第六話:少女!
「サツキ様ー、そろそろユニコーンの繁殖の季節ですね」
夏のある日のこと。回復薬の調合素材を探しに森に行こうとしている時、ルグラが話しかけてきた。
「あー、確かに」
ユニコーンは真夏に繁殖期を迎える。子育てをするのは母親のみで、父親はどこかへ行ってしまう。薄情だと思うかもしれないが、それが自然の摂理だ。
だが、情に厚いところもあり、居なくなる前にオスは、メスのそばに食料を大量に置いてくらしい。
秘薬の在庫だけが異様に増えていくのはどうかと思うが…。だって、ユニコーンって角おらないとめちゃくちゃ気性が荒いからな。それこそ一回私怪我しかけた。折ってあげたらめっちゃ擦り寄ってきたけど。
二人で森にやってきた。毛並みがもふもふなのがメス、ストレートなのがオスだ。なんでも、ユニコーンの繁殖というのはその…激しいらしく、そしてメスが下になるから鬣が乱れ、もふもふになるらしい。
私も見たけど、思わず目を背けた。ルグラは「生命の神秘ですね!」と言ってガン見してたけど。
あれは本当に早く忘れたい。もふもふ可愛いー!とか思ってたのに、純粋な目で見られなくなった。
でも、私はまだユニコーンの子供を見たことがないのだ。200年たった今でも。なので、毎年見たい見たいと思ってこの時期は張り付く。
なんでも、ユニコーンの子供はまだ警戒心が未発達で好奇心旺盛らしく、それを補うかのようにその角からは悪意を消し去る効果のある魔力を放ってるらしい。切り落としてもそれは健在で、それを使って御守りも作れるのだとか。
「ユニコーン調査隊出動ー」
「おー、です!」
こうして、私たちは子供のユニコーンを拝みに、もとい薬草探しに出かけたのだった。
木の枝を両手に、私たちはユニコーンたちに見つからないようにそっと辺りを伺う。さーて、純粋なもふもふの子ユニコーンちゃんはどこかな?
「いませんねぇ、子供ちゃん。時期的にはドンピシャなんですけど」
「そうだね、何匹か妊娠してる子は居たから、その子に張り付いてみる?」
「んー、でも生まれたばっかりの赤ちゃんってもふもふじゃないですよ?赤くてツルツルで、なんかまるで別の生き物みたいです」
あー、確かに。パンダとか、結構大人と見た目かけ離れてたりするよな。でも、一ヶ月くらい経ったらめちゃくちゃ可愛くなる。コロンって寝転がったり、ちょこんって座ったり。とっても可愛い!
「ふへー」
「どうかしました?私の魅力に見とれちゃいましたか?」
「いや、確かにルグラは可愛いけどさ、私の知ってる動物にめちゃくちゃ可愛い子がいたの」
「はわぁ、可愛いだなんてそんな!照れちゃいますよぅ…!」
ルグラは顔を赤くし、緩みきったほっぺたを両手で押えた。もう、仕草が一つ一つ可愛い。弟子というのも相まってか、何故か私の母性が目覚めてしまいそうだ。
「わ、私の見てきた動物にね?白黒のとっても可愛い生き物がいたんだ。親は大きいけど、子供は結構小さくて、コロコロ転がったり、よちよち歩いたりしてるの。可愛いよー」
「へぇ、その子はもふもふですか?私もふもふ大好きです!」
「そりゃもうこの子みたいに…!」
私は、そこから歩いてきたもふもふの動物を手に取った。そして、もふもふと触る。うわぁー、もふもふだー!
「えー、触らせてください。そこまでもふもふですか?うはぁ、もふもふですぅ…」
にしてもこの子、何の動物だろう。四足歩行で、白い毛並み。そして虹色の鬣、小さな角…。
「って、この子もしかして、ユニコーンの子供!?」
「通りでもふもふなはずですぅ…」
あ、完全にゆるゆるモードだ。可愛いものセンサーに振り切って、私の言ってること真の意味で理解出来てない。
ユニコーンの子供は、ユニコーンの母親の周りで生活する。なので、子供がいるということは、母親もいるということ。母親がもし角を折られてなかったら…。ストレスと我が子をベタベタ触られた怒りで、どうにかなってしまうかもしれない!
って、なにか視線を感じる。気になった私が振り返ってみると、そこにはユニコーンが!この子の母親か!案の定角が伸び切ってる!早く折らないと!
「てい!」
私は急いで角を折った。ユニコーンは少し怯んだものの、怪我はないようだ。それどころか、私に擦り寄ってきた。
「おうおう、可愛いやつめー」
なんだ、母親さんも可愛いじゃないか。甘えちゃってー。
「サツキ様と私、両方もふもふに囲まれて幸せですぅ…!」
もふもふ天国が、そこにはあった。何故かそこを通り掛かったユニコーンもこちらに集まってきて、まさに天国だ。夏だから暑苦しいはずなのに、それが気にならないほど、その空間は居心地が良かった。
すると、何やらお腹の音が鳴った。私のじゃない、ルグラのだ。もうお昼時だからな、しょうがない。
「じゃーねー」
「お元気でー」
私たち二人はユニコーンの親子に手を振った。二匹は仲睦まじく寄り添いながら、森の奥へ消えていく。
いやー、じつにいいものを見せてもらった。私たちは緩みきった顔のまま、家に帰り、食卓を囲んだ。
「もふもふだったねー」
「はい、とても可愛かったです!あ、可愛いといえば…」
「ん?何かほかに可愛い子知ってるの?」
「いえ、見かけたことは無いのですが、実はこのような言い伝えがあるのです」
言い伝えか。興味がある。何より可愛い子に関する言い伝えなら尚更だ。
「角が伸び切り、魔力の溢れるユニコーンが子供を産むと、時々特別な子供が産まれるらしいのです。なんでも、そのユニコーンは人間に変化することも出来るのだとか」
「なるほどー。その子がメスなら結構可愛くなるかもね」
「ですねー。私も一度見てみたいものです」
でも、私はまだその特別なユニコーンって見たことないんだよな。もしかしたら居たのかもしれないけど、人間に化けた姿は見たことない。完全に化けるのならば気がついていないって可能性もあるかもだけど。
とにかく、ユニコーンは角が伸び切ると自分で他のものに打ち付けて折ろうとするからな。しかもその子供が産まれる可能性は低いとみた。よって見かける可能性は絶望的。200年生きててもまだ見かけないわけだ。
翌日。
また森にやってくると、角の折れたユニコーンがこちらに歩いてきた。すると何やら、『着いてきて』とでも言うようにこちらを一瞥し、また元来た方に歩き出す。
私とルグラは顔を見合わせ、首を傾げた。一体その先に何があるんだろう?
ユニコーンについて行くと、果物のなるおおきな木の前で立ち止まった。そして、上を見上げ、嘶く。
「何をしているんでしょうか?」
「さぁ…?」
私とルグラも見上げると、何やら人の足のようなものが葉枝の間から見えた。え、人間がこんな近くにいるのに、ユニコーンが逃げ出さないでいる!?
「もう、母さん。おっぱいはもういいって。私は木の実食べてるから」
人の声。やっぱり人間だ。白色の髪の少女が、顔をのぞかせた。って、あの子なんて言った?お母さん?
「あ、あの!私はサツキ・ハタノ!あなた、人間?」
「その弟子のルグラですー!」
「…驚いた。あなた人間?その人は人外みたいだけど」
「ドラゴンです」
木からすたっと降りると、少女は私たちのことを吟味するように見つめた。というか、この子まっぱだ!一糸まとわぬ生まれたままの姿だ!
「というか、あなたそれ恥ずかしくないの?」
「うん?周りのユニコーンは全員裸だよ?」
「そ、その、あなたは人間に近い姿をしてるから…それにあなた、さっきお母さんって言ってたけど…」
「そのまんま。私はお母さんから産まれてきたの。最初は母乳で我慢してたけど、味気なくなって、歯も生えてきたから草を食べてみた。でも、地面に落ちた果物の方が美味しいことに気がついて、こっちを食べることにしたの」
私はルグラの言っていた話を思い出した。『魔力の溢れるユニコーンが子供を産めば、人間の姿に変化できるユニコーンが産まれる』、彼女がそうじゃないのか?
「ねぇ、ルグラ。もしかして、この子…」
「えぇ、サツキ様。お察しの通り、この子が件のユニコーンだという可能性は限りなく100に等しいでしょう。見てください。額にツノがあります」
確かに、小さいがツノがある。ユニコーンと同じ、金色の角だ。
「あなた、ユニコーンから産まれてきたの?」
「うん。今更何を当たり前のこと聞いてるの?産まれた直後のことは覚えてないけど、ずっとお母さんと一緒」
「ってことはやっぱり、特別なユニコーン!?」
「特別?うーん…。たしかに、お母さんや他のユニコーンが人になったとこは見た事ないけど…」
この子、やっぱり特別なユニコーンだ!あ、名前聞いてなかった。
「あの、名前は?」
「ユニコーン」
「いや、それはあなたの種族名だよね?あなた自身の名前は?」
「お母さんには、娘ちゃんって呼ばれてる」
ふむ、ユニコーン全体…いや、動物全体の認識がそんな感じなのか?吾輩は猫であるならぬ、吾輩はユニコーン、名前はまだないってわけだ。
すると、ユニコーンが女の子に擦り寄り、その後頭でコロンと女の子を転がす。まるで後転するように、少女は転がる。
「お母さん?どうして…」
な、何があったんだ?この子、お母さんに拒絶された?あぁ、そうか。もうこの子も歯が生えてきてたみたいだし、もう親離れの時期か。
「もうお別れって…あなた一人で生きて行けるって…まだ、私お母さんと一緒に居たい!」
ムギュっと、女の子はユニコーンに抱きつく。見た限り、そこまで仲良さそうには見えなかったけど…。
だって、母親おいて一人で木に登って果物食べてたぞ、この子。
それとも、私たちが見ていないだけで、とっても仲良しの親子なのか?
「もっとお母さんに木登り助けてもらいたい!」
そっちかーい!自分の力で昇ったんじゃなくって、お母さんに助けて貰ってたのか!てっきり飛び降りたから登るのも簡単にやってのけるんだと思ってた。
ユニコーンは呆れたように嘶いて向こうに歩いていく。あぁ、完全に見限られたな。わんわんと泣く女の子を置いて、ユニコーンは森の中へ消えた。
「うえぇ…」
うーん、いたたまれないけど、これがユニコーンなりの独り立ち…か。これからは、彼女一人で生きていくんだ。
「もう生きられないー!」
「す、少し可愛そうですね…」
「うん…。あ、そうだ。あのね、えっと…」
「何…?」
そういえば、この子って名前なかったんだ。でも、反応はしてくれた。
「私の家に来たら、ご飯があるよ?」
さながら不審者の言動だ。独り立ちしたばかりの子を餌付けするのもどうかとは思ったが…。見てられないからな。
「ほんと?」
「うん、あなたも独り立ちしたんだから、これからは自分の場所も自分で探さないといけない。私なら、あなたの場所を作ることができるんだけど…どうかな?」
女の子は少し悩んだ後、真っ直ぐな目をして頷いた。私の家に来て、ご飯を食べるってことで決定か。あんなこと言ったけど、せいぜい今日一日かな。何せ三人で過ごすには家が狭い。
「私、あなた達と一緒にいる。宜しく、サツキ、ルグラ」
「たかが幻獣の分際でサツキ様を呼び捨てとは…殺しますか?」
「ルグラ落ち着いて。別に私気にしてないから」
たかが私を呼び捨てにしたくらいで大袈裟だなぁ、ルグラは。私だって偉くなったわけじゃないし、偉ぶれるほどの地位や権利を手に入れたわけじゃない。なのでそこまで気にしない。
「まずは…これ羽織って」
私は羽織っていたローブを女の子に被せた。幼気な少女が全裸で徘徊していたら、他の人達もびっくりしてしまうだろう。それだけならまだしも、邪な考えを持つ人達に襲われるかもしれない。
渋々といった様子で、彼女はすっぽりと体が隠れるほどのローブをぶわぶわとはためかせた。
「むぅ、落ち着かない」
「私はあなたに今までの姿でいられる方が落ち着かないよ!」
私は女の子を家まで連れ、料理を振る舞った。すると、女の子は目を輝かせ、辛抱たまらん様子で料理にかぶり着く!
「う、うまぁ…!」
「気に入った?」
「うん、うん、とっても!」
「ちなみに私がつくりました」
ふふん!とルグラは胸を張る。基本的に、料理は彼女に作ってもらっている。私よりもよっぽど一人暮らしの経験が長いのか、料理に関するスキルもカンストしている。『調理』『毒抜き』『血抜き』…etc。
この世界では、調理や調合などは鮮度が命らしい。つまり、天然の物であればあるほど美味しく、効果も大きいということ。なので、彼女の調理は素材を手に入れることから始まる。そしてそれを氷漬けにし、素材の鮮度を保つ。それを解凍し、調理すると私の料理の数倍美味しい。
「うん、なかなか腕がいい。褒めてあげる」
「偉く上からですね、えぇ!?」
ルグラからピシャリと冷えた空気が流れ込んでくる。あぁ、嫌な記憶が…。ここは何とか抑えてもらわないと!
「落ち着いて!もう、あなたもちゃんと謝って、料理を作ってもらった人には、感謝してご飯を食べないといけないんだよ」
「うん、わかったー、サツキー」
むにゅむにゅと女の子は頬っぺを私にくっつけてくる。随分と懐かれてしまった。別れる時に少し寂しくなるかもな。
「そうだ、後で服を仕立ててあげるね」
「いいの?やったー」
「サツキ様。どうしてこんなに無礼な小娘に肩入れなどするのですか?」
「うーん、やることも無いし、このローブも気に入っちゃったしね」
200年使い潰してると、愛着というものも湧いてくる。だからといって、まっぱで放り出す訳にも行かないからな。それに、もっとかわいい服を用意したらこの子も気に入ってくれるかも。
私は早めに昼食を切り上げ、女の子の服を仕立てにかかった。やっぱりフリフリ…いや、やめておこう。この子のことだ。木の実とかも食べてたみたいだし、木登りとかもしやすいように動きやすいような服装にするか。
角を隠すため深めのフードと、体温調節のしやすい素材、そして走りやすいようにスニーカー。フリルや詰め物はなるべく少なめ。
「センスいいー!」
女の子はすぐに服を着替え、飛んだり跳ねたりして動きやすさを確認していた。少し可愛さには欠けるけれど、機能性に関してはかなり追求した。かなり気に入ったみたいだ。
「好きー、サツキ好きー。ずっと一緒にいるー」
「え?あなた出ていくんじゃ…」
「んーん!一緒にいるー!」
んー、この子、ワガママな節があるな。家に置いてあげたいとは思うけど、さすがに家が狭すぎる…。
「あの、ユニコーンさん。サツキ様は困っておいでですので…」
「冷凍トカゲは黙ってて」
「なるほど、余程命が要らぬと見受けられるな。幻獣風情が」
この二人、ほんとに喧嘩してばかりだなぁ。喧嘩するほど仲がいいとはよく言うが、二人はその逆だろう。
「二人とも仲良くしてー!ユニも、仲良くしないとうちには置けないよ?」
家族は仲良くしないとね。すると、ルグラが私に掴みかかってきた!
「こんな小娘を匿う気ですか!?」
「匿うんじゃない。この子には、弟子2号として住み込みで弟子入りしてもらうよ。ひとり弟子をとったなら、もう一人弟子をとっても変わらないでしょ」
ルグラは、「ぐぬぬ…」と唸っており、煮え切らないようだったが、あなたが言うならと飲み込んでくれた。
「ユニ?」
「ユニコーンだから、ユニ。どう?」
「…気に入った!」
我ながら、ネーミングセンスが皆無だな。でも、この子は気に入ってくれたみたい。
「ありがとう、サツキー」
「弟子ならば、師匠には敬意を払うべきです!」
「サツキはサツキー」
「いいよー、気にしてないから。ユニーこっちおいで」
私はユニの髪をとかしてあげた。きれいな金髪なのに、ゴワゴワしてたからな。まぁ、あんな野生児みたいな生活してたから仕方がないかもだけどな。
「んふー」
「よーし、綺麗になった!」
「ありがとー、サツキ」
ユニは、笑顔を振りまいた。さて、明日あたり大工さんに増築の話をもちかけるか。んー、でもお金が…。
「あの、サツキ様。もしや増築をお考えでは?」
「え、なんでわかったの!?」
「以心伝心…と言いたいところですが、さすがに三人で過ごすには狭すぎると思いまして。私の主観ですが」
「私もそう思ってたよ。明日あたり…」
大工さんに相談しようと思ってた、そう言おうと思ってたのだが、ルグラがバンと手を叩いた!
「それならば私におまかせを!私にかかれば今日中にこの家の約三倍程の大きさの屋敷の建築を建てられます!お代は結構です、これも修行の一環ですので!」
そう言うと、ルグラは山向こうから大量の木材を持ってきた。そして、3人で効率よく加工。
「サツキ様ならともかく、そこのちんちくりんはどこぞで指を加えて見てて欲しいです。その方が効率がいいです!」
「ユニもここに住むんだから。一緒にするー」
ユニの一人称は、ユニに落ち着いたんだ。なんだか子供っぽいけど、可愛いからいいか。
「そうだねー、3人で頑張ろー!」
「おー」
「お、おぉ…」
そのあと、ルグラが枠組みを作ったあと、そこに合うように角材をはめていく。ドラゴンの姿になって、力技で柱を立てていく様は、まさに爽快。私とユニは、粘土を塗っていく。耐久性が増すのだ。
『かーんせーい!』
本当に、夕暮れには完成した。豪華二階建て屋根裏部屋あり、暖炉風呂トイレ完備の一戸建てだ。トイレに関しては、ルグラの髪を一ヶ月に一本落とす。すると、周囲の物質を浄化してくれる。老廃物であろうとなんであろうとだ。
この村はまだ上下水道は設備されていないらしい。井戸はあるみたいだけど。まぁ、トイレは俗に言うボットンだ。なのだが、私の提案で、村のトイレにもルグラの髪を落としてもらった。元々は肥料にもしてたらしいが、不潔だし、何より臭いしな。
さて、家具も全て置いて、私の工房も配置完了。そして…。
「ここがルグラの部屋だよ」
「サツキ様…、よろしいのですか!?」
「あなたが作った家だもん。それくらいプレゼントさせてよ。机と椅子はもう置いてるけど…、ベッドが必要なら後で作るよ」
「そ、そんな滅相もありません!サツキ様に力仕事など!」
でも、さすがに家ひとつ作らせておいてベッドも作れというのはあまりにも酷というものだろう。実際、ルグラが瓦を置いている間、私のベッドは私が作った。ついでにユニの分も。私のベッドを作ってる時、強請られたのだ。
ルグラの分を作ろうとした瞬間に瓦が貼り終わったので、完成した喜びでてっきり忘れていたが。
「ユニの部屋は?」
ユニがクイクイと私の袖を引く。おぉ、上目遣い可愛い。
「安心して。その隣はユニの部屋だよ」
そう伝えると、ユニは走って部屋を出て行ってしまった。
「余程嬉しいんですね」
「そうだね。どう、仲良くやってけそう?」
「はい。あの子の角には邪念を祓うことは出来ないのですが、不思議ともう苛立ちをあまり感じなくなりました」
「そっか。なら良かった」
すると、「きてきてー」と元気そうな声が隣の部屋から聞こえてきた。賑やかになるなぁ、これから!
翌日。朝から三人でベッドを作っていた。
「全く、師匠にベッド作りを手伝わせるとは、とんでもないダメ弟子」
「聞いた話では、あなたも手伝ってもらっていたそうですが?」
「妹弟子として不甲斐ない」
「うるさいですね」
二人は言い争いをしながらも、協力して作業に取り組んでいる。うんうん、仲良くなった証かな?
すると、何やら一階から声が聞こえてきた。
「すみませーん!」
「あー、はいはい。ただいまー。すみませんね、今ちょっと慌ただしくしてまして」
私が一階に向かうと、黄金色の髪の少女が佇んでいた。キラキラとした髪は、ユニよりも一段と煌めいていて、いつかの師匠を思い出す。
「小売の魔女、サツキ・ハタノ様ですね?」
「は、はい。そうですけど…」
こうも、丁寧に話されるとこちらも畏まらざるを得なくなる。なんだろうこの子、貴族の家の出とか?
「私を、弟子にしてください!」
私は放心状態だ。何せ、昨日の今日で弟子が一人増えたばかりなのに、もう弟子三号の候補が一人現れたのだから。




