十七、長兄の朝
早朝から父兄参観です。
宴の翌朝、縞玉の惰眠の扉を蹴破ったのは、海青玉である。とんとんとん、と扉を叩く音に続いて、爽やかな大音声が、酒の抜けきらぬ縞玉の頭をものの見事に直撃した。
「縞玉大哥、おはようございます。朝食にしませんか」
扉を開けて顔を出すと、足の先まできっちりと身支度を済ませた青玉の爽やか過ぎる笑顔が、まるで朝日のように目に染みた。普段飲み慣れぬ量を飲んだ身には、少々刺激の強い光景である。
「…出来れば美人に耳元で囁いて起こして貰いたいな」
それは贅沢というものである。とは答えなかった。
「紅玉で良ければ一緒に来ております。ただ、男性の居室内にお邪魔するのはと申しましたので、私が保護者としてご一緒しました」
見ると、青玉の後ろに、こちらもまたきっちりと身支度を済ませた海紅玉が静かに佇んでいた。ほっそりとした優美な姿は朝日の中でもしっとりとした色合いを帯びている。父兄参観。と心の中でしっかりと突っ込みを入れる。
「まもなく朝食です。替えの衣類はこちらに」
「……前に使ってた衣類は使えない筈だが」
成長期は終わっていたとはいえ、七年前とは体格が違う。かつて着用していた衣類は最早袖を通すことは出来ても、服の前を合わせることは出来まい。そして袖も通すことは出来たとしても長さが足りないだろう。裾も微妙に短い筈である。
「大哥が宜しければ、これを」
鮮やかな碧を焦茶で縁取った衣装は、要所に邪魔でない程度のさりげない装飾が施されていた。縞玉の目と髪の色に合わせたものだろう。縫製も丁寧で着心地も良さそうである。昨日の今日では忙しなかったろうに、着替えを用意してくれたということに驚きの念を禁じえない。
「これは、もしや紅玉が……?」
「お体に合うと宜しいのですが。急いで作りましたので……、解れや綻びがありましたらお知らせ下さい」
「……すっかり淑女だな。ありがとう、喜んで着させて貰うよ」
果たして、袖を通すとそれは誂えたようにぴたりと縞玉に合った。
一応旅支度を整えて来たので、替えの衣類はありましたが、準備してくれたということでそちらを着用。旅支度から出すと洗濯してまた戻す手間がありますからね。




