火山地帯グラメル
数時間後。
ノヴァがもぞっと起きた。
寝ぼけた顔のまま、アルヴェリアの毛並みに顔を埋める。
母は静かに笑う。
『よく眠れたか』
ノヴァはこくり。
「ふかふか」
レナが吹き出す。
「感想それなんだ」
アルヴェリアは山の向こうを見た。
『我はここに残る』
『この地と、閉じた門の傷跡を守らねばならぬ』
フィリアが頷く。
「守護者だもんね」
ノヴァは少し寂しそうに見上げる。
「いっしょ、いかない?」
アルヴェリアは優しく鼻先を寄せた。
『お前には、お前の旅がある』
『だが呼べば、必ず行く』
『それか、守護の必要が無いと判断すれば合流するかもしれん』
ノヴァはしばらく黙り、やがて頷いた。
「うん」
レナは立ち上がり、大きく伸びをした。
「さて、世界救ったし、次は温泉とか行きたいわ」
ゼルクが鼻で笑う。
「俗だな」
「あなたも入りたいでしょ?」
「……少しなら」
フィリアは地図を広げる。
「南方に火山地帯あり。温泉多数」
レナがガッツポーズ。
みんなが次の行き先で盛り上がる中、ノヴァは立ち上がった。
風が髪を揺らす。
白金の翼が朝日に光る。
仲間たちを見渡し、いつもの調子で言った。
「次はどこ行く」
レナが笑う。
「今決めてるとこ!」
フィリアは地図を差し出す。
「候補は三つ」
火山温泉郷グラメル
空中都市ルミナス
海底神殿ネレイア
ゼルクが口元を上げる。
「我は空中都市だな」
レナは即答。
「温泉」
フィリア。
「海底神殿、興味ある」
白ぽむたち。
「ぽむ!」
(意味:どこでもいい)
全員の視線が集まる。
ノヴァは少し考えた。
かなり考えた。
やがて真顔で言った。
「おいしいとこ」
沈黙。
レナが腹を抱えて笑う。
「最高、温泉郷に決定!」
フィリアも珍しく笑った。
「合理的判断」
ゼルクは呆れた顔をした。
「結局そうなるのか……」
アルヴェリアが翼を広げ、旅立つ一行を見送る。
『行け、ノヴァ』
『世界は広い』
ノヴァは振り返り、大きく手を振った。
「またね、おかあさん」
そして仲間たちと共に、南へ飛び立つ。
温泉と、新たな騒動を目指して。
遠くから母の声が追いかけてきた。
『無茶はほどほどに!』
ノヴァは元気よく返した。
「むり!」
レナたちの笑い声が、空へ響いた。
一行は三日かけて到着した。
遠くからでも分かる。
山々から白い湯気。
赤く光る溶岩。
硫黄の香り。
そして谷一帯に広がる温泉街。
木造の旅館。
露店。
湯けむり。
温泉まんじゅう。
レナの目が輝いた。
「天国!!」
街へ入った瞬間、商人たちが集まってくる。
「旅人さん、名湯はこちら!」
「極上肉まん!」
「火山たまご!」
ノヴァの足が止まる。
「……おいしい」
フィリアが確認する。
「まだ食べてないよ?」
「でも、わかる」
ゼルクは呆れた。
「鼻だけで生きているのか」
その日の宿。
露天風呂は岩造り。
目の前には火山と夕焼け。
レナは湯船に飛び込んだ。
「生き返るぅぅ……」
フィリアも静かに肩まで浸かる。
「いい」
ノヴァは湯気を見つめ、慎重に足を入れた。
数秒後。
「……あったかい」
そのままとろけるように沈んだ。
ゼルクは別の男湯で一人だった。
「なぜ我だけ別なのだ……」
白ぽむたちは足湯で浮いていた。
「ぽむ〜」




