十二、<回想>懊悩
邑内でも必ず青玉は紅玉を迎えに行きます。
青玉12歳、紅玉10歳、槍玉11歳、黛玉12歳。
「黒玉には、黄玉が。黄玉には、黒玉が…」
呟いていたのは、藺槍玉だった。十一歳の少年には、多少難しい言葉かも知れない。三つ上の姉藺水玉がいつか言っていたことを思い出す。
「私には、翠玉二哥が必要なの……」
その琥珀色の、くりくりとした丸い瞳には、熾火のような揺らめきと、朝露のようなきらめきとがあった。いつも華奢で可愛らしい姉が、少し遠く感じられたときだった。
「僕には、理解出来そうにないけど、いつか判るのかな…」
姉と同じ琥珀色の瞳を硬く閉じると、勝気な虞黛玉の顔が浮かんできた。
「僕には、黛玉四姐が、必要かも知れない」
暫く黒玉と黄玉が去っていったほうを見つめていたが、やがて星空へ視線を転じた。宵の明星は既に稜線の彼方に消えて、漆黒の闇に銀色の砂粒のような星が響きあうようにまかれていた。
「紅玉! 仕事は?」
「三哥。今、丁度終わりましたわ。お迎えに来て下さいましたの?」
明るい声が響き、咄嗟に槍玉は身を隠した。そうする必要は全くなかったのだが。様子を伺っていると、巫女の紅玉とその兄青玉が連れ立って歩いてくるのが見えた。神殿の階段をおりながら、青玉が妹を振り返り、労わるような優しい眼差しを向けている。まだ年端もいかぬ身で、一族の重責である巫女の任は堪えがたいものであろうが、相応しくあろうと日夜励んでいることを族人は心得ていたし、間近にその姿を見知っている青玉は、時折その様子を見に神殿へと足を運んでいた。兄の労わりが嬉しかったものか、桃の果実にも似た愛らしい頬に、ほんのりとした明かりが灯ったようだった。茶色の双眸はそこはかとなく潤いを帯びて、十歳の少女とは思えぬ艶やかさを醸し出していた。
「じゃあ、行こう。……おいで」
柔らかく微笑んで、青玉は妹に左手を差し出した。少女は一瞬ためらいかけつつも、おずおずと右手を載せる。二人は仲良く手をつないで館へ帰っていった。その後姿を見つめて、槍玉は重い吐息をついた。
その夜、黒玉は自室で白玉のことを考えていた。
「白玉、何のために…? 何故?」
隣には黄玉が眠っている。もう五歳になるのだからと一人で眠るようにと言っても、ここがいいと主張して譲らない。ならば私が部屋を変えると言ってもまたそこに来てしまうことも目に見えていたから、それ以上言葉を重ねる気にもなれなかった。考え詰めてはまた眠れない夜になってしまう。溜息をついて横になろうとした。ふと黄玉に目を向けると、黒曜石の瞳がじっと見つめていたことに気付いた。
「お、黄玉…」
眠ってなかったの、と言い掛けて気付いた。この子は、そういう子なのだと。外見は寧ろ翠玉の方が似ているかも知れぬ。しかし、その中身は。黄玉が一番良く似ていたのだ。懐かしい親友、白玉に。その姉に。
「大姐」
あどけない微笑みを向けて、黒玉の首に手をかけ、そのまま一緒に寝台に倒れこんだ。一瞬、その小さな唇が触れたような気がした。黒玉は、なにかがぷつん。と切れたように意識を失っていった。
青玉は、基本として、紅玉を一人にはさせません(神殿でのお勤めの時間を省く)。
正しい保護者と言えましょう。過保護という枕詞つきの。
そして移動時は常に手を繋いでいます。迷子になったりする子ではありませんが、いつでも守れる位置にいるためです。勿論歩調はちゃんと巫女に合わせてくれます。紅玉が歩みを止めるか滞る場合はすぐに自分も止まって巫女の様子を確認するという癖がありますが、これは父親の癖を継いでいます。
黄玉は保護者ではないので、黒玉一人の時間も持たせるようにはしてますが、どちらかというと黒玉に言い寄ろうとする輩の排除に力を入れていました。
ただしい求婚者と言えるでしょう。執着系の←




