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第十六話  ところでソイツ、誰なんだ

      

     

「今のは!」

     

 今までのふざけた顔を,一瞬で教官の顔へと変えたミサキが空を仰ぐ。

     

「おそらく封印系の結界でござろうな。力を100分の1くらいに減少させられている様でござる」

     

 ムサシが自分の手を見詰めながら漏らすのを横目に、ギムレットが叫ぶ。

     

「非常事態! 植物園封鎖!」

     

 ギムレットの声に、一瞬でミサキが反応する。

     

「全ガードゴーレム起動! 全ての出入り口封鎖! 全館戦闘態勢レベル5! 侵入してくる者は全て殲滅しろ!」

     

 続いてギムレットがキャスに怒鳴る。

     

「敵襲だ! 敵の人数、目的、武器、正体、学園の状況、何でもいい! 粛清部隊の監視システムを総動員して、可能な限り情報を集めろ!」

     

 キャスはギムレットの命令を耳にすると同時に部下に叫ぶ。

     

「学園内監視用の強化水晶版を持ってこい!」

     

 キャスの声に、粛清部隊の1人がパソコンの画面くらいの大きさの板を取り出した。

 どうやらルシファー学園の色々な場所を映し出せるらしい。

     

 キャスが強化水晶版に指でタッチする。

     

「今の時間は、どの学年も教室で授業を受けているはずだから、まずは教室の様子を見てみるわ。ん、これはミノタウルスの教室ね……これは!」

     

 キャスの上げた大声に、ギムレット、ミユ、ムサシ、ミサキ、ヴリトラの5人は 一斉に駆け寄ると、そこに映し出された光景に息を飲む。

     

「そ、そんな……全員が倒されている」

     

 キャスが漏らしたように、魔王軍でも肉体が頑丈な事で知られるミノタウルスの生徒、50人全員が床に倒れていた。

     

「生きてる?」

     

 ギムレットに聞かれて、キャスが慌てて生徒達をスキャンする。

     

「……よかったわ。どうやら気絶しているだけみたい」     

「しかし、一体どうやって鋼鉄の肉体を誇るミノタウルスを気絶させたのでござろうか。見た限りでは敵は1人、しかも人間に見えるでござるが」

      

 ムサシの言う通り、教師を含めて全員が倒れている教室の真ん中には、1人の人間が立っているだけだった。

 幻獣などが人型に姿を変えた者ではなく、本物の人間のようだ。

     

 ムサシの言葉に一瞬考え込んでから、ギムレットがキャスに命令する。

     

「キャス、他のクラスを映してみて」     

「了解。あ!」

     

 キャスが操作した強化水晶版に映し出されたのは、1人の人間が手にした鞭で、オーガを叩きのめしている光景だった。

     

「この鞭……以前見た、仙人が使う武器に似ているでござるが……」

     

 ムサシがそう呟く間にも教室内のオーガ達は、凄まじい速さで繰り出される鞭によって打ち倒されていく。

     

 と、1人のオーガが鞭を紙一重で躱して突進した。

     

「行け!」

     

 ギムレットが両手を握って叫ぶが。

     

『あ!』

     

 突進したオーガは、人間が持っていた槍から発射された焔によって足を撃ち抜かれて倒れてしまった。

     

「アレは火仙槍!」

     

 その様子を見たムサシが叫ぶ。

     

「やはり敵が装備している武器は、仙人が使用する『仙器』でござる!」     

「敵は仙人って事!? でも仙人は仙界に住んでいて、現世とは殆ど関わりを持たない生活を送っているんじゃ?」

     

 ギムレットの質問にムサシが頷く。

     

「その通りでござる。一体どういう事でござろうな」     

「とりあえず全ての教室を映して」

     

 ギムレットの命令に、キャスが全教室を順番に移していく。

     

 そして。

     

「……ドラゴン教室の6年生とボクら格闘コース1年1組以外の全教室、約3000教室が占拠されたってコトか」

     

 ギムレットの重々しい声が低く響いた。

     

 暫くの間、誰も口を開かなかったが、そんな中。

     

「ところでソイツ、誰なんだ」

     

 知也がフーデンを指差す。

     

「え? フーデンじゃない。同じ格闘コース1年1組の」

     

 当然といった顔で答えるギムレットを見つめた後。知也は他の生徒を見回しながら問いかける。

     

「みんなもそう思うのか?」     

「どうしてそんな事を聞くのでござる?」

     

 不思議そうな顔のムサシに、知也は確信する。

     

「ムサシ先生までもか。じゃあ質問をかえよう。このフーデンと、はじめて会った時の事を覚えているか? 初めて会話した時、コイツは何て言った? 今までコイツと一緒に練習したコトがあるヤツはいるか?」

     

 知也に言われて、ムサシと1年1組の生徒、そしてギムレットの顔色がサッと変わった。

     

「俺はこの植物園で初めてソイツの顔を見たのに、全員が以前からの知り合いみたいに行動していたから変だと思っていたんだ。そしたらこの騒ぎだ。お前、何か知っているだろ?」

     

 知也に指摘されると同時にフーデンの姿が掻き消えた。

     

「どこに行った!? ミンナ、逃がしちゃダメだよ!」

     

 ギムレットが鋭く叫ぶが。

     

「逃がしたりしないさ」

     

 フーデンの頭を鷲掴みにして、知也は笑ったのだった。






     

「で、アンタは何者なの? 目的は?」     

「ふ」

     

 いつの間にか学友と思い込まされていた悔しさに、ギムレットの声は殺気を帯びていたが、フーデンは薄笑いを浮かべるだけ。

 答える気はないようだ。

     

「ふむ。こんなコトはしたくないのでござるが」

     

 ムサシが顔色も変えずにフーデンの腕に刀を突き刺した。

     

「うっぎゃあああ!」

     

 絶叫をあげるフーデンに、ムサシは殺気をむき出しにして語り掛ける。

     

「早く口を割った方が身の為でござるぞ」

     

 ルシファー学園で最強の剣士という事は世界最強の剣士という事。

 しかし、そのムサシの世界一の殺気を浴びながらも、フーデンはふてぶてしい態度を崩さない。

     

「何の事だか見当もつかないなぁ……グッ!」

     

 フーデンの腕から刀を引き抜くと、ムサシは顔をしかめる。

     

「ふむ。コヤツ、拷問を受けても口を割らない訓練を受けているでござるな」

     

 ムサシが刀を鞘に納めたトコで、ギムレットが知也に視線を向けた。

     

「ボク達全員がフーデンの暗示に引っかかってしまったというのに、どうしてトモヤだけ正気だったんだろ?」     

「さあ。俺にもサッパリ……」     

「おそらくレベルが桁違いだったからです」

     

 知也が言い終えるよりも早くミユが答える。

     

「トモヤ様、ステータス表示と口にしてみてください」     

「こう?」

      

 知也がステータスを空中に表示すると同時に、全員が絶叫する。

     

『ええええ!』

     

 そこにあった、知也のステータスは。

     

 力        99999999     

 魔応力      99999999     

 耐久力      99999999     

 自主規制     1~~22     

 解除       1~~10     

 解放       1~~ 8

     

 だった。

     

 もちろん全ての文字が赤い。

     

「何よ、このデタラメな数字……私が敵うワケないじゃない……」

     

 キャスが腰を抜かしている。

     

「我が恐怖で動けなくなったわけだ。こんな怪物の前に立つだけで魂魄が消失しかねんわ!」

     

 ヴリトラも冷や汗にまみれていた。

     

「こ、これが鬼……良かった……戦わなくてホント良かった……」

     

 タイラントなど泣き崩れている。

     

「しかも自主規制に解除に解放なんてものもあるでござる」

     

 ムサシの指摘にギムレットが目を丸くしながら大声を出す。

     

「今より、もっと強くなれるってコト!?」

     

 皆が驚く姿に、ミユは満足そうな笑みを浮かべていたが。

     

「さすがワタシの愛する人。惚れ直した」

     

 エウリュアレの言葉に、ピキッと青スジを可愛らしいオデコに浮かべる。

 が、直ぐに気を取り直してミユは言葉を続けた。

     

「これほど力の差がある相手を欺く手段なんて、ある筈がありません。そして、ここまで強ければ、強制的に相手に口を割らせるコトも可能。そうですよね、ムサシ先生?」

     

 ミユに微笑みかけられて、ムサシは頷く。

     

「そうでござるな。本人にその気がなくとも他人を威嚇してしまう事は、強き者に良くある事でござる。より強き者ならそれは威圧となり、ずっと強き者ならば畏怖となるでござるが、トモヤ君の場合は更に上でござるな」

     

 そこまで言って、ムサシは知也を見つめる。

     

「トモヤ君の魂すら砕く恐怖の顔なら、フーデンの口を割らせるコトが出来るでござろう! いざトモヤ君!」     

「いや、魂すら砕く恐怖の顔って……」

     

 そこまで言われると、さすがにヘコむ知也だったが。

     

「トモヤ、お願いだよ!」

     

 必死の顔で頼み込むギムレットの勢いに負け、知也はフーデンの前に立つ事になってしまったのだった。




2020 オオネ サクヤ Ⓒ

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