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リリアンナの部屋は海に面しているため、うっかり手を地面から離してもバルコニーに住んでいれば2分の1の確率で閃光は海へ飛んでゆくため被害が少ない。
しかもラテイン公爵家の領地は温暖で冬でも15度くらい。そして夏は30度くらいで、なんとか年中屋外でも生きていける気温である。
この閃光をなんとかしないと一生この部屋から出れないかもしれないリリアンナ。
3人はもう学園にも来れないかもしれない親友を見た。
相変わらず豚を頬張っている
「リリアンナ、いつも遊びに来るわね!」
「何があっても私たち友達よ!」
「美味しいものならなんでも持って遊びにくるわ!」
3人は現実を見ずに、とりあえず今の事だけを考えることにした。
その後も他愛のない話で盛り上がった後、3人は帰っていった
次の日、また3人はやってきた。
牛一頭を持って…
「リリー、少しはよくなったかしら!」
とキャメロンが問いかける。
今日のリリアンナは椅子に座っていた。
でもバルコニーにいることは変わりない。
「リリー!座っていても平気なの?手からの閃光がコントロールできるようになったの?」
「コントロールは相変わらずできないんだけど、合金を手のひらにぴったりくっつけていると大丈夫みたい。昨日、ハルと執事のハンスがね、魔法書や文献を調べてくれてね。合金、または、大理石は閃光でも貫くことができないことがわかったの。でも手に合金をつけ続けるって大変ね…」
とリリアンナは、プルプルしながら手を胸の高さまで持ち上げた。
そこには、5センチの厚みの合金に手を張り付かせて、グルグル巻きにされた状態の両手があった。
「リリー!これはトレーニングよ!
淑女である私達は重いものは持たないから、この合金はつらいと思うわ。
でも、スーパーモデルの皆さんは、人の重さほどある重りを使ってトレーニングしていると淑女新聞に書いてあったの!
神様はリリーに『スーパーモデルを目指せ!』とおっしゃってるのよ!」
斜め上の回答を導き出すセレーナ嬢。
「わかったわ!私頑張る!」
「これなら、ご飯を一人で食べれないから自然にダイエットにもなるわね。牛は必要なかったかしら?
バーベキューという文化がある、かの国では、丸ごと一頭の牛を何時間、何日もかけて焼くそうよ!
私達のバーベキューとは全く違うわね」
とキャメロンは言いながら牛一頭を昨日、豚を置いた場所に設置した。
「牛!ロース!ハラミ!カルビ!」
と急に元気になったリリアンナ
「私は運命には負けないわ!この閃光をコントロールして見せる!
だから…解いて?」
と最後の方は甘えるようにキャメロンにお願いする
「仕方ないわね」
と優しく笑ったキャメロンがグルグルの縄を解いてあげると、
勢いよく手を牛一頭に向けた!
激しい閃光が出て瞬時に丸焼きになった。
そしてその手を勢いよく合金に貼り付けると
「お願い」
と縛ってもらえるように促したが、3人は牛の丸焼きに駆け寄って行った。
牛にナイフを入れるところに、またもやお茶とお菓子をカートに乗せたハルが入ってきた。
「お嬢様方!本日はリリアンナ様のためにぃー」
と昨日と同様の光景に目を丸くするハル。
ハルの目には牛の丸焼きに群がる3人の野性味あふれるお嬢様方の姿がうっつた。
リリアンナは、早く食べたくてウズウズしており、今にも合金から手が離れそうになっていた。
ハルは急いでリリアンナに近づくとすごいスピードで手と合金を縄で縛った。
「危ないところでした。お嬢様の丸焼きが3人分出来上がるところでした。」
と言うと、バルコニーにあるテーブルにお茶を置いた。
「リリアンナ様用はこちら」
と、ストローが差してある冷たい飲み物を置いた。
「昨日、帰ったらね、王宮勤めのお兄様からすごい話を聞いたの。なんでも王弟殿下がいよいよ婚約者を探すお気持ちになったらしいわ。」
とキャサリンが楽しそうに話し出した。
「王弟殿下って、この国を陰で支えていると言う噂があるお方よね」
「そうそう外交力に優れているせいでほとんど国に帰ってこないから国民の前に姿を見せた事はないけど、噂ではすごくイケメンだとか!」
「現王様とは腹違いなので年がすごく離れていて今28歳。この国には婚約者になれる家柄の女性がいないから他国から誰か嫁いでくるのかしらね。」
「そうよね、王弟殿下のお母様は隣国の姫君なんでしょ?だから、隣国からどなたか嫁がれるのよ」
「その話びっくりだわ!
王弟殿下が婚約したら、ファンクラブの皆様が泣くわね。
うちのお姉様がファンクラブの会員なのよ。
そうそう、ファンクラブ泣かせといえば宮廷の財務部にいるうちのお兄様が言ってたんだけどね、最近、騎士団長のブルーム様が退団の申し入れをされたそうよ。
なんでも、ご実家のバージニア伯爵家の後取りである弟君の病が悪化して領地を治めるのが難しいとか。
ただ、ブルーム様ほどの人材がなかなかいないようでね、退団が受理されていないらしいわ。」
と、キャメロン。
キャメロンは話しながら、リリアンナの口に小さくカットしたビーフサンドを入れる。
ソースはハニーマスタード味だ。
リリアンナは幸せそうにもぐもぐする。
「バージニア家のブルーム様といえば、燃えるような真っ赤な髪の毛と新緑を思わせる綺麗な緑の目の端正な顔立ちの騎士団長様よね?国内最大級のファンクラブがあるとかないとか…。
そしてどうしても騎士になりたいから家督を継がないと伯爵家を飛び出したのも有名よね。
あとで、騎士をしながらも家督は継げると説得されたけど、『二頭を追うもの一頭もえず、そんな生半可な気持ちでは騎士になれない!』とおっしゃられたとか。
25歳のブルーム様は真面目だから婚約者どころか恋人もいないとか」
とキャサリンも答えながらステーキソースを絡めた牛角をリリアンナの口に入れる。
リリアンナは、キラキラした目をしながらさらにもぐもぐしていた。
「バージニア家の弟君は確か婚約者がいたわよね?」
「婚約者の方とは相思相愛で有名なサマンサ様。今回の病状悪化について、弟君をお慕いしているから私はずっと弟君のそばにいたいと…」
「それって、もうしばらくしたらロマンス小説になって出回るわよ?それで、その弟君の婚約者にブルーム様が禁断の恋でもなされば、もう…!そんなお話、早く舞台になって上映されないかしら?
騎士団長の地位をも捨て、家督を継ぐ決意をしたが、家督を継ぐはずだった弟の美しい婚約者に恋をする…なんて舞台。…」
皆うっとり目を閉じる。
リリアンナは目を閉じて幸せそうにもぐもぐしていた。恋話よりも、今はお肉である。
「こんなに優良物件が立て続けに出てきたのに、釣り合う家柄の娘が少ないなんて…。他国から探すか、あとはすごーく年下の婚約者を作るか…。まぁかなり年上の婚約者を持つ御令嬢は少なくないですからね。」
とまたしても3人はリリアンナを見た。
今は、ローストビーフソースがかかった肉を、キャメロンに入れられて幸福そうにもぐもぐしていた。
「家柄や年齢の釣り合う婚約者のいないご令嬢は結構いますわね。ただ、見た目や財産の有無も含めると…。財産はともかくとして、家柄がよくて見た目が普通以上で婚約者のいない女性が…。」
3人は、はぁ、とため息をついた。
「見た目、家柄、財産、年齢。全て揃っているご令嬢はリリーしかいないわね」
「リリアンナはこんなに可愛らしいのに。なぜ婚約者がいないのかしら。
見た目も愛らしいし、性格も食い意地がはっているところがまた可愛くて、つい餌付けしたくなってしまうのよね。」
と3人はリリアンナを見ながら困り顔をしていた。
「あの幸せそうな顔を見ていると、また見たくなってついつい…」
と言いながら、セレーナはリリアンナの口にお肉を入れる。
今回は生姜醤油につけたお肉を口に入れてあげたため、スパイシーな味に目を見開いて足をバタバタさせて、またもぐもぐしていた。
◇◇◇
その夜魔法省に相談に行っていた父が帰ってきた。
「リリアンナ、多分、高台の光で間違いないそうだ。明日、魔法省の方がリリアンナの様子を見にくるからね。」
「お父様、もしも高台の光だったらどうなるのかしら?わたくし修道院に行くとか嫌です」
リリアンナはぷうとふくれっ面をした。
「かわいいリリアンナ。お前の嫌がる事はしないよ。とりあえず、ゆっくり寝なさい。
リリアンナ、我が家は高台の光を持って生まれる子供のために、全室大理石作りなんだよ?
昔は壁も大理石だったんだけどね、子供部屋の壁が大理石作りなのは冷たい雰囲気だろ?
どの時代からかわからないけど、大理石に壁紙を貼って子供部屋っぽくしてあるんだよ。
家具は閃光で壊れるけど、部屋は壊れないからね?だから、バルコニーで生活しなくてもいいんだよ?」
そう言ってリリアンナの頭を撫でると、おやすみと部屋を出て行った。
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