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次の目的地へ


レナがしゃがみ込む。


「どうしたの?」


ノヴァは少し考え、短く言った。


「しろい、けもの」


フィリアの表情が固まる。

ゼルクも振り向いた。


「まだ気にしていたか」


ノヴァは頷く。


「わたし、ちがう」

「でも、におい……にてる」


空気が変わった。

フィリアが静かに言う。


「……私も、少し思ってた」


その日の午後。

一行は王城地下の記録庫へ降りた。

氷が解け始め、封じられていた部屋が開いていた。

古い書物。

割れた魔導具。

凍った日誌。

フィリアが一冊の記録を見つける。

表紙には王家の紋章。


「災厄観測記録」


レナが身を乗り出す。


「それだ!」


ページをめくる。

震えた文字でこう書かれていた。

北天に白き光出現。

巨大な白獣、翼あり。

咆哮により吹雪発生。

だが、民を直接襲う様子なし。


さらに次のページ。

王都上空に黒き門出現。

白獣、門へ突撃。

門崩壊。

その後、国土凍結。

全員が黙る。

レナがぽつり。


「……敵じゃなくて、戦ってた?」


フィリアは頷く。


「最初から守ろうとしていた可能性がある」


ノヴァはじっと記録を見ていた。

小さな手がページに触れる。


「ひとり……?」


フィリアが目を細める。


「たぶん」


ノヴァの翼がわずかに震えた。

レナは気づく。


「会いたいの?」


ノヴァは小さく頷いた。


「さみしい、いや」


その時、青ぷむが棚の奥で何かを見つけた。


「ぷむ!」


引っ張り出されたのは、氷漬けの水晶板。

フィリアが魔力を流すと、映像が浮かぶ。

吹雪の中。

空を飛ぶ巨大な白い獣。

王都ほどの翼。

銀の瞳。

ゼルクの目が細くなる。


「ただの魔物ではないな」


映像はそこで途切れた。


ノヴァは前へ出る。


「いく」


レナが笑う。


「だと思った」


フィリアは地図を広げる。


「記録の最後の方角は、さらに北」

「禁雪峰ヴァイスレム」


ゼルクが翼を広げる。


「面白い。行こうではないか」


白ぽむたちも跳ねる。


「ぽむ!」

「ぼむ!」

「ぷむ!」

「ぴむ!」



その夜。

ノヴァは一人、雪原に立っていた。

月明かりの中、北の山々を見つめる。

風が吹く。

遠く、どこかから低い遠吠えが聞こえた。

白い獣の声のように。

ノヴァは静かに答えるように呟く。


「まってて」


白金の翼が、月に輝いた。



世界の果てのような山脈だった。

空は常に雪雲に閉ざされ、太陽の光すら薄い。

吹雪は刃のように鋭く、普通の旅人なら一歩で凍る。

だが一行は進んでいた。

ゼルクが風を裂き、前方を警戒する。

レナは剣で雪壁を砕く。

フィリアは氷気を読み道を探す。

白ぽむたちは転がっていた。

ノヴァだけは黙って前を見ていた。

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