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街屋敷に戻ってからも高台の光としての任務は継続中である。


今はクリストファーとアンドリューが週交代で案内役をしてくれている。

そして任務の後は、お城に泊まり、次の日はスメイル王女と、アリーローズ嬢とお茶会をするのが定番になった。


この頃になると、リリアンナはスメイル女王とアリーローズのお気に入りとして皆に認識されるようになってきた。

初めは、クリストファーかアンドリューのどちらかの婚約者に内定したのではないかと皆疑ったが、一定の時間が経つとそれは違うな、と皆思ったようだ。


そして遠出の任務の際はブルームが迎えにきてくれるようになった。

初めは戸惑ったが遠出の場合は、ハルが必ず一緒なので気まずいことはない。


アンドリューもクリストファーも任務の時は必ずお菓子やランチBOXを準備してくれる。


クリストファーからは、学園内でも普通に話しかけられるようになり、いい友人となりつつあった。


そんなある日、

「アリーローズの生家であるギィルディライト家の領地にある灯台の任務なんだけど、どうだろうか、アリーローズとスメイルと一緒に、皆で旅行がてら行ってみない?」

とお誘いを受けた。

「アリーローズ様とスメイル王女様が一緒なら、楽しそうだし行きたいです!」

そう返事をすると、ギィルディライト公爵家から正式な招待状が届いた。

ハルは侍女として今回もついてきてくれることになった。


ラテイン家の馬車で行こうと思ったら、王家の馬車でお迎えに来てくれることになった。


当日、お迎えに来たのは、ベネドが馭者を務める馬車で、護衛として10人以上の騎士団がいた。

先頭は騎士団長のブルーム様だった。


馬車に乗り込むと、アンドリュー王弟殿下と、クリストファー王子が乗っており、後続の馬車にはスメイル王女と、アリーローズ様が乗っており、二台の馬車で出かけた。


アンドリューとクリストファーは相変わらず珍しいお菓子を準備してくれ馬車の旅も楽しいものだった。


ギィルディライト公爵家の領地に着くと、早速、アリーローズ様がスメイル王女様とリリアンナを連れて、庭を案内してくれた。

あまりにもはしゃぎすぎたアリーローズ様は、侍女が「待ってください」と言うのも聞かず、ズンズン進んでしまった。

お供をつけずに庭の散策になってしまったが、ここは公爵家の庭。

心配な事はない。


ラテイン公爵家の街屋敷はバラ屋敷と呼ばれているが、ギィルディライト公爵家の屋敷は広大な庭がバラ園になっておりそれはそれは見事な庭園である。

その広大な庭に池があり、池のほとりには東屋があった。


「リリアンナ様、ここで少しお待ちになって。今、侍従にお茶の準備をさせます」

とアリーローズ様が行こうとするとスメイル王女が

「アリーが行くなら私も行く」

とアリーローズ様を愛でながら侍女を呼びに行ってしまった。


ギィルディライト家のバラは品種が豊富で色とりどりのバラが咲いていた。

ラテイン家のバラなんて、ここのバラを見ちゃうと大したことはないわ、と思っていると、ベネドがやってきてローズティーを入れてくれた。

どうも、アリーローズ様と入れ違いになったようで、ベネドは、

「リリアンナ様は先にお茶を召し上がってください。お嬢様方を今探しに行ってきます」

と行ってしまった。


しばらくバラを眺めていたら、後ろに気配を感じた。

振り返るとクリストファーだった。


「クリス様、どうされたんですか?もしや迷子?」

とリリアンナは聞くと


「そうだね。迷子かな?今まで迷子だったんだよ」

と答えた。そしてリリアンナの横に座った。


「リリー?

リリーはここから先、どうしたいと思っている?

これから先もずっとずっと秘密裏に任務を続けることになるよ?

高台の光である事は誰にも言えないわけだしさ」


「そうですね…

私、あまり秘密を持ち続けるのは得意ではないんです。

もしも結婚しても夫になる人に秘密にしておく事はできないので…一生独身ですね。

幸いにも私には婚約者がいません。

お父様やお母様は心配するかもしれませんが…私は今が幸せです」

そう答えて笑みを見せた。


「リリー。もしも、もしも結婚するとしたらどんな人がいいの?」


「そうですね…お父様は宰相と領主をして忙しそうなので、子供の頃、寂しい時もありました。

だから普通にお仕事をして普通の人…。何にもする事がない人はダメですけど、本当に普通の人…かな…」


「リリー。仕事がある…のは…いい事だと思うよ。

領主か職業かどちらか一つの職業だけの貴族の方が多いよ。

ラテイン公は二つの道を同時に進んでいる感じだから忙しいんだろうね。」


「そっか…

お父様は二つのお仕事があるから忙しいんだ…

ならどちらか一方のお仕事をしている人なら…いいのかもしれないわ」


「ねぇ、リリー。

僕の職業に何か知ってる?」


「…職業?」


「んーー?国民に美男である事を見せつける事?」


「さすがリリー。…違うよ。

僕はやがてこの国を治める事になる。それが僕の仕事。リリー、僕と一緒に同じ仕事をしてみない?」


「それは就職のお誘い?」


「僕の言い方が悪かった…。

リリー。

リリアンナ嬢、僕と結婚してくれませんか?」


そう言うと、クリストファーは跪いてお菓子の箱を開けた。

中には色とりどりの飴やチョコレート、クッキーが入っており、箱の中心には大きなダイヤモンドの指輪があった。


リリアンナは一瞬戸惑った。


「リリー。国の統治という単なる仕事をするだけだよ?僕の横にはいつもリリーがいて欲しいんだ。

僕は今まで自分がどうしたいか…国を統治するのは叔父上がいいのではと考えていたんだ。

でも、高台の光の案内人をするうちに、もっとこの国を理解したいと思ったんだ。

だから、父の、陛下の跡取りとしてもっと勉強する事にしたんだ。

でも、それはリリーがいてくれないと意味がないんだ。常にリリーがいてくれないと…」


「はい…。私で良ければ…。」

リリアンナは恥ずかしそうに返事をした。


そんなリリアンナを見てクリストファーは、箱からチョコレートを取り出すと、リリアンナの口に入れた。

甘いチョコレート以上に、クリストファーから向けられる笑顔がとろけそうに甘かった。


リリアンナに指輪をはめると、クリストファーは立ち上がり、リリアンナを強く抱きしめた。


「ありがとうリリー。」

そう言うと、リリアンナの頬に優しくキスをしてからリリアンナの手を繋いだ。


「行こう、リリー?」

そう言うと、繋いだ手をぎゅっと握り、東屋から出ると広い敷地を迷わずに薔薇の温室まで向かった。


途中、アリーローズとスメイル王女が薔薇の花びらだけを摘んでいるところに出会した。

「兄様、うまく行った?」

とスメイル王女

「ああ、ありがとう!」

とクリストファーが答えると、スメイル王女とアリーローズは顔を見合わせて大はしゃぎ

「東屋に呼び出した私の作戦成功!」

「やったー!これでリリアンナ様がお姉様になる!」

2人は今摘んだ花弁をシャワーのようにして2人にかけてくれた。

「おめでとう!」

そんな2人の横を照れながら温室へと向かった。


温室にはアンドリュー王弟殿下がいた。

「叔父上、とうとうリリーから返事をもらいました」

とクリストファーはアンドリューに報告した。


「おめでとうクリストファー!

リリアンナ嬢、うちの甥っ子をよろしく頼む。

今度は私から、2人に報告だ。

私は今、プロポーズの返事をもらったところだ」


「??誰から???どうやって???」


「これだよ」

とあの鳥型の魔法便を手に持っていた。


「あの狼が出た恐ろしい思いをしたときに使っていた魔法便…」

とリリアンナは呟いた。


「叔父上、今度、その素敵な女性を紹介してください」


「わかった。紹介しないといけないとは思うが…」

とここで話を遮るように扉のノック音がして、ハルが入ってきた。


「ハル!聞いて?私、クリストファーと婚約したの」


とリリアンナはハルに抱きついた。

ハルは嬉しそうにリリアンナを抱きしめた。


「リリアンナ様、おめでとうございます!

リリアンナ様の嫁ぎ先が見つかったのはこの上ない喜ばしい事です。

…このタイミングで申し訳ないのですが…

私からお伝えしなければならないことがございます。

私は、リリアンナ様に仕えて嫁ぎ先でも侍女をするつもりでしたが…

できなくなってしまいました。

一旦、生家に戻らなくてはいけなくなりました。」


とリリアンナを抱きしめた腕を離し、リリアンナの目を見た。


「なぜ?今なの?」

リリアンナは困惑した。


「私、婚約したんです。…アンドリュー様と…」


と嬉しそうに、あの鳥の形の魔法便を見せてくれた。

魔法便の上にはハルの瞳の色と同じブルートパーズの指輪が乗っていた。


「ええええ?そうなの!!!

いつのまに…。」

とリリアンナとクリストファーは驚いた。


「あの狼の事があった後、私が城を出るまで毎日お見舞いに来てくれました。

そして、私が狼の毒で暴れないように、夜は私の傍にずっといてくださったのです。

そこからゆっくり気持ちを頂くようになり…

今日、とうとう、あの思い出の鳥型の魔法便でプロポーズを頂いたのです」


「おめでとうハル!」


「私は23歳。令嬢としては行き遅れですが…。」

とリリアンナに向かって話し続けるハル。


「一度、生家であるクレメンス家に戻り、クレメンス家の長女としてアンドリュー様に嫁ぐことになりますので…どうしてもリリアンナ様にはお仕えできないのです。

申し訳ありません」


「クレメンス公爵家のお嬢様だったのハル???知らなかった…。じゃあ、ハンスもベネドも…。」


「はい。皆クレメンス公爵家のものです。

クレメンス家は決まりがあるのです。

それは高台の光の番人として、王家や代々高台の光を排出している家柄のお家に使用人として支え、高台の光を持つ方が生まれるのを待ちます。

使用人として仕えるために、一度、公爵家から籍を抜きます。

過去に高台の光が生まれている家は、公爵家だけでなく伯爵家もあります。公爵家の令嬢が伯爵家の侍女はできませんので…

クレメンス家では、大半の者が生涯を高台の光を探す事に捧げるので、結婚しない者が多いのです。」


「何か…理由があるの?」


「そう…神様から役割を授かったとしか聞いておりません。

高台の光を悪用すると世界が滅びます。

高台の光の力は凄まじいものがあります。

その力を使って、リリアンナ様お1人で王都を攻め落とす事もできるのですよ。

だから番人が必要なのです。

高台の光は、性別関係なく生まれます。高台の光が滅したからといって、次の代の方が生まれるとは限りません。

でも、必ず…

必ず高台の光は王家の方と結婚するのです。理由はわかりません。」

そうハルは言い、微笑んだ


「リリアンナ様は食い意地が張っているけれど、聡明で真っ直ぐな素敵なお嬢様になってくれて、ハルは嬉しいです。

そんなリリアンナ様にお仕えできて幸せでした。

そして、クリストファー殿下。殿下は素敵な方です。この方にお任せすればリリアンナ様は生涯幸せに暮らせるでしょう。

本当に喜ばしい事です。」

そう言うと、ハルはリリアンナをまっすぐ見た。


「今日で、リリアンナ様の侍女『ハル』はお別れです。次お会いする時は、クレメンス家長女ハルベリーとなっております。その時は、是非仲良くしてくださいね」

そう言うと、ハルは淑女のお辞儀をして、部屋から出て行った。











いよいよ最終回の予定です。

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