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サクサクと投稿できたらと思ってますので是非読んでください。
ノックの相手はリリアンナの父であるラテイン公爵であった。
執事のハンスを連れてリリアンナの部屋に入った公爵はリリアンナの姿を見て驚いた。
開けっぱなしの窓の外、バルコニーにマットレスやクッションを引いて、そこに仰向けに寝転がっている。
手は床につけており、その手の甲には重い辞典が乗っていた。
うっかり寝てしまって手を床から離す恐れがあるため、手に重りをつけてくれとリリアンナがハルにお願いしたためである。
「リリアンナ。おはよう」
公爵は娘に優しい声で声をかけた。普段から、公爵はリリアンナには人一倍甘い。
釣り合う家柄や、同じ派閥に歳の合う令息が生まれた家はあったが産まれる前から政略結婚が決まっている家にしか男児が生まれなかった為婚約者にふさわしい相手を見つけてあげられなかった事…。そのため将来は、大きく格下の家に嫁ぐか、平民に嫁ぐか、はたまた独身を貫くか、どれを選んでも辛い未来しか見えないため父は、娘に甘い。
しかし、今日の挨拶はいつもと違っていた。
優しい中に、ちょっと困った様子が見える
「リリアンナ、ゆっくりでいいからその手の様子を見せてくれないか?」
父はそう声をかけた。
リリアンナは手をグーにして、仰向けから体勢を変えると、何故かまた生まれたての子牛のように四つん這いになってプルプルしながら立ち上がった。
そして手を海の方へ向けると、手のひらをゆっくり大きく開いた。
手から閃光がでで遠くまで強い光の矢が伸びていく。
うっかり海鳥がその光に飛び込んで、ローストチキンになってしまった。
そしてまた、リリアンナがグズグスと泣き出した。
「お父様ぁぁ…」
「リリアンナ、お前のその強い手の光は、高台の光と言って、聖書にも出てくる光かもしれないんだ…我が家系は過去に数人同じ力を持って産まれた者がいたそうだ。詳しくはラテイン家の歴史の本を読んでみるとわかるよ」
「この手じゃ本は読めません…」
「そうだね。私は魔法省に行ってどうすればいいか相談してくるよ。」
そう言うと父は部屋を出ていった。
気を紛らわすために話し相手が欲しい。
お母様は今週、叔母様と一緒に温泉旅行。
妹は…王立学園の中等部なので学園内の寄宿舎で生活していて今はいない。しかもまだ12歳と13歳。怖がって近づいてくれないかも…。
上の兄は領地で取れるレモンを特産品にできないかと他の領地の特産品経営についての視察に行っているし、下の兄は王立学園の大学部を終えて友人達と卒業旅行に出ている。
あー、誰も話し相手になってくれる人がいない。
もしよかったら遊びに来てという手紙をハルに代筆してもらい友人達宛に魔法便で送ってもらった。
ランチの時間が過ぎた時、学園の友人であるセレーナ嬢と、キャメロン嬢とキャサリン嬢が遊びにきた。
移動魔法を使うとどんなに離れていても簡単に遊びに来れる。
移動魔法は、魔法使いにお願いしてかけてもらう。
この世界に魔法使いが多いわけではないので、それなりに裕福な貴族や商人は魔法使いと契約して利用している。
移動魔法を使っているのはお金持ちのステータスだ。
「リリー、遊びに来たわよ」
「なんか面白そうなことになったわね」
「お土産を持ってきたわよ」
そう言うと3人はカゴから、何やら食べ物を出した。
マシュマロやリンゴを出すと、おもむろに串に刺して、
「さぁ、リリー!手紙にあった手の光でスイーツパーティーをしましょう」
そう言われてリリアンナはまた手をグーにして、子牛のようにプルプル立ち上がると、海に向かって手を開いた。
また閃光が炸裂する。
そこに3人はマシュマロの刺さった串を我先にと差し入れた。
マシュマロは溶けて蒸発してしまった。
今度はリンゴを串に刺して我先にとリリアンナの閃光に差し入れた。
リンゴが水分の抜けた炭になってしまった。
「火力強すぎですわよリリー!もっと弱めて?」
「できるものならしたいけど…無理だもの」
鼻をグスッと、させてリリアンナが答えた。
「そうよね…。お手紙ではカモメが一瞬で丸焼きになったとか…。それならこれを焼いてくれるかしら?」
そう言いながらキャメロンが、大きな、すでに下処理された豚の姿焼きの準備が施されたまだ生の状態のものが出てきた。バルコニーの際に置いた。
これでみんな安全である。
「我が家自慢の豚よ!」
そうキャメロン伯爵令嬢が言った
ちょっとグズグス鼻を鳴らしながら、リリアンナは豚肉に向けて閃光を出した。
大きな豚は一瞬にして丸焼きになった。
その時、お茶と焼き菓子をカートに乗せてハルと執事のハンスが部屋に入ってきた。
「お嬢様方、本日はリリアンナ様のためにわざわざ遠いところをありがとうございます。
って、ええ????」
バルコニーの際に巨大な豚の丸焼きがあり、リリアンナが鼻をスンスン鳴らしながらマットに寝転んでいる。
他の3人のお嬢様は豚の丸焼きにナイフを入れているところだった。
びっくりして固まっているハルの横で、いつも通りのハンスが口を開いた。
「本日はリリアンナ様のために遠いところをありがとうございます。
本日あいにく旦那様は不在ですが、訪問してこられる皆様にご伝言がございます。
リリアンナ様の状況につきまして詳しい事がわからないため、申し訳ございませんが他言せぬようお願いいたします。」
3人は振り返ると、御令嬢の笑みを浮かべ
「わかりましたわ。わたくし達、親友のリリアンナ様が心配でしたの。もちろん他言はいたしません。ね?皆様?」
とリアーナ嬢が言うと
「もちろんですわ」
と他の2人が答えた。
返事や所作は御令嬢のものだが、手には豚のブロックやナイフを持っていて、なんともアンバランスだった。
「ありがとうございます。それではごゆっくりお過ごしください」
そう言うとハンスは部屋を後にした。
「リリー、遠赤外線で焼いたみたいに中までしっかり火が通ってて美味しそうよ!
パンも持ってきたからパンに挟んで食べてみる?」
「…食べる…でも手が使えないから食べさせてくれる?」
リリーが聞いた
「もちろんよ!友達の危機は協力しなきゃ!
明日は牛を持ってくるわ」
「キャメロンの領地は、ブランド豚やブランド牛で有名だもんね。この豚、キャメロンのところの最高級豚でしょ?」
と、セレーナ公爵令嬢。
「私も食べたい!」
と、グズグス半泣きのリリアンナが言った。
「いつも陽気なリリーがずっと泣いてるのを初めてみたわ。元気を出して?」
みんなでそう言って、一番美味しい部位をサンドにすると、リリアンナに食べさせた。
「あら、リリーはお腹が空いていたみたいね。食後一時間後のデザートを今日は食べてないの?リリーはいつも1日5食じゃない」
サンドイッチを食べながら、みるみるいい笑顔になったリリアンナにキャサリン伯爵令嬢が聞いた。
「食後にハルがハンスに呼ばれていなくなっちゃったの。だから、デザートのツナサンド唐揚げ付きをお願いできなかったの」
「あら、いつもハルにお願いしてるんでしょ?」
「いつもは、自分で用意してたから…」
と、リリアンナはハルの方を見た。
「お嬢様、いつも厨房へおやつをお願いしにいっていたのですか?」
ハルの問いに無言のリリアンナ。
リリアンナは壁の一点を見つめていた。
先程一部分だけ壁紙が焦げていた箇所だ。
…リリアンナの視線が気になったハルは、その壁に近づいた
「ハル!!ダメ。そこは焦げているからお父様に大工をお願いしましょう?」
そんな怪しげな事を言うリリアンナを横目に、ハルは壁に近づいた。
焦げた場所を触ると、壁のレンガがゴロッと落ちて、中から、大量のお菓子と領地内の色々なお店の割引券が出てきた…
割引券は、サンドイッチ屋さんに、唐揚げ屋さん、とんかつ屋さんに、お惣菜屋さん…城の周りにあるほぼ全てのお店だ。
「お嬢様は城からは出ていないはずなのに大量の割引券が…。こっそり町へ行ったのですか?」
「…」
無言のリリアンナ。
また鼻をスンスン鳴らし出したので、キャメロンはこれはまずい、と思って噂話を始めた。
「昨日、私の婚約者アビゲイルとパーティーに参加した際に聞いた噂なんですけど、なんでも第一王子の婚約者のアリーローズ様が駆け落ちしたらしいわ」
「え?誰と?第一王子の婚約者ってつまり未来の王妃よね?そんな方と駆け落ちするなんてどこのバカなのかしら?しかも、アリーローズ様のお家であるギルディライト家はどうされるおつもりかしら?」
「それがね、駆け落ちしたのは…スメイル王女様よ!」
「スメイル王女様は、第一王子の妹様。女性なのにいつも男性の格好をしているあの方よね?てっきり王位を争うおつもりであのような格好を普段からされているのかと思ってたわ!!!」
「昨日の社交界ではその禁断の愛の話でもちきりよ!駆け落ち相手が王族ならギルディライト家にはおとがめなしになるのかしら?」
「そもそもギルディライト家は王妃様のご実家。スメイル王女とアリーローズ様は従姉妹。ご実家であるギィルディライト家に何もできないわよね。陛下は2人を探し出して離宮で生活させるおつもりらしいわよ?王様は常に男装をしている王女様を目尻を下げて可愛がってましたものね。」
「たった1人の女のお子様だから、すごい可愛がりようだったもの」
「第一王子様は…どうされるおつもりなのかしら?大体、年や家柄が釣り合う見目麗しいご令嬢はもう婚約者がいらっしゃいますし…ん?婚約者がまだいない稀なご令嬢が…」
と言って3人はさっきから一言も発言をしないリリアンナの方向を見た
リリアンナはハルに先程丸焼きにした豚のロース肉にソースをかけたものを食べさせてもらっているところだった。
リリアンナは、1日5食は食べないと情緒不安定になるお嬢様だが、華奢な体にミルクティ色の髪、そして綺麗な輝くサファイア色の目をしており、それはもう可愛らしいご令嬢だった。
それなのに婚約者がいないため社交界に出席するにはエスコート役を探すのが大変で、いつも参加しないから、「ラテイン公爵家の妖精」と呼ばれていた。
学園以外ではあまり姿を見かけないからである。
「ラテイン公爵家の妖精と呼ばれているリリーだけど、この姿を人に見られたらどうするおつもりなの?」
とキャサリン嬢が心配そうに聞くと
「猫をかぶるのをやめて…自由に振る舞うの」
と美味しそうに豚を食べながらリリアンナ
微笑んだ。




