表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/96

秋葉原にビルが建つ

2007年1月――


心配していたけれど、父も母も「4.8億円ある」という話を聞いた後も、態度が変わることはなかった。拍子抜けするほど普段どおりで、本当に安心した。


父は張り切って準備を進め、ビルの設計と積算をすでに完了させていた。複数の建設会社から提出された工事見積を比較検討したうえで、最終的に施工会社を決定したそうだ。


施工を任せるのは、首都圏を地盤にする中堅ゼネコンらしい。今月中には既存ビルの解体が終わり、年内には新しいビルが完成する予定になっている。


建設費がおよそ4億円で収まりそうだというから、その他の諸経費を考慮しても、数千万円の現金は手元に残る見込みだ。


もちろん、最悪のケースとして「4.8億円では足りませんでした」などという事態もゼロではない。だが、さすがに準備期間を丸1年近くもかけているのだから、そんなことにはならないだろう。


(父さんを信じているよ。なんといっても元ゼネコンの社員なのだから。積算や発注のノウハウも十分に知っているはずだし、経験は裏切らない……大丈夫だよね)


***


2007年6月――


父の話によれば、ビルの建設工事は工程通りに順調に進んでいるらしい。

うれしそうに図面を手に、工事現場に足を運んでいる。


「新入社員の頃は現場監督をしていたからな。手抜き工事なんか絶対にさせないよ」

そう母に誇らしげに語っていたが、正直言って怪我だけはしないでほしい。


これほど何度も施主自ら現場に顔を出せば、さすがに作業員や職人も気が抜けないだろう。手抜き工事どころか、いつも以上に丁寧に仕上げるに違いない。完成がますます楽しみだ。


現場監督まがいの視察の合間に、父はテナント募集やビル設備の詳細計画も並行して進めている。どうせならネットワーク環境を充実させてもらいたいところだ。父はIT分野がやや苦手そうなので、そこは俺からアドバイスしていこうと思う。


一方の俺はといえば、研究の中心がAIに移りつつある。やはり今後のあらゆる分野で需要のある技術だし、自分の会社を立ち上げる時には、これを核に据えるべきだと考えている。


公開されている学術論文を片っ端から読み込み、自分なりの理論を組み立てていく。そして、その理論の効果を検証するためのプログラムを自作しては、動かして試す毎日だ。


もちろん、一度でうまくいくわけではない。効率の良い学習を実現するために、ニューラルネットワークの構造を変えては、効果を検証し直す。その繰り返しだ。


だが、失敗から学べることは非常に多い。むしろ今のうちに失敗を積み重ね、ノウハウを徹底的に蓄積しておく方が良いとすら思える。


研究成果を外に公開するつもりはない。というより、8歳児の研究に真剣な関心を持つ人間などいないだろう。


有料の学術データベースにアクセスすれば、最新の論文や国際学会のプロシーディングを次々にダウンロードして読むことができる。そこで得た最先端の知見と、自分が考案した独自のニューラルネットワーク構造とを比較しながら検証している。


斬新なアイディアはいくつか形になりつつある。今の時点でさえ、自分の研究は世界の最先端に肩を並べている――そう自負している。


***

2007年12月――

ついに秋葉原の新ビルが完成した。

敷地は30坪と狭いため、建物は細長いペンシルビルだが、外観デザインはとても洗練されていて見映えが良い。

父に「デザインがすごくいいね」と褒めると、目を輝かせ、うれしそうに口元をほころばせた。やっぱり設計屋さんだよね。

テナント募集は建設開始と同時に動いていたらしい。秋葉原という立地条件に加え、新築というプレミアもあり、引き合いは予想以上。1階から7階まで、各フロアにすぐ借り手が見つかりそうな勢いだという。

(ところで、父さんは家賃をいくらに設定したんだろう。新築だし強気の設定か……気にはなるけど、ここは父さんを信じるしかないな)

AKビル管理の口座には、まだ数千万円の現金が残っている。多少失敗しても、当面の運転資金に困ることはないだろう。

しかも、今は無借金経営だ。設備会社の時とは天と地ほどの違いだ。

来年にはリーマン・ショックが襲来する。お買い得な暴落不動産が出てくれば、手を出す価値はあるかもしれない。

ただし、父も俺も不動産に関しては素人だ。お金だけ持って知識がなければ、業者のカモにされるのがオチ。まずは勉強だな。

とはいえ、この秋葉原ビルの家賃収入があれば、家族3人が安定して暮らしていくには十分だ。父は技術者気質の人間だし、これくらいの規模の賃貸ビジネスが合っていると思う。

一方、俺の証券口座はついに35億円に到達した。

正直、これ以上増やす必要はない。しかし惰性もあって、ついでにもう少し増やすことに決めた。

狙うのは “……電池”の株。株価が安いところで30億円分をコツコツ買い増していく。金額が大きいから、日を分けて小口で分散購入だ。売却のときも同じく少しずつ。

最高値圏で出来高が急増すれば、一気に成行注文で売り抜けるのも可能だが、無理に欲張る必要はない。来年6月ごろには、10倍になると記憶している。

ビルの完成に合わせ、正月を新居で迎えようと家族で引っ越しを急いだ。

家具や家電は俺の証券口座からの出費で新調してもらうよう、夏のうちに母に頼んでいた。これくらいの贅沢は許されるだろう。

新居の俺の部屋は、以前のオンボロアパート時代とは比べ物にならないほどスタイリッシュに仕上がった。

9階と10階を自宅にしているが、3人家族では正直、使わない部屋がいくつも出てしまう。

それでも――前世の暗く湿ったアパート暮らしを思えば、今の環境は天国そのものだ。

そうそう、安全面を考えて金庫を新調してもらった。今まで現金や書類を不用心に置いていたのは、さすがに不用心で危なかった。

ただ、気になるのは証券会社のことだ。ひとつの証券会社に何十億円も預けっぱなしで本当に大丈夫なのだろうか……。

今すぐ結論を出す必要はないが、近いうちに分散の方法を真剣に考えておこう。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


励みになりますので

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ