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謎の喋る箱

火山王バルガノスが見送る中、一行は再び旅立つ。

王女エリシアの馬車。

その横を飛ぶゼルク。

後方を歩く巨大白獣アルヴェリア。

荷台でくつろぐノヴァ。

白ぽむたちは温泉まんじゅうを抱えていた。

ノヴァは空を見ながら呟く。


「しゃべる、はこ……」


少し間を置いて。


「おもしろそう」


王都アルセリアへの帰路。

豪華な王女の馬車は街道を進んでいた。

前方に騎士団。

後方に補給車。

その横をゼルクが飛び、さらに後ろから巨大な白獣アルヴェリアが悠々と歩く。

通り過ぎる村人たちは二度見した。


「王家の馬車……?」

「後ろに神獣いる!?」


レナは窓から手を振る。


「気にしないでー!」


車内。

エリシアが地図を広げる。


「逃げた宝箱は“王庫第七封印箱”と呼ばれる遺物です」


フィリアが眉を上げる。


「封印箱?」

「はい。昔の王が“面倒だから閉じ込めた”と記録されています」


ゼルクが呆れる。


「雑な歴史だな」


レナは質問する。


「で、何ができるの?」


エリシアは真顔で答えた。


「よく喋ります」


沈黙。


「それだけ?」

「あと速いです」



夕方。

王都アルセリアは以前にも増して騒がしかった。

市場では叫び声。


「パンが消えた!」

「スープ鍋まで持っていかれた!」

「さっき宝箱が値切ってきたぞ!」


レナが頭を抱える。


「被害内容が地味に腹立つ!」


中央広場。

人だかりの中心で、何かが跳ねていた。

木製の宝箱。

金具付き。

足が生えている。

ぴょん。

ぴょん。

そして蓋がぱかっと開く。

中は暗闇。

そこから甲高い声。


「次の挑戦者ァ! 来い来い来ぃい!」


ノヴァがじっと見る。


「……はこだ」


フィリアが頷く。


「そうだね」


宝箱はノヴァたちを見つけるなり飛び上がった。


「おお!? 強そうなの来た!」

「だが捕まえられるかなァ!?」

「我こそ伝説の迷宮王、ミミクロン様だァ!」


ゼルクがぼそり。


「うるさい」


レナは剣を抜く。


「よし、叩き割る」


エリシアが慌てる。


「だめです! 中に王家の財宝が入ってます!」


ミミクロンは足を高速回転させた。

きゅるるるるる!

そのまま石畳を爆走。

屋台をくぐり、噴水を跳び越え、壁を走る。


「遅い遅い遅ぉい!」


レナが追う。


「待ちなさい!」


ゼルクも飛ぶ。

フィリアはショートカットで路地へ。

白ぽむたちは転がって追跡。

王都全体が巻き込まれた。

ただ一人、ノヴァだけはその場に立っていた。

アルヴェリアが聞く。


『追わぬのか?』


ノヴァはこくり。


「まつ」


数秒後。

ミミクロンが角を曲がって全速力で戻ってきた。


「ぎゃははは! 誰も追いつけ――」


その進行方向に、ノヴァ。

宝箱、急ブレーキ。

ぎぎぎぎぎ。

止まれない。

ごつん。

ノヴァの足にぶつかって止まった。

沈黙。

レナが追いついて腹を抱える。


「一番平和な捕まえ方!」


ミミクロンは蓋を開けて叫ぶ。


「離せぇ! 我は自由なる箱!」


ノヴァはしゃがみ込み、真顔で聞いた。


「なんで、にげた」


宝箱は少し黙った。

そして小さく答える。


「……地下、暗いし」


全員、固まる。

フィリアが確認する。


「それだけ?」

「あと誰も話しかけてくれんし」


エリシアが目を伏せた。


「少しかわいそう……」


ゼルクがため息。


「面倒くさいだけだ」


その夜。

王都会議の結果。

ミミクロンは処罰されず、新たな任務を与えられた。

王都観光大使。

中央広場で案内役。

迷子の子ども対応。

宝探しイベント担当。

ミミクロンは大喜びした。


「我がついに表舞台へ!」


レナが呟く。


「丸く収まりすぎでしょ」


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