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プロローグ(2回目)

神殿の埃っぽい空気に、いつもより仄かに湿った香の匂いが混じっている。


供物台の上、乾いた木の実に混じって、ここ最近ちらほらと新しい供物が増えていた。ガイエラは寝ぼけ眼でそれを一つつまみ、齧りながら首を傾げる。


「……ねえ、これ、気のせいよね?」


答える者はいない。がらんとした神殿に、自分の声が虚しく響くだけだ。


だが気のせいではなかった。供物は先月より明らかに増えている。土に感謝する祈りの言葉も、心なしか丁寧になった気がする。


理由に、心当たりがないわけではなかった。


風の噂――と言うより、旅人や商人が運んでくる噂話の切れ端――に、王都の方角がやけにざわついているという話が混じるようになった。辺境の一介の騎士爵の名が、貴族たちの茶飲み話に上り始めているらしい。


「まったく、目立つんだから……」


万年床から起き上がる気配もなく、ガイエラは寝転んだまま呟いた。


面白く思わない連中がいることくらい、数百年神をやっていればわかる。だが今のところ、心配してやる義理も、起き上がる元気もない。


「ま、あいつのことだから、今日も暑い暑い言いながら、どこかで土をいじってるんでしょ」


神殿の窓から差し込む光が、少しだけ眩しかった。


ガイエラは寝返りを打ち、また目を閉じた。


――夏か。

次回の更新は、8月29日 21:10を予定しています。


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