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木々の隙間から灯台が見える。

目的地まではあと一息だ。ずっと緩い登り坂が続いている。


馬を進めると、少しだけ開けた所にでた。


先頭のブルームが、何かに気付いて歩みを止める。

そして剣を抜いた。


向いから人が歩いてきたように見えたが、近づいてきその生き物は、大きな狼だった。

歩いてくる様は人の背丈ほどある大きな狼は、歯を見せて唸った。

それが合図のように、森の中から大きな狼が出てきた。


前にも後ろにも狼がおり、囲まれてしまった。


大きな狼の群れが一斉に襲いかかってくる。


全員が剣を抜いて狼を切り捨てる。


皆は馬を巧みに操り、遅いかる狼の牙や鋭い爪が馬を傷つけないようにしながら、切り捨てていた。


50匹ほどいた狼が、あと数頭になった。


と、ここでやみくもに襲いかかってきた2匹の狼が、示し合わせたかのようにクリストファーの馬に襲いかかってきた。


「危ない!」

ハルの声が聞こえてリリアンナに襲いかかろうとした狼の背中に何本もの短剣が刺さった。

ハルが10本もの短剣を素早く投げたのだ。

その声で、馬はひらりと向きを変え、

クリストファーは自分に襲いかる狼を切り捨て、それとほぼ同時にリリアンナを襲おうとしていた狼を切り捨てた。

短剣を投げたハルの動きに反応して、三匹の狼が王弟殿下に向かって襲いかかってきた。


クリストファーは狼を切り捨てたと思ったらすぐに、2匹が挟み撃ちの状態で襲ってきた。

馬を巧みに操りながら、二匹を切り捨てた。


周りを見ると、

大きな狼のせいで王弟陛下の馬が見えなくなっていた。

2匹、3匹と切り捨てられ、狼に遮られていた視界が開けた後に見えたのは、様子のおかしいハルだった。


最後に切り捨てられた狼がハルの腕を噛んでいたようで、ハルは腕を押さえて痛みで顔が歪んでいた。

そんなハルを馬から落ちないように王弟陛下が支える。


ハルの様子を見ると直ぐにでも手当てをした方が良いがここではまた野生動物に襲われるかもしれない。、


襲ってきた狼を全て切り捨てたとはいえ、いつ野生動物が襲ってくるかわからない状況のためすぐにでもここを離れた方が良い。


と、ブルームが片手を上げた。そして勢いよく馬を飛び降りると、剣を抜いて森の中に突き進んだ。


ガサガサとした草を踏み鳴らす数人分の足音がして、争う声がした後、騎士は頭に袋を被せたを2人の盗賊を捕らえて戻ってきた。


袋からは唸り声がするが、声が出せないように猿ぐつわをされた上で袋を被せられたようだ。


「殿下、此奴らが狼をけしかけ操っていたようです」


「わかった。そいつらの顔の布は取るな。2人をキツく縛り、最後尾を歩く騎士の馬にくくりつけて引きずって行け。」


「恐れながら、こちらで対処した方が早いのでは?」

と騎士。


「…私刑をするより公開処刑の方が、こういった輩の抑止力になる。面倒でも連れて行け」


「御意」


アンドリュー王弟殿下は、腰に下げた小さな袋から大判のハンカチを取り出すと、止血のためハルの腕を縛った。


「あの狼の牙には毒がある。毒が回らないように腕をキツく縛った。痛いとは思うが我慢してくれ。

もう少しだから…」


ハルに優しく話しかけながら、アンドリューは懐から鳥の形をした紙を2枚取り出した。

一枚はベネドに向けて、ハルが狼に噛まれて大きな負傷がある事。

二枚目は王宮に向けて、ハルが狼に噛まれて大怪我をしたので至急手当てが必要な事と、盗賊を捕らえた事を記入し、半分に折ると、高く空へ放り投げた。

と、鳥型の紙が鳥になり飛んで行った。


「すまんが侍従の怪我がひどい。本当なら用心しながら進まねばならぬが灯台まではもうすぐだ。先にいかせてもらう」

そう王弟殿下は言うと1人、騎士達を追い越し、急いで馬を走らせた。


その頃、ブルームは盗賊の荷物を藪の中から持ってきていた。小さな荷車には少ない荷物が乗っていた。

盗賊の身元が分かるものがないか荷物を探すが手掛かりはない。

2人の盗賊の顔にかけられた袋が取れないように固定し、逃げられないように手足を縄で縛ったのち、2人の盗賊を彼らの荷車に固定し、最後尾の馬の鞍に結びつけた。


「叔父上がまた襲われては困る!追いかけろ!」

と第一王子が言うと、ヘティ騎士が


「わかりました!」

と答え、王弟陛下の馬を追いかけた。


第一王子はそれを見送ると、盗賊の仲間が奪還しに来るかもしれないため用心して進んだ。


それから15分ほどで森を抜けると見晴らしのいい所に出たが傾斜が強い下りになり、そこに灯台があった。


屋根が少ししか見えなかったため、まだかかるかと思ったがすぐ着いてよかったと皆安堵した。


ここまで、盗賊の残党を見逃すまいと皆、息を殺して進んできたが、何事もなかった。


灯台の入り口に着くと、すでに王弟殿下とヘティの馬があり、扉の前にはヘティが立っていた。

扉は開放されており、中にはヘティの上着を床に敷き、王弟殿下の上着を着せられ王弟殿下に抱きかかえられるようにして座っているハルの姿があった。


「ハル!」

リリアンナはハルの元に走って行った。


「動かしてはいけない。あの狼の牙には毒がある。毒が回らぬように安静に、傷は心臓より低い位置になるようにしているから、ハル、動いてはいけないし、テインも触ってはいけない」

とアンドリュー。


ハルは痛みに耐えるため、何も答えずに目をつぶっている。



リリアンナはどうしていいか分からず半泣きになりながらハルの横に座った。


「リリー、君の任務はなんだい?

何のためにここに来たかわかっている?ハルのためにも自分の仕事をするんだ。

集中すればリリーなら30分でできるよ?さあ頑張ろう」

と後ろから来たクリストファーが騎士達に聞こえない様な小さな声で優しく言った。


「そうだよリリー。頑張っておいで。ハルはリリーの任務を見るのが初めてなんだよ?」

と小声でアンドリューが語りかけ、


「さぁ頑張っておいで」

とアンドリューに促された。


リリアンナは涙を拭くと、クリストファーと共に灯台の階段を上って行った。

少し振り返ると、騎士の1人が王弟殿下に何かを報告しているところだった。


二階に行くと、そこには他の施設と同じように球体が浮いていたが、他の施設の球体とは違い、ほとんど光を発していなかった。

リリアンナは球体に触れると、これまでの任務の中で一番集中して高台の光を込めた。

体に力が入り、目を閉じた。


「リリー!」

そう言われ、手を掴まれて目を開けると、クリストファーがリリーの手を引き球体から引き離した。


「もう一時間が経ったよ。連続して長時間高台の光を込めるのは危険だ。少し休もう?」


球体を見ると、先ほどよりは光は強くなったがまだまだ弱い光であった。


「わかったわ。休むならハルの横で休むわ」


とリリアンナは答え、急いで階段を降りると、先ほどと変わらぬ光景でアンドリュー王弟殿下に寄りかかっているハルと、ハルに優しく何かを語りかけている王弟陛下がいた。


一時間前と違うのは、鳥の形をした魔法便が戻ったのか、鳥の形から、ただの紙に戻った魔法便の封書があり、小さな軟膏の容器と、数粒の薬があった。


「ハル!」

階段を降りると、リリアンナはハルに駆け寄った。

ハルに触れることはしなかったが、ハルの顔が見えるように正面に座る。


「リリアンナ様…」

ハルは弱々しく答えた。


「叔父上!その薬は…?」


「森の手前で待機するベネドより魔法便で届いたのだ」


とクリストファーに答えてからハルを見た。


「さぁ、30分経ったよ。」

とアンドリューはハルに話しかけて、飲み薬をハルの口に入れた。

そしてグレンの馬にくくりつけてあった荷物の中から取り出した水筒の水を飲ませていた。


ベネドから届いたと言う薬は、傷口に塗る化膿止めと、痛み止めの飲み薬だった。

痛み止めは30分に一回、2粒ずつ飲ませるように指示されている。リリアンナが任務をしている間に届き、30分前に一度飲んだようだ。


ハルはなんとか薬を飲んだ。


安堵して泣きそうなリリアンナの口にクリストファーはチョコレートを押し込んだ。

今は全く味がわからない。

リリアンナはお菓子の味がわからないのは初めてだった。


「この任務はすごくエネルギーを使うんだ。今はお菓子を食べたい気分じゃないかもしれないけど、食べないと続きができないよ?」

と言いながら自分もチョコレートを食べた。


なんとなく一息をついたところで、リリアンナはふと見た壁が少し明るいのが気になった。

発光しているようだ?


なんだろうと思って壁を見ていると、リリアンナの視線が気になったのか、第一王子と王弟殿下がリリアンナの視線の先を見た。


と途端に壁に亀裂が入り、その亀裂が裂けると、そこから男性が出てきた。

背は高く、真っ黒な髪に鋭い目。全体的に整ってはいるが、笑顔のない顔にリリアンナは驚いて


「ふぁぁぉ?」

と声にならない声を上げた。


普通なら、皆、剣を構えるはずだが、王弟陛下は笑顔になり

「やっと来たか!デュラム」

と現れた人に声をかけた。


現れた人は何も返事をせずにハルに駆け寄る。

ハルの腕の傷を凝視しながら小さな声で


「解毒剤を精製していたら…遅くなってしまった…。まあ我が主はどうせ戦場だから気付くまい…」

と言いながら、誰とも目を合わせずに、ハルの袖をまくり、噛まれたところを確認する。

そして、帽子を取り顔色を見て、目の中や口の中を確認する。


「気付いているぞ。デュラム」

と王弟殿下が言うが、それには答えない。


「この噛み跡は、デッドウルフ…。毒以外にも感染症で命を落とす人がいる。」

デュラムはそう言うと、次は、何も言わずにハルの服を脱がそうとした。王弟殿下と第一王子、リリアンナで全力で阻止する。

「ここではダメダメ!」


「ほかに噛まれた跡がないか見たかったのに…」

というと、懐から液体の入った瓶を出して傷口に塗った。そして、口内の毒特有の唾液が止まらなくなる症状がないか見て丸薬をハルの口に入れた。


ハルが吐き出さないように口を押さえるつけるデュラム。ハルが飲み込んだのを確認してから


「この侍従も噛まれているかもしれない」

とリリアンナが視界に入ったせいでデュラムはリリアンナを見た。

デュラムは無言でリリアンナの帽子を取ると、目を見て口内に毒特有の異常がないか見て、次に鼻をつまんだ。

またもや服を脱がそうとするので、第一王子は阻止した。

「呼吸は普通…服も破れてない。これは噛まれてない」

と独り言を言い、


「侍従は連れて帰る。」

と言った。

その声を合図に、亀裂から担架を持った数人が出てきてハルを担架に乗せた。


そこで初めて王弟陛下と第一王子とリリアンナに気づいたらしい男性は


「王弟殿下、いたんですか?居たなら声をかけてください」

デュラムは言い、


「この侍従は一週間の入院が必要です。毒の回り具合を確認して、容体が悪化しないように監視しときます」

といった。


「容体が悪化したらどうなるんだ?」

と第一王子が聞くと


「よだれを垂らしながら、野生動物のように四つ足で歩き回るようになります。そして側に来る人に噛み付きます。」


「…それはある意味死ぬより怖い…」

と王弟殿下。


「そうならないように監視します」

と言うと亀裂の中にハルを連れて戻って行った。


と、入れ替わりに馬に乗った騎士が5人ほど現れた。


そして亀裂はきれいになった


「王弟殿下、第一王子!今から任務にあたらせていただきます。」


と言うと、今現れた騎士5人は、外で見張りをしているブルーム達のところに行き、なにかを話している。


「移転魔法…なの?今の…」


「普通の移転魔法とは違うけどそうだよ。デュラムはこの国一番の魔術師でね。彼の移動魔法は追跡不可能だが…月に一度しか使えないらしい…。理由は言いたがらない」

と王弟殿下。


「ハルは入院したら良くなるのよね?」


「多分ね。」

と言われて、少しだけリリアンナは気持ちが楽になった。


「…リリー、帽子を取られたせいで顔が丸見えだよ…」

と第一王子に指摘されるまでリリアンナはすっかり自分が置かれた状況を忘れていた。


と…視線を感じて外を見る。

こちらをじっと見ているブルームと目が合ったが、すぐにブルームは目を逸らした。


そして、馬に乗ると、ブルーム、ヘティ、グレンは移転魔法の亀裂から出てきた2人の騎士を灯台の護衛に置き、3人を連れてきた道を森の方へ戻っていった。










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