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第十一話:答え合わせ!

「さ、答え合わせの時間だ。お前ら回答送ってこーい」


 私たちは後ろから前に回答を送る。そして一通り見てアインツ先生は…、


「お前らほんとバカだな!正解者ゼーロ!」


(む、ムカつくー!)


 誰もがそう思っただろう。先生は、プリントに描かれていたデフォルメ先生の数倍はムカつく顔をしていた。あそこまで人を小馬鹿にした表情をされると、逆に尊敬の念まで湧いてくる。


「そんなバカなお前らに今日はこの授業を施してやる!」


 先生はチョークを手に取り、カツカツと書きなぐる。「詠唱の改訳」?


「詠唱の改訳だ、魔法の真理の一部を見せてやる」


 にっと、先生は口角を上げる。にしても、『詠唱の改訳』…か。私は聞いたことないな。短縮化とは違うだろうし。


「あんなの知ってる?」


「うーん。詠唱の短縮化はずっと前に習ったんだけど」


「おいシャロ。試しに『サンダー・アロー』の魔法詠唱を短縮化してみろ」


 サンダー・アロー。雷の矢を掃射する魔法。魔法としては初歩の初歩であり、魔術より少し強力である程度だ。

 詠唱は、『我が手に宿りし迅雷よ・今その姿を・神速の矢と成せ』だ。


「『迅雷よ矢と成せ』です」


「その通りだ。このように、魔法詠唱というのは速さが命だ。後出しであろうとも、詠唱が早く終われば相手が魔法を発動させる前に倒すことが出来る。確かに早口で詠唱して成功すればいいんだが、噛んでしまったり、言い間違えたりしてしまえば失敗する。そこで重宝されるのが詠唱の短縮化だ。魔法の扱いにたけるやつなら、さっきの一節でサンダー・アローを発動させることが出来る」


「しかし、それは詠唱の改訳とは別個の存在ですよね?」


「あぁ、詠唱の改訳っつーのはこういうののこと言うんだ」


 アインツ先生は、窓を開け、そこから腕を突き出した。


『そこの・リア充・爆ぜろ』


 は?何、そのめちゃくちゃな詠唱。そんなので魔法が発動するわけ…。ないと思っていた。しかし、私の考えとは裏腹に、先生の前方に巨大な魔法陣が展開される。


「え?」


 ドウン!と、爆発が起こる。窓が震え、遠くで爆音が木霊した。そ、そんな、魔法が発動した!?


「この様に、魔術も魔法も一番大事なものはイメージだ。詠唱ってのは、そのイメージを連想するのに最適化されたものだ。つまり、本人がそれを連想出来れば詠唱なんでどうでもいいんだよ」


「うーん、つまり…、昨日のあの魔法はその改訳を使ってたってことで、フィリア先生の何気なく放った『ゆ・る・さ・な・い☆』が改訳された魔法詠唱だったってことですね?」


「ふむ、セッキは飲み込みが早いな。じゃ、いまから演習場に行くぞー!」


 演習場!?あそこは魔術演習以外では使用禁止のはず…。あ、フィリア先生がにこにこしてる。なら大丈夫だろうか。なんでも、あそこの看板には最高責任者フィリア・ハルジオと書かれていた。なんでも、ハルジオとは夫さんの苗字。もうとっくに他界してしまったらしいが…。


 とにかく、最高責任者の合意の上ならば、使用許可が降りたも同然というわけだ。


「最近あの先生かなりまともな授業をするわね」


「そうだね」


「前までどれだけまともな授業してなかったの…?」


 2人はうんうんと頷き、少し感心している様子。というかさっき放った魔法…、私に放ったプロミネンス・バースト!?


「お前ら自分なりに改訳詠唱を作ってみろ。改訳の方向性は大きく三つ。威力の向上、詠唱の単純化、そして、効果の一部改変だ」


 演習場に着いたやいなや、先生はそんな無茶振りをしてきた。私は先生に言われた通り、先生の改訳したプロミネンス・バーストの詠唱をしてみたが、何も起こらない。案外難しいな…。


「先生、無責任すぎやしませんか」


「なんだシャロ、そんなことも出来ないのか?」


「説明されてすぐできるほど私は天才じゃないんです。それに、私イメージが苦手で…」


「頭が固いんだよ、お前は。もっと適当でいいんだ、魔法詠唱なんて」


 すると、先生が手をつきだす。魔法を発動させるのか?


「今からボトムレス・ダークマターの詠唱するから見てな?」


「そ、それって上位魔法ですよね?難易度と高いんじゃ…」


「いや、簡単だぜ?」


 その場にいた全員が先生に注目する。それもそのはず、ボトムレス・ダークマターとは、一定範囲の地面が底なしの沼に変異するというもの。しかも、その沼の物質はまだ解明が進んでいない上に、なぜかその中に入った物体にまとわりつき、脱出をさせないようにするらしい。


 詠唱も確か五節は必要だった気がする。魔法詠唱の中でも一二を争う長さ、そして複雑さだ。難しい言葉も入ってくるため、理解するのも難しい。それを簡単なんて言ったら、注目もするだろう。


 やがて、アインツ先生は口を開く。


『フィリアの・料理・超不味い!』


 魔法陣から暗黒の球体が一つ放たれ、地面に触れた瞬間に周囲を侵食するように暗黒空間を生成する。それは光すら飲み込み、全てを喰らい尽くす闇だ。


「な、なんでそんなあんまりな詠唱なんですか!」


 かなり独特な詠唱を唱える先生に、シャロが思わず突っ込む。


「だってさー、あいつの料理、クソ不味いんだもん。そう、まさにそこに広がる暗黒空間みたいに。それになんか舌とか口内にへばりつくような感覚もそれと似てるよな。もう二度と食べたくない」


「えっと、そこまでなんですか…?」


「あぁ、二度とごめんだね!」


 なるほど、確かにフィリア先生が料理しているのはちゃんと見た事がなかった。そこまで酷い腕前だったとは…。


「そっかー、そんなに嫌なんだー」


「そりゃもう…あ」


「うふふー」


 アインツ先生の表情が固まる。そこにどす黒い気配を放つフィリア先生がいたからだ。一緒にいたのも忘れていたのか、ベラベラと料理の悪口を言われる。それに耐えられなかったんだろう。顔は笑っているが、目は笑ってない。


『お・し・お・き!』


「ぎゃああああ!」


 フィリア先生の逆鱗に触れたアインツ先生は、無事であるはずもなく雷に打たれ丸焦げにされる。プスプスと煙をあげる彼に、私はデジャブを感じた。なるほど、昨日のあれはやっぱりフィリア先生にやられたんだ。


「さー、先生は体調不良みたいだから、こっからは私がみんなに授業するよー!さー、皆、じゃんじゃん魔法詠唱を改訳しちゃおー!」


『は、はーい…』


 私たちは、何も言わずに授業を再開した。フィリア先生は乱雑にアインツ先生を引きずり、演習場の隅に追いやる。


「セッキ、魔法教えて」


「あ、ユニは魔法使えないんだっけ。えっとねー、まず魔法詠唱は…」


 それから、私はユニに初級の魔法であるサンダー・アローの詠唱を教えた。しかし、ユニは何やら全く理解できないらしく、「うー?」と頭を捻る。


「もっと簡単にしたいー」


「それって、詠唱の改訳ってこと?ダメだよ、まずは普通に詠唱して、イメージを固めないと…」


『ビリビリ・が・ビューン』


「…ほらね、全然」


 バシュンと、何かが炸裂する音が聞こえる。私は目を疑った。ユニが、詠唱の改訳を成功させたのだ!しかも的の中心を的確に撃ち抜いている。


「やったー、セッキ、褒めて褒めて」


「す、すごいよユニ!こんなに簡単に詠唱の改訳ができるなんて!」


「むふー、でも、案外簡単だった」


「そう、アインツ先生も言ってたけど、君たちは難しく考えすぎなんだよ」


 確かに、私たちは詠唱の言葉が難しいものだから、短縮化された詠唱も難しいものだ考えるという、先入観と似たようなものがあるんだろう。

 んー、それと弟子が先にあんなことやってのけられると、少し競争心が湧いてくるフィリア先生も私が不老不死になった時こんな気持ちだったのかな?


 さすがにユニの師匠として、ここはさらに難易度の高い技を改訳したい。『エレクトロ・エクスプロージョン』にするか。フィリア先生に教えてもらった、かなり威力の高い威力の魔法だ。200年前の私では発動させることすら出来なかった。魔力をアホみたいに食う上に、詠唱の一節も長い。詠唱自体は四節なのだが。

 …えっとたしか、『遥かなる神の怒りを具現せし雷よ・我はそなたに希いそなたは我が願いに答えるべし・我は目の前に広がる全てを穿ち聖杯を掲げし者・裁定の時は来たれり今全て灰塵とかせ』。これを覚えるまでに何年もかかり、さらに詠唱も長いため相手に隙を晒すことになる。


 今の私は魔力量も跳ね上がったため、魔力の面の問題は消えた。つまり、あとは詠唱を短縮化できれば…。


 神の怒り…神の怒り…。そうだ!私は試しに手を前に突き出し、詠唱を開始する!


『天・罰・覿(てき)・面!』


 ダメもとで思い切って詠唱を改訳した。すると、魔法陣から雷撃が飛び出し、窓に着弾した瞬間に爆発的に威力を上昇させる!でも、気持ち火力が落ちているな。その分詠唱が短いから十分使い勝手は良くなっている。


「凄いじゃない、セッキ、ユニ!こんなにも簡単に改訳詠唱をやってのけるなんて!」


「俺らも負けてられないな!」


「だね、ダリル。よーし!」


 同じクラスの男子の中心的存在のダリルと、フェイルが気合を入れる。つられて、クラス全員が的に適当な詠唱を唱える。所々、魔法が発動した。短縮化に成功したみたいだな。


「痛っ…!あっ、お前ら、詠唱の改訳に成功したんだな。これなら魔道祭もお前らの優勝か?」


 おや、丸焦げになったアインツ先生が目を覚ました。それより…。


「魔道祭?」


「魔道祭は、毎年秋の初めに開催される歴史ある魔道の祭典よ。五クラスでそれぞれ、鍛え上げてきた実力を見せるの!」


「優勝したクラスには、修学旅行の行き先の決定権を与えられるのだとか…」


 なるほど、かなり歴史のある行事なのか。私も参加することになるのだろうか。一ヶ月以内にあるのなら。まぁ、体育祭のようなものだな。


「そうだな、詠唱の改訳なんて他の奴ら習ってないだろうし、マジで優勝行けるんじゃないか!?」


「付け上がってる一組の連中の鼻っ柱へし折ってやろうぜ!」


「もう一生私たちに頭の上がらないようにしよー!」


 おー、みんなも盛り上がってる。でも、それ以前に気になるのは…。一組と何があった。


「ふん、くだらない」


 そんな声が、演習場の端っこから聞こえた。その言葉通り、心底つまらなさそうな声が。


「へ…?」


「くだらないと言っているんだ、そんな祭りで自らの実力を推し量ったところで、実戦には何の役にもたたない。所詮戦場を知らない子供の戯言だ」


「…何それ」


 正直、私も体育祭などに関しては少なからずそのようなことも思ってはいたが、口に出す勇気はなかった。今ならば、口に出さなくてよかったと思う。皆より意識が低い私でも、かなり頭にきた。

 私は、ぼーっと授業を見物している少年に突っかかった。


「なんだお前、やるのか?」


「自分の実力も分からないんだ。まともに授業も受けてない君よりか、私の方が強いと思うけど…?」


「はっ、器用なものだな。目を開けて立ったまま寝言を言うとは。その目はガラス玉か?」


「っ…!」


「やめて、セッキ!この子は…!」


「大丈夫です、手加減はしますから」


   フィリア先生の静止を振り切り、私は立ち上がった少年に向き合う。その時、私は知らなかった。あんな結末になるだなんて…。


『雷電よ・かのものを捕らえよ!』


 雷撃で相手を捕縛する、中級魔法『サンダー・ネット』だ。相手が抵抗しようとすると、電撃が走る。


 よし、捉えた!…つもりだった。彼の身に触れた電撃は、跡形もなく消滅した!


「この程度で俺に勝てるだと?笑わせるなよ、驕りがすぎるぞ」


「なっ!?こ、今度こそ!『天・罰・覿・面』!『追打(ハウンド)』!『再追打(リチェック)』!」


 次は手加減しない!小売の魔女の底力見せてやる!この際相手の怪我なんて考慮しない!怪我してなんぼだ!


 連続で魔法が炸裂し、相手をしとめたと思った…のだが…。


「な、なんで立ってるの…?」


 相手は全く効いていないらしく、傷一つ着いていない。そ、そんな…!『エレクトロ・エクスプロージョン』の三連撃だよ!?


「さて…、そろそろやるか」


 少年は、手をこちらに向ける。な、何をする気だ?でも、この子はまともに授業も受けてなかったし…!


「自分の行いを…省みろ」


 手の前方に、大きな魔法陣が展開した。まさか権能!?こ、これはまずい、逃げられ…ない!


「そこまで」


 私と少年の間に白い外套(がいとう)が揺れる。フィリア先生だ。私に手を向け、もう一方の手で少年の手を掴む。


「邪魔をするな」


「私の生徒に手を出したら、許さないよ」


 ビリビリと、少年の放つ殺気をかき消すほどの殺気をフィリア先生が放つ。私に向けられたものでは無いと知っていても、ぞわりと全身の身の毛がよだつ。


「…わったよ」


 若干不満そうに、ため息をついて少年は演習場の隅で座り込んだ。なんだろう、相手とさほど身長差もないはずなのに、殺気が段違いだ。


「セッキ!」


「フィリア先生…って!」


 私はペシっとデコピンされた。ヒリヒリと痛む額を抑え、涙目でフィリア先生を見つめる。


「何するんですか!?」


「もう!セッキ!ナンディは怒らせたら怖いんだよ?あんな突っかかっちゃダメ!それに、あの子はその日特別な用事があって公欠なの。実は誰よりも楽しみにしてたのに、ねー!」


「うっせ!」


 ふーん、そうだったんだ。自分が参加できないから、くだらないなんて冷めたこと言ってたんだ。


「ちなみに、この二人も公欠だ」


 アインツ先生が、シェルカとアインゲイルを連れてくる。


「えへー、残念無念だなー」


「来年はぁ、参加したいですぅ」


 なるほど、これで三人抜けるから私たちは助っ人として呼ばれたのか?にしても、この三人はかなり強力だが、私たちで務まるか?


「セッキ、大丈夫!?」


「う、うん」


「ほんと、心配したよ…。怪我がなさそうで何より」


 すると、フェイルが私に耳打ちした。


「あの人、星雲隊の人です、フィリア先生が止めてなかったら完全に命を落としてましたよ!」


 一筋の汗が私の頬を伝った。通りで権能を使えたのかと理解する前に、私はあのままフィリア先生が止めなければどうなっていたか、想像してしまった。それは火を見るより明らかであった。


「あの人、怖い」


 ユニが私の袖をつかみ、身震いする。私も怖い。そもそも私はどこかおかしかった。どうも、思い上がってたらしい。少しは、相手の力量とか考えた方が良かったか?でも、あの子の見た目からはどうも権能が使えるほどの人だなんて思えないのだが。


 人は見かけには寄らないというのか。




 それから、私たちは体術で思いっきり走らされ、クタクタになったところでさらに疲れそうな話し合いが始まる。


「皆、魔道祭の選手を決めたいと思います!」


 委員長気質のシャロと、書記としてフェイルが中心となり、話し合いを始めた。


『ヴぁ…』


 机に突っ伏し、ゾンビのごとく呻き声が所々から聞こえる…。90分間ほぼ走ってたからな…。無理もない。実際私も何とか意識を保っている状態だ。気を抜けば落ちてしまう。


「あはは…皆疲れきってるね」


「皆、体を起こして!私だって今にも倒れそうなのよ!」


「ならお前もそんな事してないで席についてたらどうなんだよ」


 ダリルが顔だけ起こし、シャロに小言を言う。心理はこうだ。「こんな事してるより寝てた方が楽だ」だろう。私も眠い。


「なんだー?お前ら。えらく疲れきってんな」


 偉く快活な声は、酷く聞き馴染みがあった。だが、その人の声とは思えないほど快活すぎる。


「アインツ先生!」


「おう、それよりわかってねぇな、シャロ。人のやる気を出させるには、コツがいるんだよ」


「コツ?」


 あぁ、きっとろくでもないことだ。あの顔はなにか企んでる顔。ニマニマと笑みを浮かべる先生は、偉く楽しそうだった。


「お前ら!このクラスが優勝できた暁には、来る修学旅行、二ーフス大遺跡に連れてってやる!」


 二ーフス大遺跡か。聞いたことないや。ルグラならば何か知ってるか?


「二ーフス大遺跡って?」


「臨海に位置する遺跡です。なんでも、ホムンクルスの研究の拠点になったのだとか…。もう500年は前の話ですが」


 なるほど、歴史としては少し浅い遺跡…なのか?


「できなかった暁には…」


 ニィっと先生が悪い笑みを浮かべる。何だ、何が起こる!?


「魔術座学の授業をひとつ削って、体術にするからな!」


「お前らやるぞー!」


『おー!』


 な、なるほど脅しか…。確かに、この先生ならやりかねないだろう。となればやる気を出すしかない。体術がこれ以上増えるのはゴメンだ。あれは人が週に何回も受けていい授業じゃない!


 それから、急ピッチで全員にそれぞれ競技が割り振られた。先生を中心として、何故か決められる。「お前らじゃどうせ挙手制だろ?そんなじゃダメだ、俺がびしっと任命してやる!」とのこと。


「ユニとセッキ、フェイルは魔法速射だな」


「おー」


「分かりました。ユニ、フェイル、よろしくね」


「先生、何故三人を?」


 シャロが少し不思議そうに先生を見つめる。正直、私も少し不思議だ。


「魔法速射はその名の通り速さ、正確性が命だ。フェイルとセッキは、魔術実技において、優秀な成績を収めていて、さらに詠唱の改訳もマスターしてる。ユニに関しては、初めは魔法も魔術もからっきしだったが、今日一日で改訳までやってのけ、制度も十分だった。その吸収性を考慮して、三人目に選出した。さ、次は…」


 と、このように先生はもっともな理由を述べ、生徒たちをそれぞれ振り分けた。シャロは魔道決闘、ルグラは体術にて出場することになった。なんでも、ルグラの選出理由については、『フレイがお前のこと褒めてたから』とのこと。

 確かに、ルグラは最後の最後まで息を切らしていなかったからな。ユニもだが、もうユニは選出が決定している。野生児二人は体力が多いのか。


 最終選出は、『魔道飛行』にユーリとハロウとカリス、『体術』はルグラとダリル、レイ。『詠唱即解』は詠唱についての知識に長けているキリカ。『魔力量測定』では、単純に魔力量の高いハイルとコルニ、リリティ。『錬成実技』はハーネス、ミルマ、クイナ。『魔術操作』に、マリス、インカ、ホウセン…。そして、最後に『魔法速射』。的を正確に射抜く種目。最終種目、責任重大だ。


 早速、三人で作戦会議。と言っても…。


「なるべく詠唱を短縮化して、さらに正確性もあげないと…」


「そうだね。ユニももっと色々魔法を覚えないとね」


「ん、頑張るー」


 ぐーっと背伸びをする、ユニ。やる気を出してるみたいだな、私も頑張ろ!


 私たちは演習場を利用することとなった。そこで、なるべく多くの魔法を教え、それを適当に改訳してもらった。


「よし、これで本番も大丈夫!」


「やったー」


「フェイルも、三人なら一番取れるよ!でも、若干焦りが出ると正確性と威力が上がりすぎることがあるから、そこは注意してね」


「うん、頑張るよ…!」


 ぐっと、拳を握るフェイル。気合いは十分か。さて、チャイムもなった事だしクラスに戻ろう。




 なんだこれ。

 何やら隣のクラスの生徒だろうか?見覚えのない生徒だ。とシャロが火花を散らしている。


「いい度胸じゃない、その喧嘩受けて立つわ!」


「お前ら落ちこぼれクラスに、勝てるわけないだろ」


 そう言うと、男子生徒はクラスから出ていった。な、何があったんだ…。


「あ、セッキ、実はね!」


 要約するとこうだ。皆がやる気を出して勉強していたところ、一組の生徒がやってきて、「落ちこぼれクラスのくせに練習しても無駄」だの、「優勝は絶対に一組」だのと散々言われたらしく、売り言葉に買い言葉で口論になり、今に至る…らしい。

 カースト制度的なものだろうか。二組より一組の方が優れているとか。


「あんな他人を見下してる奴らに負けたくない!皆、今回の魔道祭、絶対に勝つよ!」


「おう、一組の連中見返してやろうぜ!」


 かくして、私たちは一致団結し、打倒一組もとい体術の授業をこれ以上増やさないために優勝を目指すのだった。


 あれ?私一番大事なこと聞いてなくないか?教科書を顔にかけ、足を組んで寝ているアインツ先生を叩き起す。


「あ?なんだよ、セッキ」


 ぱさりと教科書が顔から落ち、不機嫌そうなアインツ先生の顔が現れる。


「先生、魔道祭の詳しい日時っていつですか?」


「あぁ…」


 大きくあくびをしたあと、彼の口から驚きの言葉が飛び出す。


「今週末だ」


「へ?」


 さすがに時間無さすぎだろー!

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