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いよいよこれが最終話です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます
ハルが実家に戻る事が決まると、王弟殿下は数日不在にすると出かけてしまった。
後任の侍女はすぐにやってきた。
ハルの従姉妹にあたるスージィが後任になると、挨拶をしてくれた。
スージィはベネドの孫で、王妃様付きの侍女だったが、今からはリリアンナ付きの侍女になる。
スージィは、スメイル王女やアリーローズとも顔見知りで、明日ハルが実家に帰ってしまうため不安そうにしているリリアンナを気遣って、いろんなお菓子を取り寄せてくれた。
次の日クリストファー王子が、
「少し王都に用事がある。数日で戻るから」
と出かけてしまった。
この日から、スメイル王女とアリーローズと3人で過ごしていたが、王都にいる時は任務の後、お茶会をしていたのでいつも通り楽しく過ごしていた。
2人のお陰で、ハルがそばにいない事に寂しさを覚える事もなく、数日が過ぎた。
結局、王弟殿下とクリストファー王子がギィルディライト家に戻ることはなく、10日間が過ぎた。
滞在最終日、ギィルディライト家に魔法便が届いた。
「このまま3人で王城に来なさい、とお母様から届いたよ。」
とスメイル王女が笑顔で言った。
「まぁ!じゃあ!」
とアリーローズは嬉しそうにスメイル王女の手を取る。
「うん!きっと!」
とスメイル王女は、目を輝かせていた。
何のことかはわからないリリアンナだったが、
「お姉様、早く準備をして出発しましょう!」
とスメイル王女に急かされてギィルディライト家を後にした。
お城に着くと、王妃様が嬉しそうに待っていた。
王妃様に挨拶をすると。
「リリアンナ嬢、クリストファーから聞いています。一年後には我が娘になるのですね。楽しみですわ」
と声をかけてくれた。
「お母様、例の件ですか?」
スメイル王女が王妃様に問いかけた。
「ええ。やっと解決しました。
リリアンナも当事者なのでお話をしようと呼びました。では、私のサロンでお話をしましょう」
と人払いのされたサロンに通された。
「この国は、高台の光の庇護で成り立っています。これまで、高台の光が滅されると、だいたい10年以内には次の高台の光が見つかりました。
同時期に2〜3人の高台の光が活動していた時代もありました。
しかし、ここ100年、高台の光が生まれなかったのです。
その100年と言う長い時間の中で、この国を裏切る者が出てきました。もしかしたら大昔から裏切っていたのかもしれません。
敵国と手を結んでこの国の支配を目論む者や、国宝などを売り払おうとする者など。」
王妃様は地図を見せてくれた。
所々色が付いている。
「この×の印は高台の光の力を入れないといけない灯台などがある場所。地図に色がついているところは敵国と通じている所」
「…色が塗ってある地域にブルーム様の実家、バージニア伯爵領もあるわ」
とびっくりするリリアンナ。
「…バージニア伯爵は元々はすごくいい方なのよ。次男のヤンソン殿さえ重い病気にならなければ…。あの病院を治すためには敵国の薬が必要だったのね…
それに気づいたブルーム殿は騎士団を辞めて、実家に戻り父上を説得するつもりだったようだけど…時すでに遅かったのよ。」
「じゃあ、あのお見合いは…」
「宰相であるラテイン公と義弟はバージニア伯爵を見極めるため。クリストファーはヤンソン殿の病状を聞くためにあの場を設けたのよ」
「お父様もわかっていたのね。」
「ごめんなさい。リリアンナ。」
「いえ…宰相としての父が判断したのならいいんです!」
「ああでもしないとバージニア伯爵の事がわからなかったの」
「デボン領ではあなた達を危険に巻き込んでしまったのだけれど、デボン伯爵は敵国とこの国を天秤にかけているところだったの」
「結果として、デボン伯爵は敵国側寄りだったのね。」
と王妃様は一口お茶を飲んだ。
「リリアンナ嬢、灯台はね、国宝と謳っているの。それはあの玉の光が魔物や敵国からこの国を守ってくれるから。その国宝がある灯台をメンテナンスしないと言う事は、つまりこの国への忠誠が低いということ。」
「最近、リリアンナ嬢が色々な所の球体にパワーを込め出したので、この国を守る力が強くなってきたの。
敵国や内通者はそんなことわからないわ。なぜ結界が強くなったかなんて教える義務はない。
でも、強くなっていく結界に焦った敵国は、内通者や寝返った者と手を組んでこの国に攻め入ろうとしていたの」
と言いながらリリアンナの口にチョコレートを入れた。リリアンナが食べ終わらないうちに、5個のチョコレートを入れられた。
王妃様の行動を見て笑顔になるスメイル王女とアリーローズ。
「あなた達がギルディライト家にいる間に義弟やクリストファーが中心となり、敵国の内通者や裏切り者を炙り出し、一網打尽にする作戦が決行されたの。
そして勝ったわ!
国境まで来ていた敵国軍隊は退去したのを確認したの。だから、祝賀会があるのよ。
その前に紹介したい人がいるの」」
そういうと、王妃様は小さな鈴を鳴らした。
コツコツと足音がして、リリアンナの前に1人の令嬢が現れた。
「紹介するわ、クレメンス公爵家のハルベリー嬢よ」
そう紹介されて、カーテシーをしたのは、ハルだった。
いつもきつく結んだ漆黒色の光沢のある髪は下ろしており、眼鏡をかけていたはずなのに今はない。
絹でできた銀色のマーメイドラインのドレスは胸元が大きく開いていて、ハルベリーの大きな胸と細いウエストを強調していた。
その大きな胸を強調する様に胸元に煌びやかなダイヤモンドが輝いていた。
「王妃様…やりすぎです。このドレスはちょっと攻めすぎではございませんか?もうちょっと淑女らしい、布面積の多いドレスがいいです…」
とハルは恥ずかしそうにしている。
「ハルベリー嬢、何を言ってるんですか?
幼さの残る娘では着こなせないそのドレス!
大人の女性として認められる年齢のあなただからこそ着こなせるのです。
堂々となさい」
と言うと、立ち上がり
「さぁ、リリアンナ、アリーローズ、スメイル、の支度を。」
その声で、ドレスや宝石を持った侍女達が大勢出てきて、全員の服を着替えさせる。
スメイル王女様は相変わらず中性的な服装だが、アリーローズ様は濃いピンク色の可愛らしいドレス。
そしてリリアンナは淡いクリーム色のレースのドレスを着せられた後、一旦侍女達は退出した。
スージィだけが残り、スージィとハルベリーが、その上から真っ白なローブを着せてくれて、全身が隠れる真っ黒なレースをかぶせられた。
レースのお陰でリリアンナの顔や髪や目の色、年齢もわからなくなったが、リリアンナの視界が遮られることはなかった。
そして王妃様に連れられホールに入った。
ホールには既に、クリストファー第一王子、アンドリュー王弟殿下、シグマレイ第二王子、そして第二王子の婚約者である友好国のファインロゼ公国のナイアリス王女様、宰相であるラテイン公爵、その他の大臣も式典として控えていた。
ホールにはすでに沢山の貴族や騎士がいた。
そこに皇帝陛下が入ってきた。
そして、爵位や領地を剥奪される者とその理由を皇帝陛下は言い、次に庶民出身の騎士や商人などで今回の作戦で大きな働きをした者に叙爵と、成果によっては領地の分配について発表した。
そして、
「ついに高台の光が見つかった!さあ『高台の光』よ前に」
と陛下に言われ、王妃様に連れられてリリアンナは陛下の前に跪いた。
「この者が高台の光である事をここに宣言する。」
と言われ、レースの上から認定の為の帽子をかぶせられた。
そしてその後、一旦王妃様と退出するとスージィが来た。
王妃様はスージィに
「お願いね」
と言うとホールに戻っていった。
スージィは帽子と黒いレースの覆いと白いローブを脱がせてくれ、髪型を再度整えるとすぐに別の入り口からそっとリリアンナをホールへ誘導してくれた。
リリアンナがホールに入ってきた事を気づいた者はいなかった。
ホールでは皆談笑していた。
一旦宣言が終わったようだ。
バージニア家はブルーム様の忠誠心が認められ、領地剥奪は免れたが、爵位は准子爵に落ちた。
しかし、同じことが起きないように王弟殿下が陰で支援する事に決まったらしい。
ブルーム様は、忠誠心を示すために、今以上に国に尽くすことになるようだ。
父上の敵国への内通のせいで当面は結婚も難しいから、騎士団で成果を上げるしかないようだ。
と誰かが話しているのが聞こえた。
「リリアンナ嬢、さっき王妃様がチョコレートをすすめてくれたので、今回の陛下のお話はちゃんと聞いていられましたか?」
とハルベリー嬢が笑顔で聞いた。
「すすめてくれたのではなくて、お腹に入れてもらったのです。そのおかげで助かりました。あの5個のチョコレートがないと全く話を聞けなかったわ」
とハルベリー嬢と談笑していたら、ハルベリー嬢とリリアンナは王妃様に呼ばれた。
呼ばれた先にいたのはクリストファーとアンドリューで、この後、クリストファー第一王子とリリアンナの婚約、アンドリュー王弟殿下とハルベリーの婚約か発表された。
発表を見ていたキャメロン、キャサリン、セレーナはハルを見て驚いていた、、
3人とも目を見開いていたが、さすがご令嬢。すぐに元の顔に戻った。
ハルの大きな胸と細いウエスト、そしてセクシーなヒップはそこにいる男性陣を魅了した。
ハルがリリアンナといつも一緒にいる侍女だと気づく人は、キャメロン、キャサリン、セレーナの他にはいなかった。
「クレメンス家はほとんど社交界には顔を出さないから、あんなに美人な娘がいるとは知らなかったよ」
「クレメンス家は辺境公爵家だもんな。海外との貿易が盛んな上に、兵士は屈強。日々忙しくて社交界に出てくるのは数年に一度。
あんなに美人で溢れんばかりの胸を持つ娘がいるなら交流を持てばよかったよ」
「あのハルベリー嬢、なんでも今回の討伐では騎士団の一人として王弟軍で女騎士として戦っていたとか。」
「王弟軍の騎士達が皆、尊敬の眼差しでハルベリー嬢を見ているのはそういうことか」
と口々に噂している。
「ハルベリー様、戦地に行ってたんですか…?この一週間?」
と笑顔で、でもすごく怒っているリリアンナが聞いた。
「大事な方々と先週お別れをしたんです。その方達に危険が及ばないようにしたくて。なんでも、私の大事な3人のお嬢様が人質として狙われていたらしいのです。だから、敵が手を出せない所にいて頂いたんですが、それでも不安だったので。」
とニッコリ微笑むハル。
ハルの返事を聞いて拗ねるリリアンナを見たクリストファーは困った顔をしながら、チョコレートケーキを持って近づいてきた。
「機嫌直してよ?リリアンナ」
とクリストファーはケーキを差し出す。
「もう、クリス様に言われては仕方ありません」
と笑顔になるリリアンナ。
それから1年間の婚約期間はあっという間に過ぎ、リリアンナとクリストファーの結婚式になった。
ハルとアンドリューは、外交官として色々な国を回っていたが、この日のために駆けつけてくれた。
更にそれから半年後、ハルとアンドリューも結婚式をあげた。本当はクリストファー達との合同結婚式の予定だったが、中立国だったグラインド国との安全保障条約の締結を結ぶ交渉のために、結婚式が半年後遅れてしまった。
ファインロゼ国のナイアリス王女と婚約していた第二王子は、さっさとファインロゼ公国の王室に入った。
ファインロゼ公国は豊富な資源と第二王子の手腕で大きな発展を遂げる事になる。
先に子供を授かったのはリリアンナだった。多産系のため、次々と子供が生まれた。
その中の1人の女の子が高台の光の素質がある事がわかったが、現在は魔法のネックレスは一つしかなく、紛失したネックレスを探す旅にハルの娘と、リリアンナの息子が旅に出た。
その間、リリアンナがあのミトンをつけることになり、リリアンナの娘がネックレスをして過ごしている…それはまた別のお話。
皆が穏やかに過ごしていたそんなある日、スメイル王女とアリーローズから話があるから聞いてほしいと手紙が届いた。
手紙には、一週間後にリリアンナとクリストファー、ハルベリーとアンドリューに話を聞いてほしいから王城の離宮のサロンで会いたいと書いてあった。
指定のあった日時に離宮のサロンに行くと、女性の格好をしたスメイル王女とアリーローズが居た。
「わざわざ呼び出してすいませんでした。
ここまで来ればもう大丈夫。」
そうアリーローズが言い、2人は顔を見合わせた。
「実は、私達は俗に言う死に戻りなのです。」
と2人は言い出した。
「私とアリーローズが居た初めの世界の…1回目に死ぬまでの世界の話をします。
この国は敵国との内通者の手引きで攻め入られ負けてしまい、私は婚約者だったブルーム様と別れさせられました。
そして敵国の王族と無理やり結婚させられ、その後無実の罪に問われ処刑されました。」
とスメイル王女。
アリーローズは
「私はクリストファー様と結婚するけど、クリストファー様はリリアンナ姉様を愛してしまっていてね…そうこうしているうちに他国に2度目の侵略にあい、その際に刺殺されました。
一度目の侵略でリリアンナ姉様は兵器として他国に捕まり戦場で奴隷のような生活。
ハルは、リリアンナ姉様を庇って一度目の侵略で戦死。
そして、叔父様は、1回目の侵略の前に他国に捕まり投獄。
ブルーム様は父親に間違った事を吹き込まれて、他国の内通者として名を挙げ…ブルーム様が王様になって、そこに私はまた嫁がされるの。
ブルーム様はお飾りの王になり…その後他国にいいように暴利を貪られる…」
と2人は泣きながら話した。
「私達が死に戻りだと知ったのは5歳の頃。
私とクリストファー様の婚約はすでに済まされていてね。
どうやって未来を変えればいいか途方に暮れていたら、『ブルーム様を信用できない!婚約はしたくない!』と言っているスメイル王女に出会ったの。
それとなく色々聞いてみたら…お互いに、死に戻りだと確信したの」
とアリーローズ。
「なんとかして未来を変えるために、男の子の格好をして後継者争いに名乗りをあげてみたの。そしたらブルーム様との婚約がなくなったわ」
とスメイル。
「私は前回はあんなに頑張ったお妃教育や勉強を放棄したの。でも婚約者を辞退したいといっても、それだけはどうしても、どんなにわがままを言っても聞いてもらえなかった。
スメイル王女が男として生きると言うから、私と結婚して欲しいとお願いする事にしたの」
とアリーローズ。
「私達が、女同士なのに結婚したいと言ったことは、アリーローズとの駆け落ちでなんとかなったの。
そして、色々とお兄様達に後回しにヒントを渡したの」
「じゃあ、ブルーム殿の弟のヤンソンの体調についての噂は…」
とクリストファー。
「私が流したわ」
とアリーローズ
「旅人を使って、デボン領に行くように仕向けたのは私」
とスメイル。
「1度目は敵国の侵略をなんとか阻止できた。
私たちの記憶では、2度目の侵略が2週間前のはずだったの。
そして侵略で城が焼き討ちにされるのが先週…。
だから、その日何も起きなかった事を確認してから手紙を出したの」
とアリーローズ。
「今日本当は私が処刑されるはずだった日。
私は今幸せに生きているの!」
とスメイル。
「にわかには信じられないが…。
私は、2人の小さい頃からの行動や、なにかを企んでいる様子をずっと見てきた。
スメイルは確かに子供にしては大人のような知識を持ち、初めて会う大人に対して、自己紹介されていないのに名前を呼んだりしていた。
それからブルームを見ると飛び上がって逃げていくアリーローズに対しておかしいと思っていたんだ。」
とクリストファー。
「言われてみると確かに…。
スメイルは小さい頃から不思議な子供だったんだ。
スメイルが毛嫌いする侍従は、だいたい不正を働いたり、他国のスパイだったりしたから、予知能力がある子供として表には出さなかったんだ。
周りには『まだ子供だし夢みがちだ』とスメイルの事を隠していたんだよ」
とアンドリュー。
「私は一度目の世界でスパイを見てきたから、誰がスパイなのか知っていたの…」
とスメイル。
「私が処刑されてしまってここからの未来の事は知らない。…死んでしまった後の事は知ることができないわ…。
ここからが本当の意味での未来。これからもみんなで力を合わせて頑張っていきたいと思ってるの。」
その後
スメイルとアリーローズはそのままずっとパートナーとして過ごした。友情に勝る信頼はなかったようだ。
リリアンナの食い意地とアンドリュー夫妻の外交手腕のおかげで、美食の国としていろいろな国との交易がますます盛んになった。
特に、チョコレートが特産品として有名になり、いつのまにか王都はチョコレートの都と呼ばれるようになった。
彼らが亡くなると、クリストファー王は歴代最高の王として讃えられ、その片腕であった叔父のアンドリューは外交官としての半生が伝記になるほどだった。
彼らの子供や孫は仲睦まじく国を納め、発展させていったようだ。
おわり
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