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二十七、<回想>長老の危惧

海天祥の妻は末子を産んだあと、割と早く亡くなっています。

 海天祥は、書斎で独り佇んでいた。長い歳月を送る間、見送るのにはもう慣れた。だが、今回は堪えたようである。海白玉という名を持つ孫娘の、凛とした表情を浮かべる度に、その身に負ったものの大きさを想起せずには居られない。孫は見事に散った。残される人々の嘆きを知りつつも、その役目を終えて。この身がこの役目を終える日はいつだろう。もう誰かを見送らずに済むのなら、その方がましに違いない。

「天伶……。わしは長く生き過ぎたな」

 その黒瞳は憧憬を持って、遠くはるかなものになった過去を見つめていた。しかし次代の長がいまだ決まらぬ今は、長としてのつとめを果たさねばならぬ。

「あと少し…。あと少し待っていてくれ」

 とんとん。とんとん。

 その書斎の扉を叩く者があった。

「天祥おじいさま…。青玉です」

 一瞬の間をおいて居住まいを正し、表情を厳かなものに瞬時に変化させる。

「来たか。…入れ」

「はい」

 黒髪黒瞳の少年が、一人で入ってきた。その顔の上に、亡くなったその父親の面影が重なる。あれから五年が経過しているのだ。

「今年でお前も十二歳だったな」

「はい」

 素直すぎるほどにまっすぐな曇りのない瞳が、正面から天祥を捉える。

「紅玉は巫女として立派に成長した。若すぎる年齢ゆえに不十分なところはあろうが、年月がそれを補うであろう。おまえも長候補の一人として、日々己を鍛錬せよ。至らぬ妹を守り導けるように」

「はい、肝に銘じます」

 どこまでも明るい、闇を知らぬその瞳に、長老はほんの少し危惧を憶えた。いつか、その闇に足を掬われるのではないかと。

海姓の叔世代の男はとある事件がきっかけで、全員落命しています。

海碧玉の場合は祖父が天祥の弟で、早くに亡くなったため、父親が天祥に育てられましたが、その父親も既に亡くなっています。

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