サンノゼに到着
「サンノゼ空港に間もなく到着します」というアナウンスで目が覚める。
しまった、機内食を何も食べなかったぞ……出国記念として、機内食の写真でも撮っておきたかったな。
さて、これからのアメリカ生活はどうなるのだろう。
変えようとした悲惨な未来が、場所が変わっただけで起きてしまうことはないだろうか。
空港の入国手続きを済ませてゲートを出ると、K社のスタッフらしき人が、社名入りの封筒を両手で掲げて立っているのが見える。
近づくと、金髪で背の高い女性が「いらっしゃいませ」と、少しアクセントのある日本語で、俺たちを迎えてくれる。
俺も優子も、英語での会話も読み書きも問題ない。
技術的なディスカッションくらいなら問題なしだ。
母はこれから勉強してもらうことになるけど、母の性格なら言葉なんてすぐに覚えられると思う。
迎えに来てくれた女性はヘレンさん。研究所のスタッフだそうだ。
彼女のお祖父さんが日本人で、片言の日本語も話せるらしい。
彼女の運転するワゴンに乗せてもらい、まずはサンタクララに用意された住宅へ向かう。
アメリカは道が広いな……土地も広い……
それに日差しが明るい……空も青い……開放的な気分になる。
俺たちが住む予定の住宅は、フェンスで囲まれた高級住宅街にある。
住宅街はフェンスで囲われていて、入口のゲートにはガードマンもいる。
ヘレンさんがガードマンに俺たちのことを説明している。
ガードマンが笑顔で車を通してくれる。
顔を覚えてもらえれば、今後は顔パスで通れるそうだ。
「着きました。この家ですよ」と、ヘレンさんが大きな家の前で車を止める。
俺たちの住宅はとても大きくて、裏庭も広く、芝生がきれいだ。
大型犬でも大喜びで走り回れそうな広さがある。
でも、これは日本人の俺たちがそう感じるだけで、アメリカ人にとっては意外と標準サイズの家なのかもしれない。
これからしばらくはこの家に住むのだ。荷物を入れて終わりというわけにはいかない。
いろいろ細々と生活の準備をしないといけない。
ガレージには車が入っている。
玄関には車のキーが置かれていて、「K社で借りているのでご自由にお使いください」と書かれたメモが添えられている。
左ハンドル・右側通行の運転に、母が早く慣れてくれるといいのだが。
とにかく、今日はゆっくり休もう。
明日、ヘレンさんがスーパーや病院、銀行などに連れて行ってくれるそうだ。
「学校はどうしますか」と聞かれたので、迷わず「行きません」と伝えた。
「2日分の食料は冷蔵庫に入れてありますのでご安心ください。明日10時にまた来ますね」と言い残して、ヘレンさんは研究所へ戻っていった。
それにしても、部屋数が多いな。3人しかいないのに、10部屋もある。
1つ1つの部屋が広いし、ベッドも大きい。
リビングも広くて、裏庭にはプールまで付いている。
1軒ごとの住宅がゆったり建てられていて、日本のように窓を開ければ隣の家が見えるような狭苦しさがない。
庭でバーベキューでもしたら楽しそうだ。
これは、ここにずっと住んでもいいかもな。
母は家の中をうろうろしながら、明日買わないといけないものをメモしている。
生活となると、細々した物がたくさん必要になる。
俺と優子は、余っている部屋のどれを研究室にしようかと見て回っている。
ネット環境やスマートフォンのSIMなど、明日ヘレンさんにいろいろ手続きしてもらうことになっている。
俺たちも必要なことをメモしておく。
日が暮れてきた。
時差に慣れていないから、お腹が減っているのかもよく分からない。
ひたすら眠いし、まだ何だか揺れているような感覚も残っている。
とにかく、こちらの時間に合わせて食事をして、しっかり睡眠をとらないといけない。
体内時計を早く時差に合わせよう。
ところで、秋葉原ビルの様子はどうなっているのだろう?
ネットが使えないから、まったく分からない。
***
翌日10時――
ヘレンさんが迎えに来てくれた。
家のインターネットは、ヘレンさんが管理会社に連絡してくれたおかげで、すぐに使えるようになった。
運転に早く慣れるため、今日は母が車を運転している。
ヘレンさんが注意点を伝えながら、いろいろな場所を回っている。
右側通行に慣れるには、少し時間がかかりそうだ。
広い交差点や道路の合流部では、間違えそうになる。
まずは、食料品や日用品、衣料品など、必要なものをどっさりと買い込んでいく。
もちろん、パソコンやモニターもね。
スマートフォンもSIMを入れ替えてもらい、使えるようになる。
研究所には週明けに行くことにして、とにかく家の中の環境整備をしていく。
母も忙しそうだ。
俺たちは、パソコンをセットして使えるようにセッティングしている。
「あ……父さんからメールが来ている。秋葉原のビルには、マスコミが多数張り込んでいるそうだ。夜中にならないと、父もビルに入れない状況らしい」
ネット記事を見ると、俺たちのことが取り上げられている。
『未来を予想できるAIを開発していた天才児……』という感じの見出しだ。
予想通りのフレーズだな。
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