次の人生、お前はどうしたい?
2013年8月――
14歳になった……確か、前世では14歳で死んだよな。
今のところ、多少の懸念材料はあるものの、楽しい人生を送っている。
量子コンピューターはまだ完成に至ってはいないが、AIの研究については世界をリードしていると自負する。
俺たちのAI理論が、世界標準になりつつある。
鈴森会長のK社は、世界のAI業界をリードする企業になっている。
医療系やセキュリティ系、自動車系など……世界の大企業と提携を進めている。
順風満帆と言えるだろう。
しかし……
「AIが職を奪う」というネット書き込みが、日に日に増えていく。
(俺たちが……研究を進めすぎたのか?)
そんな考えが頭をかすめるが、すぐに打ち消す。
ネットの書き込みなんて、所詮は落書きに過ぎない。
真に受ける必要はない……はずだ。
だが、中には過激なものも混じり始めた。
「世界のAI研究を牽引する2人の天才児は、悪魔の使いだ」
そんな言葉とともに、ネット上で仲間を募る動きさえ出てきている。
不気味だ。
ただの冗談や冷やかしでは済まされない気配が漂っていた。
できるだけ気にしないようにしているが……念のため、外出は控えるようになっていった。
***
保からメールが届く。
突然だな……今まで一回も返信してこなかったくせに、いきなり何だよ……
両親が急遽日本に帰ったので、内緒でこちらに遊びに来たい……と書いてある。
「良いよ」と返事をすると、2日後にはガードマンに連れられて、俺の家に遊びに来る。
保はずっとニコニコしている。
久々に俺たちと会えて、うれしいみたいだ。
しかし、相当にやつれているな。
マサチューセッツの会社は、苦しい状況だと聞いている。
会社の話はしないほうがいいかな。せっかくうれしそうにしているのだから。
まあ察しはつくよ。いろいろ苦労しているのだろうな。
保は3時間くらい俺たちと話をしたら、予約しているホテルで休む予定だったらしい。しかし母から誘われ、夕食を食べてそのまま家で一泊することになる。
***
翌日、午前2時――
家族が暮らすアパートメントの窓を破って、突如ロケット弾が撃ち込まれた。
轟音と閃光。
その直後、立て続けにもう一発。
……すべてが、一瞬の出来事だった。
爆風に飲み込まれ、全員が死亡した。
目の前が真っ暗になり、世界が遠のいていく。
体は痺れ、痛みさえ感じない。
(父さんは……母さんは……優子は……保はどうなった!)
必死に叫ぼうとしても、声が出ない。
悲惨な未来を変えようと必死に足掻いたはずだった。
だが――結果は失敗じゃないか!
未来を変えるどころか、優子と保という、何の罪もない人間まで巻き込んでしまった。
2人とも……俺のせいで……。
大失敗だ。
(いったい、何がいけなかったのだろう……)
最後の思考が途切れ、意識は闇に沈んでいった。
***
俺は再び――死後の進路を振り分ける神様の前に立っていた。
これで2度目になる。
前回と同じように、神様は淡々と、俺の歩んできた人生をヒアリングしていく。
「匠……二度目も、結局はうまくいかなかったようだな」
その言葉に胸が締め付けられる。
「……はい。必死に頑張ったつもりでした。しかし、両親を救うことはできませんでした。それどころか、妹の優子や、保まで巻き添えにしてしまいました。いったい何がいけなかったのでしょう……どこで間違えたのでしょうか」
問いかける声は震え、悔しさが滲んでいた。
神様は首を横に振り、静かに答える。
「それは自分で考えるのだ。私が答えを示すものではない」
そして、ゆったりとした口調で続ける。
「さて……次の人生についてだ。お前はどうしたい? 希望を聞こう……」
即答できなかった。
前世で失敗した原因が分からない。
「今度こそ」と思う気持ちは確かにある。だが、また同じ過ちを繰り返すのではないか――その不安が重くのしかかる。
(悔しい……ギフトまでもらっておきながら……何一つ守れなかった……)
俺は深く息を吸い込み、覚悟を決めて言った。
「……もう一度、過去の自分に転生させてください。今度こそ――悲惨な未来を変えてみせます。どうか、お願いします!」
「良いでしょう。お前に与えるギフトは、前世と同じだ。頑張ってみるがいい」
***
1999年7月――
再び過去の自分に転生する。
これで3度目の人生が開始する。
今度こそ失敗しない!
(前世、前前世の記憶は……しっかりと覚えている。よし……!)
ということは、天才級の頭脳も大丈夫なはずだな。
とにかく、今度こそ失敗しないぞ。
だんだん、耳から入ってくる言葉も理解できるようになってきた。
赤ちゃんの睡眠時間は長いけど、起きている時間にせっせと情報収集しておく。
父は建設会社の本社で設計……名前は相馬和也。
母の名前は相馬陽子。
俺の名前は相馬匠。……7月生まれ……
前世と同じだ。
考えてみれば、前前世が一家心中、前世が爆死。
(俺と両親は、運が悪すぎじゃないか……!)
もしも凶運のせいで悲惨な未来になるのなら、俺に与えるギフトは、天才級頭脳じゃなくて、強運にしてもらわないとダメだったということなのか?
しかし「あなたに与えるギフトは前世と同じです」と神様が言われたということは、前前世と前世の記憶と天才級の頭脳で、未来を変えられるということだよな。
やり方が悪かったということか?
いずれにしても、行動開始は前世と同じ3歳になってからだ。
それまでは、やり方をじっくり考えればいい。
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