12
リリアンナは案内人であるクリストファーと一緒に灯台の球体のところに戻ると再び任務にあたった。
高台の光を込めて一時間後、
「これで完了だ。リリー、ハルが心配なのによく頑張ったね。」
と言われ、アンドリューと合流した。
「クリストファー、お前は大丈夫か?案内役も力を使う、帰りはリリアンナを乗せて帰るだけの気力は残ってないだろ?」
「叔父上、たしかに思ったよりも疲れた。帰り道、また襲われたらこの体力ではリリアンナと共に逃げるのすら難しい…。」
とアンドリューとクリストファーの会話で、案内役も自分が知らない間に何かをしている事がわかった。
ちょうどその時、ブルーム達が戻ってきた。
「王弟殿下、先ほどの切り捨てた狼の所に行き、再度、盗賊がいるか捜索しましたが、おりませんでした。そのため、先ほど、移転魔法でこちらにきた5人の騎士に、捕らえた盗賊と、狼を持って帰らせる事にして先に出発させました。
狼は今回合流した空間魔法の使える騎士に全て運ばせて、研究と毛皮の再利用をする事になる様です。
盗賊は裁判にかけられますが…いかがいたしましょうか?」
「わかった。今から森を抜けると、なんとか火が沈む前に荷馬車まで辿り着けそうだな?
急いで出発する」
アンドリューはそう返事をすると
「さあ、急いで帰ろう。テインは私の馬に乗るように」
と指示してから再度、二階の点検に行き、その後、灯台の鍵をかけた。
リリアンナはアンドリューの馬に乗った。アンドリューは各国を外交官として外遊した時の話を面白おかしくしてくれて、リリアンナをリラックスさせてくれた。
日が落ちる直前に荷馬車まで着いた。
そしてリリアンナは荷馬車に乗り込むと、元気のないリリアンナにベネドが
「ハルは大丈夫ですよ。そうそう、ハルからこれを預かりました。」
とリリアンナに袋を渡し、すぐに荷馬車は動き出した。
「ここに来るときはハルと一緒で楽しかったのにな…」
ハルの座っていた場所を眺めながら、袋の中を覗くと、リリアンナが子供の頃から大好物だったラテイン家料理人手作りのクッキーが入っていた。
「ハルと食べよう」
そう決めて袋を閉じた。
外を見ると月が見えた。
王都までは田舎道を進み、それから王都が見えるはずだが、まだ出発したばかり。数時間はかかりそう。
目を開けると、何故かベッドの天蓋が見えた。
自分の服を見ると見たことないナイトウェアを着ている。
ここはどこ?
私はだれ?
私はリリアンナ。
いやいやいや。そんな事じゃなくて、昨日は…
と考えようとすると部屋をノックする音がして、侍女が入ってきた。
侍女の服を見て、ハッとした。王妃様付きの侍女の服を着ていた。
「おはようございます。リリアンナ様。さあお着替えを手伝います」
と、言われるがままに服を着せられ、髪を結われ、部屋から連れ出された。
侍女に案内され、王妃様の元に通された。
リリアンナは淑女の挨拶をすると、王妃様は
「おはよう、リリアンナ嬢。昨日は危険な目に遭わせてしまいました。ハルとは後で面会ができるそうよ。それまでは私の相手をして頂戴?」
と言い、促されるまま席に着いた。
すると、そこにスメイル第三王女と、クリストファーの元婚約者で今はスメイル王女のパートナーのアリーローズが入ってきた。
先日の夜会でも見たけど、スメイル王女は、中性的な顔立ちに短く切った髪、そして男性王族の服装を着ており本当に美しい。
男性的なワイルドさがなく繊細な雰囲気は、クリストファーやアンドリューの纏っている雰囲気とは全く違い、お人形の様に美しい。
そして一緒に入ってきたアリーローズは美少女とはあなたの為にある言葉ですと言いたいくらいの美少女。
綺麗なストレートのプラチナブロンドにアメジストの様な瞳で、何故クリストファーが好きではなかったと言うのか不思議でならない容姿をしている。
王族は美形しかいない。
美形に囲まれた朝食は、緊張して喉を通らない…事はなく、普段の2倍食べてしまった。
高台の光の認定式の後の王妃様との2人っきりのお茶会は緊張してしまったが今回は平気だった。
美形を眺めながらのご飯は、観劇を見ながらのディナーの様で食欲が増してしまったリリアンナだった。
朝食の後のお茶の時間、スメイル王女とアリーローズと初めて話をした。
子供の頃から読んでいた冒険小説は3人とも好きな事や、ドランバリュのチョコレートの話や、リリアンナが大学で専攻している外交の勉強の話など、話題は尽きなかった。
そこへ王妃様がやってきて、
「2人ともリリアンナ嬢とお話ししたい気持ちはわかるけど、ここからリリアンナ嬢はお見舞いに行かないといけないから、後でお話の続きをして頂戴」
と言うと、第三王女とアリーローズは、また必ず戻ってきてね、と送り出してくれた。
「2人とも子供みたいでしょ?見た目はあの通りしっかりして見えるのにね。中身はまだまだなのよ」
と笑っていた。
王妃様に着いていくと、そこにはクリストファーがいた
「リリアンナ、おはよう。昨日、王都に着いてからのこと覚えてる?」
と聞かれ、リリアンナは首を振った。
「覚えてないか…ふふふ」
笑いながらクリストファーは
「昨日の夜、城について陛下と王妃、事情を知る侍従や侍女が外まで迎えに来たんだよ。リリーはね、半分寝ながら歩いて、半分寝てるのに事実確認の話をしている僕たちの会話に返事するんだよ…」
「ぼぼ、帽子をかぶっていたから寝顔は見られてませんよね?」
とリリアンナが聞くと
「陛下の前で帽子のままは無しだよね?それよりも陛下と王妃の前で寝ちゃダメだよ?そしてそんなリリーは可愛かったよ」
「笑顔で目を瞑っていて、ちゃんと立っているんだ。話しかけられると微笑むけれど、やっぱり寝ているんだ。陛下も、ハルの大怪我や高台の光の任務で疲れているのに立っていられるのが不思議だって言ってたから」
王妃様を見ると
「同席したリリアンナ嬢の正体を知らない3人の騎士も侍従の格好をした可愛い女の子の素顔を見て、多分好きになったと思うわ。
話の後は私とディナーをしたけどリリアンナ嬢の寝ながらご飯を食べる様は可愛かったし、その食べている寝顔は給事していた侍女を虜にしたわ。
それから寝ながらちゃんと湯浴みもしたと報告を受けているわ」
そう言われて恥ずかしいリリアンナ
「ブルームだけはリリアンナの正体に気づいてたけど…そろそろ面会ができる時間だ」
と不機嫌そうに言った
そしてクリストファーに連れられて行ったところには、ハルがベッドを起こして座っていた。
「ハル!」
リリアンナはハルに抱きついた。
「お嬢様、クッキーは召し上がっていただきましたか?」
「一言目がそれ?」
「お嬢様はお腹が空くと元気がなくなりますから」
「あれはハルと食べる為に取ってあるの。後で一緒に食べましょう?」
「リリアンナ様がまさかお菓子を食べずに取っておけるなんで!!!成長しましたね。
ところで、まさか昨日は王族の皆様の前で寝ながら過ごしたなんてないですわよね?いい年したお嬢様ですもの。絶対していませんわよね?もしもしていたら不敬罪で断罪されますよ?」
目が泳ぐリリアンナ
それを見て笑うクリストファー。
「そのベッド脇のお花綺麗」
と話題をかえると
「昨日のよる、王弟殿下がお見舞いに来てくれたのです。もしも私が毒で暴れたら…斬り捨ててくださいとお願いしてあったので…
私はハンスの孫。リリアンナ様をお守りする為にいるのです。できない場合は、私の妹か従姉妹がリリアンナ様の侍女になる予定なのです」
「それは嫌。私はハルじゃないとダメなの。だから、ハル、早く良くなってね」
とリリアンナはハルの手を握った。
それから一週間、ハルは経過観察のため王城の医務室にいた。
ハルの側には、いつもハルの経過観察のためにデュラムがいた。
デュラムはリリアンナを灯台の中で見た侍従の格好をしたテインだとはわかっていない。
「灯台でハルを助けていただきありがとうございました。あの時、あなた様が来てくれなかったら今頃どうなっていたか」
とリリアンナが話しかけ、クリストファーがデュラムに対して、あの時にいたもう1人の侍従だと言っても理解していない様だった。
リリアンナは毎日午前中の一時間ハルの側にいることにしていた。
午後はスメイル女王とアリーローズ嬢とお茶をしたり、王妃様の話し相手になったりと忙しかった。
ハルの元にはリリアンナ以外の誰かがお見舞いに来ている様で花が増えて行った。
一週間経ち、ハルは帰る許可が出た。
そこで殿下に呼ばれた。
「リリアンナ嬢、ハル、この度は大儀であった。お前達を襲った盗賊だが、高台の光を狙ったわけではなかった。
デボン伯爵が北の森の視察をした時に、いい加減に視察をしたのだ。まさか王族が来るとは思っていなかったのであろう。
その視察で金持ちが別荘でも建てると噂が広まったようだ。そしてそれを狙った盗賊が出たというわけだ」
100年ぶりに高台の光が見つかったことはまだ公にはなっていない。
それは高台の光のあの閃光が危険すぎるからだと、初めて説明を受けた。
高台の光としての、光を充填する作業が終わってから「100年ぶりに高台の光が見つかった事」と、全身をレースのベールで覆い、顔も髪の色も肌の色も年齢さえもわからなくして、陛下からの認定式を公式に行う予定だと聞かされた。
なので発表は一年後。
今行っている一週間に一度の任務はあと一年ある事を聞いた。
その後でハルと共に王都にあるラテイン家の町屋敷に戻った。
ラテイン家の者は、両親や兄妹、皆、王城にいたのはスメイル女王とアリーローズ嬢の話し相手をしていたからだと思っている。
「ねぇ、アリーローズ様ってやっぱり綺麗なの?」
「スメイル王女はかっこいい?」
妹達は色々聞いてきた。




