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転生して未来を変えろ  作者: ゲンタ


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父さん気づいてよ!

「僕は学校には行きません。だから、無学歴で大人になると思います。普通の人のように会社勤めは無理でしょう。だからこそ、自分の会社を作ろうと考えています」

「……その会社は、知識と技術が商品になります。だから今のうちから、必死に勉強しています」


「父さんにお願いがあります。将来会社を作るにあたって――父さんの会社を見学させてもらえませんか?」


「いいけど……小さな設備会社だぞ。匠が目指している会社の参考になるかな?」


「業種は関係ないよ。経理や在庫管理みたいに、どんな会社にも共通する部分を見ておきたいんだ」


「それもそうだな。じゃあ今度の日曜日に連れて行ってやろう。それでいいか?」


「父さん、ありがとう。母さんは?」


「私も父さんの会社をじっくり見たことがないから、ぜひ行ってみたいわ。みんなで行きましょうよ」


***


2005年11月の日曜日――。


家族3人で父の会社へ向かう。

秋葉原の雑踏を抜けて見上げると、そのビルは思った以上に古びていた。外壁のタイルはところどころ剥がれ、窓枠は錆びついている。正直「ボロい」としか言いようがない。大きな地震が来れば、一瞬で崩れ落ちても不思議ではない。


(俺は、こんな建物で仕事をするのは絶対に嫌だ。お祖父ちゃん夫婦は長年ここに住んでいたけど……本当に怖くなかったのかな? 建て替えが必要だな)


1階の扉を開けると、倉庫になっている部屋に機材が乱雑に積まれていた。通路も狭く、足の踏み場もない。整理整頓はおろか、掃除すらされていない。


(これが社員の、仕事に対する姿勢をそのまま映しているんだよ……父さん……!)


2階が事務所、3階はかつてお祖父ちゃん夫婦が住んでいた住居スペース。そのまま遺品が残され、生活感と埃の匂いが混じっている。


2階の事務所に入ると、古びた事務机が中央に並び、入口近くのロッカーの上には工具類が雑然と置かれていた。手入れされた形跡などまるでない。


(社員を甘やかし過ぎだよ! 父さん……!)


母が急須からお茶を淹れ、父は机から土産でもらった煎餅を取り出す。

「初めて来たけど、アットホームな事務所ね」


「だろう? そのうち3階を片付けて、ここに引っ越すのもいいかもな」


「そうね、あとで3階も見てみましょう」


両親はどこか嬉しそうに語り合っている。だが俺は心の中で首を振る。

(引っ越しなんて絶対に反対! ……寝ている時に地震が来れば、間違いなくペッシャンコになる……!)


和やかな雰囲気が流れる。

しかし――俺の目的は煎餅を食べて帰ることではない。

目的を果たさないと……。


「工事の見積書を見せてもらえないですか?」


「お、そうか。これがファイルだ。見方を説明しようか? いや、匠には必要ないかもしれないな」


分厚いファイルをめくると、時折、単価の高い設備機器が目に留まる。安い製品を誤魔化しても旨味はない。狙われるなら、きっとここだと直感する。


「この単価の高い設備機器だけでいいから、倉庫で実物を見せてもらえない?」


「もちろんだ。じゃあ1階に降りよう」

父は、俺が興味を持ったことで、なんだかうれしそうだ。

この後の展開を考えると、あまり喜んでほしくはないけどね……。


3人で倉庫へ向かう。

父が「匠、これだぞ」と指差した設備機器。梱包のビニールに貼られたシールには商品名と型式が記されている。


その型式を見積書と照らし合わせると――やはり違う。


「型式が合っていないみたいだけど……」


「そんなはずは……どれどれ……あれ? 違ってるな……どういうことだ……!」


もう1台置かれていた同じ機器を確認しても、やはり型式が違っていた。父の表情がみるみる強張っていく。


「検品や受領の書類はどうなっている?」


父は慌てて2階へ駆け上がる。数分後、手に書類を握って戻ってきた。

「これは……千葉のサインだ!」


「この見積書は、お客さんに提出した控えでしょ? 提出した内容と取り付けた製品の型式が違っていて、大丈夫なの?」


「品質や性能が同等なら問題はないのだが……う〜ん……」


父は唸りながら、メーカーのカタログを広げ、製品仕様をひとつひとつ確認していく。

「これは同等品じゃないな。性能が大きく落ちている……!」


机の上に、過去6年分の資料が次々と広げられていく。

2000年度から2005年度までの見積書、注文書、納品書、請求書――父はそれらを一組ずつ抜き出し、ペアで並べていった。


そして浮かび上がったのは、驚愕の事実だった。

6年分すべてで、見積書・注文書・請求書に記された製品名や型式と、納品書の内容が一致していない。


納品書の受領欄には――例外なく「千葉」のサイン。


父の手が震えていた。顔には怒りと困惑が入り混じる。

「これは……完全に不正じゃないか……!」


俺は心の中で呟いた。

(やっと気付いてくれたみたいだな、父さん……!)



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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