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王都へ戻ろう


ノヴァは新しい露天風呂に浸かり、満足そうに頷いた。


「よし」


レナも肩まで浸かる。


「丸く収まったわね」


ゼルクが端で言う。


「丸いのは毛玉だけだ」


その時、空から巨大な影。

アルヴェリアが降りてきた。

母の第一声。


『聞いたぞ。温泉を守ったと』


ノヴァは胸を張る。


「うん」


レナが笑う。


「報告そこなんだ」


新生温泉街は大盛況だった。

湯けむりの中を観光客が歩き、露店には行列。

火山王バルガノスは巨大露天風呂の端で湯温調整。

ガルドンは温泉卵係。

白ぽむたちは看板マスコットになっていた。


「ぽむ〜!」


宿の主人は毎日泣いていた。


「売上がめちゃめちゃ上がってる……!」


アルヴェリアは街を見下ろし、少し戸惑っていた。


『……我は何を見せられているのだ』


レナが笑う。


「いいから入ってみて!」


巨大な白獣が温泉へ?

誰もが固唾を呑む。

アルヴェリアは慎重に前脚を湯へ入れた。

しゅわぁ……。

目が見開かれる。


『……あたたかい』


ノヴァがこくり。


「いいでしょ」



数分後。

アルヴェリアは巨大露天風呂に半分沈み、完全にとろけていた。

六枚の翼もだらん。

銀の瞳はうっとり。


『……これは……危険だ……』


フィリアが頷く。


「わかる」


ゼルクは離れた場所から呆れている。


「親子そろって風呂好きか」


その時。

街の入り口が騒がしくなった。

観光客たちがざわめく。


「なんだ?」

「また魔物か?」


レナが立ち上がる。


「今度は何よ」


坂道の向こうから、きらびやかな馬車が現れた。

金の装飾。

王家の旗。

兵士たちが道を開ける。

フィリアが目を細める。


「王都の紋章」



馬車から降りてきたのは、王女エリシアだった。

ドレス姿のまま、湯けむりに包まれている。

レナが驚く。


「なんでここに!?」


エリシアはノヴァを見るなり駆け寄った。


「探しました!」


ノヴァは足湯から顔だけ出す。


「ん?」


エリシアは息を整え、真剣な顔になる。


「王都で大変なことが起きています」

「城の地下宝物庫から、“喋る宝箱”が逃げ出しました」


沈黙。

ゼルクが聞き返す。


「……何だと?」


フィリアも珍しく固まる。


「情報量が多い」


レナは頭を抱える。


「世界滅亡クラスの次がそれ!?」


エリシアは続ける。


「ただの宝箱ではありません!」

「人を騙して食べ物を要求し、断ると高速で逃げ回ります!」


宿の主人が震えた。


「厄介すぎる……」


ノヴァは一言。


「たべもの、ぬすむ?」

「はい」


ノヴァ、立ち上がる。

目が本気だった。


「いく」


レナが吹き出す。


「食べ物案件には即決ね」


アルヴェリアはまだ湯に沈んでいた。


『……我はここに残ってよいか』


全員が見る。

ノヴァは少し考えた。


「だめ」

『えっ』

「おかあさんも、くる」


アルヴェリア、しょんぼりしつつ立ち上がる。

レナが笑う。


「母娘で宝箱狩りね」


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