殺されたのは、歴史の修正力だったのか?
それにしても、なぜ俺たちは過激派に殺されたのだろう?
過激派が登場するなんて……まさに歴史の修正力が発動したという気がするわけだが、俺たちは歴史の修正力に目を付けられるほどの存在だっただろうか?
「あなたの行動が、世界の歴史の流れに大きく影響を与えると判断されれば、歴史の修正力があなたを抹殺するでしょう」と、神様から注意されたのは覚えている。
しかし、俺たちの研究が戦争を引き起こしたり、産業革命といえるような大革新を生み出したりするようなレベルに至っていたというのか?
そんなことはありえない。
確かに――AIシステムの研究を継続していけば、遠い将来には産業革命と呼べるほどの大革新を生み出す可能性があったのかもしれない。
しかし、あくまでも「可能性」に過ぎない。
それだけで歴史の修正力が発動するだろうか?
どう考えても、その確率は極めて低い。
(……もし歴史の修正力ではないとするなら――俺たちは“人の意志”によって、殺されたことになる!)
仮に誰かが殺し屋を雇っていたのだとしたら……。
世間に流れた「過激派集団の噂」というのは、依頼者に疑いの目が向かないよう、意図的に流されたカモフラージュだった……そう考える方が自然だ。
(では……いったい誰が俺たちを殺そうとしたのか……?)
個人的な恨みからか?
それとも、ビジネス上、俺たちの存在を殺したいほど“邪魔”と見なす企業があったのか?
もし、個人的な恨みだとすれば……可能性があるのは“千葉夫婦”、そして“優子の叔父夫婦”くらいだろう。
だが、彼らに殺し屋を雇えるほどの資金力もコネもない。
それに、そもそも明らかに自分たちが悪い立場だ。
だからといって、逆恨みでここまで徹底的に命を狙うものだろうか……?
そうなると、俺たちを殺したいほど邪魔に思う企業があったということか?
しかし、AIシステムのビジネス化はK社がやっていたから、殺したいほど邪魔に思われるのはK社であって、俺たちではないはずだ。
しかも、鈴森会長は「ビジネスに加わりたければ誰でもどうぞ」というスタンスだったはずだ。感謝されることはあっても、恨まれることはないはずだ。
いろいろ考えてみたが、俺たちが殺される原因が歴史の修正力だったのか、誰かの恨みだったのかの判断はつかない。
とにかく3度目の人生においては、両方の可能性に気を配って生きていかないといけないことだけは確かだ。
2度目となる転生の目的は、前世と同じだ。“悲惨な未来を変える”ことだ。
具体的にどうするかだが……父の会社を倒産させないというところまでは、前世と同じでいいと思う。
問題は、その後だ……。
【プラン1】株で稼ぐだけ稼いで、世の中とは関わらないようにしながら、死ぬまで隠遁生活を送る。
【プラン2】前世と同じく、天才の頭脳を活かして研究を職業として生きていく。
“プラン1”だと、「ギフトを与えたのに隠遁生活? もっと有意義に生きろよ!」と神様が怒りそうだ。それに、死ぬまで隠遁生活とか寂しすぎる。
その生活は……見方を変えれば、悲惨な未来そのものだ。
俺としては、前世と同じ“プラン2”を選択したい。
そうすると、何の研究をどのようにするのか、になるな。
選択肢としては……
【プランA】AI以外の分野の研究をする。
【プランB】AIの研究成果は非公開とし、この世に提供するAIシステムは全てブラックボックスにする。つまり、俺たちのAIシステムは俺たちしか作れないようにし、場合によっては使えなくすることもできるようにする。
“プランA”は、自分が選んだ分野でもAIの研究と同じようなことが起こる可能性がある。それなら、一度は経験している“プランB”のほうが良いだろう。
“プランB”は、前世でたどり着いた研究レベルからスタートすることができる利点がある。もちろん時代に合わせて、公表する内容は調整する必要はある。
世の中の開発レベルからいきなりジャンプするのは不自然だからだ。
生きていくには、安定した収入源が必要になる。
収入源は“セキュリティシステム”に限定し、そこにブラックボックスにしたAIシステムを付加する。
それ以外の分野にAIシステムを提供する時は、慎重に検討することにしよう。
“歴史の修正力で殺されない対策”は、それでいいと思う。
しかし、もう一つの可能性……俺たちを殺したいと思う人や、企業の対策も考えておく必要がある。
前世では研究のことしか考えなかったが、自分や家族の身を守るための防御力を高めることが必要だ。
***
2002年7月――
よっしゃ〜……3歳になったぞ、行動開始だ!
父に設備会社を畳んでもらうまでは、前世をトレースすることで問題なしだろう。
母に許可をもらって、来年から株式投資を開始するぞ。
前世をトレースするだけだから、ドキドキ感はまったくない。
とにかく、お金を増やせばいいのだ。
(増えろ、増えろ、株上がれ……!)
***
2005年11月――
父の会社を見学させてもらい、千葉の横領の証拠を見つける。
父に依頼された平山弁護士が、製品納入業者と千葉に対して示談交渉を行う。
(順調、順調……! 2回目だと楽々だ……!)
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
励みになりますので
ぜひブックマークや評価などをお願いします。




