二十、元巫女の密命
叔瑤と白玉は海姓の出身ですが、二人の巫女は先見を得意としていました。
白玉は亡くなるまで力を無くすことはありませんでしたが、叔瑤はある事件がきっかけで、その力の殆どを失っています。
ただ、稀にその力がふっと蘇ってくることがあります。
暫く稽古をすることにしたのは、黄玉の発案である。久しぶりに遣う武器では怪我をする恐れもあったし、何より久しぶりの帰邑なのだ。急ぐ必要がないからと縞玉が了承したのは、多節棍に何かあるからだろうと碧玉は見当をつけていた。その理由は黙して語らぬが、事情があるのだろう。
そして、模範試合の武器とは別に、縞玉は、天祥からじきじきに多節棍の指導を受けることになった。海一族の長老の亡き恩師は、多節棍の遣い手であったのである。天祥自身は邑主とならねばならぬ身ゆえ、流派の総帥を継ぐことは出来なかった。他に妥当な後継者を見つけ出すことが出来なかった師は、流派の至宝を天祥に託したのである。
「持っていくことに問題がないとは言わぬ」
それだけ、天祥は縞玉に告げた。
「はい……」
「叔瑤の指示か?」
それには肯きで応えた。遠くを見上げるような天祥の瞳に、哀切なものが漂う。遥か遠くに去った娘は、今もなお、かつて苦しんだ先見の力に怯えているのだろうか。
「叔母上は……。先見の力はもう殆ど残っていません。ただ、今回は」
焦茶色の髪の青年は、そう言って多節棍を手に取った。
多節棍の使い手として有名だった方は海天祥の若い頃の師匠で、晩年をここで過ごしていました。お墓も一族の墓の隣にあったりします。玉世代の子たちが産まれる前に亡くなっているので、面識はないけどどういう方かは知っているという状態ですね。
この流派は代々一番弟子の座を弟子全員で争い、一番になれたものが総帥を受け継ぐことになっていました。他はどんぐりの背比べで、恩師は後継を譲る気になれなかったので、自分が最後の代の総帥として海の人々に後を託した訳です。




