秋葉原ビルが完成した
2006年12月――
前世と同じく、父の証券口座が4.8億円に増える。
俺の証券口座は、ゲーム株をまだ利確していないが、9億円ぐらいになっている。
両親に、父の証券口座の資金が4.8億円に増えていることを伝えてみる。
4.8億円の話を聞いても、2人とも全然驚かない。
前世と違い、ここに至るまでにすでにいろいろなことがあって、俺のやることをいちいち驚いても仕方ないという気持ちを、両親が持つようになってきたからかもしれない。
お金についても、ビルを建て替えると4.8億はほとんどなくなる。
大金だけど、眼の前を通り過ぎるお金に過ぎないという認識なんだろうね。
父が張り切って取り組んでいたビルの設計も、建設業者の選定もすでに終わっているようだ。
***
2007年1月――
今月中に秋葉原のボロビルを解体し、今年中にはビル建設を完成させる予定で進めている。
建設費は4億円となり、口座には8000万円ぐらいが残ることになる。
父のお得意の設備工事もするし、銀行の残債も片付けると、8000万円はもっと減ることになるけどね。
***
2007年6月――
ビルの建設が順調に進んでいる。
父は図面を持って、足繁く工事現場に通っている。
手抜き工事をされたら致命傷だからね。
その合間に、テナントの募集やビルの設備計画にも張り切って取り組んでいる。
父は忙しそうだ。
***
2007年12月――
秋葉原にビルが完成する。
ビルといっても、30坪の狭い土地に建てられた、いわゆるペンシルビルだ。
テナント募集は、ビルの建設開始と同時に始めていたらしい。
秋葉原という立地で新築ということもあり、テナントの反応も上々のようだ。
俺の証券口座は35億円になっているが、もう少し資金を増やしておきたいので、“電池の会社の株”を安いところで30億円分購入する。
来年6月頃には10倍になるはずだ……。
***
ビルの完成とともに、我が家は早々に引っ越しをする。
このあたりは前世をトレースして進んでおり、家族の引っ越しも無事に終わる。
ここまですべて順調だ。
今年も一段落したので、家族3人で自宅近くのレストランで食事をしようと歩いていると、橋の手すりから遠くのビルを見ている親子がいる。
3人ともすごく痩せていて、このまま放っておいてはいけない雰囲気をひしひしと感じる。橋を渡る人たちは、そんな親子には関わるべきではないと、目もくれずに通り過ぎる。
この状況は……場所も人も違うけど……前世で似たようなことがあったよな……
今度は親子か……前世とは違うパターンだ。
前世では、ここで母が……やっぱり行ったか……!
母が親子のもとに近づいていく。
「道にでも迷われましたか?」と聞いている。
「道に迷っているわけではありません」
丁寧だが、自分たちに関わらないでほしいという雰囲気が出ている。
『もう止めたほうがいいよ……』と思いながら、俺と父はその様子を眺めている。
今回も俺と父は、母の後ろで成り行きを見守る感じだな。
「お菓子、食べる?」と、母が小さい女の子に話しかけている。
両親が怒らないかと、ヒヤヒヤしながら俺と父は心配している。
(揉めたら……父さんが謝りに行けばいいよね……!)
(……あれ? 怒らない!)
「ありがとうございます。彩乃、いただいておきなさい」
その子のお母さんが、頭を下げてお礼を言う。
そのタイミングで、「何かあったのですか……」と母がその子のお母さんに聞いている。
『この場は、お菓子だけ渡して立ち去るべきだよ……』と思いながら、俺と父は、後ろでヒヤヒヤしている。
女の子のお母さんが泣き始める。
「泣かないでくれ! すまない」
お父さんが苦痛の表情を浮かべている。
「事情があるならお聞きしますよ」と、母がさらに踏み込む。
「お節介な人ですね……分かりましたよ」
でも、お父さんが諦めたように事情を話し始める。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
励みになりますので
ぜひブックマークや評価などをお願いします。




