃ちゃんも、自分と同じような子がいてくれたことを喜んでいるみたいだ。
また不登校児が3人に増えるな。
――翌々日。平山弁護士から連絡が来る。
500万円を一括返済することで話をまとめたらしい。
本当にこの人は優秀だ。
いろんな人脈を持っているようだし、これからもずっと、俺の家族の力になってもらおう。
こういう人って、本当に大事だよ。
当面の生活費としての100万円を加えて、合計600万円を、坂下さんは父から借りることになる。
明日、平山弁護士と一緒に消費者金融に行って、500万円をドーンと返済することになるだろう。
***
2008年1月――
坂下さんの警備会社の登記が完了する。
会社名は「SS警備」。ひょっとして「坂下スーパー警備会社」なのかな?
俺の証券口座から2億円を未来技術研究所に融資し、未来技術研究所から1億円を出資して、SS警備が設立された。
そろそろ3社共通の顧問会計士も必要だな。平山弁護士に紹介してもらおう。
SS警備の社長は坂下さんだが、大株主は未来技術研究所となる。
運転資金の1億円から、坂下さんと社員2名の給与や渡航費を出してもらうことにした。
まずは、アメリカの警備会社で、爆弾処理やテロ対策の技術を学んできてもらいたい。
なんせ、前世は爆死だったからね。
頼みますよ、命が懸かってますからね、坂下さん。
坂下さんが戻ってくるまでの間、SS警備としては、旧社員との連絡や、かつての顧客への挨拶が主な仕事になるだろう。
坂下さんとはメールで連絡を取り合いながら、智子さんが電話連絡や挨拶状の作成・郵送などを担当することになる。
昼間は専門学校にも通わなければならないし、少しずつでいいから進めていけばいい。
そのうち、旧社員たちも戻ってくるだろう。
智子さんのことは、うちの両親も手伝っているし、優子のお母さんの恵さんも協力してくれている。
これで3家族のチームワークはばっちりだ。
このあたりも、前世とは違う。
どうか、このまま良い方向に転がっていってくれ。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
励みになりますので
ぜひブックマークや評価などをお願いします。




