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氷王女セレスティア①


フィリアは前へ出た。


「姉さま」

「私です。フィリアです」


セレスティアの視線が向く。

数秒。

沈黙。

そして機械のように答えた。


「該当個体確認」

「王族第二位継承者、フィリア」


レナが小声で言う。


「言い方が怖いのよ」


フィリアは一歩近づく。


「もう戦わなくていい」

「国は……終わった」


その言葉に、空気がさらに冷えた。

セレスティアの瞳が強く光る。


「否定」

「王国は終わっていない」

「敵性存在を排除し、民を守る」


杖が再び上がる。

床から氷槍が何十本も突き出した。

ゼルクがフィリアを引き寄せる。


「危ない!」


どががががっ!!

玉座の間が一瞬で槍の森になる。

レナが飛び退きながら叫ぶ。


「話し合いゼロ!?」


その時。

小さな少女ノヴァが前へ出た。

白金の翼を広げる。

純白の聖剣を軽く振る。

しゅん。

氷槍がすべて綺麗に断たれ、雪のように崩れた。

セレスティアの目が初めて揺れる。


「……未登録戦力」


ノヴァは短く言う。


「けんか、だめ」


外から轟音

王城の壁が震える。

青ぷむが窓から外を見る。


「ぷむ!?」


外では、動き出した氷像兵たちが街中へあふれていた。

数百。

いや数千。

白ぽむたちが必死に食い止めている。

白ぽむの体当たり。

赤ぼむの熱風。

黄ぴむの閃光。

だが多すぎた。

フィリアが顔を上げる。


「姉さまが止まらない限り、全部止まらない」


フィリアは震える声で言った。


「姉さまは、もう生きていない」


全員が息を呑む。


「十年前、白き災厄から民を守るため、自分の命を核にして防衛術式を起動した」

「身体だけが術式に動かされている」


レナの表情が変わる。


「……つまり」


フィリアは目を伏せる。


「姉さま自身は、ずっと苦しんでる」


静寂。

セレスティアの杖がわずかに震えた。

その時。

冷たい表情のまま、セレスティアの口元だけが微かに動いた。

かすれた声。


「……フィ……リア……」


フィリアが涙ぐむ。


「姉さま!」


だが次の瞬間、瞳が再び機械的な光に戻る。


「異常発生」

「継続戦闘」


王城全体に巨大な魔法陣が広がる。

天井まで届く氷柱が生成される。

ゼルクが牙を剥く。


「時間切れだ」


フィリアはノヴァを見る。

初めて迷いなく頼った。


「ノヴァ」

「姉さまを……終わらせて」


レナが息を止める。

ゼルクも黙る。

ノヴァはフィリアを見る。

涙。

震える手。

でも真っ直ぐな目。

ノヴァは小さく頷いた。


「たすける」


二本の剣を構える。

白金の翼が広がった。

セレスティアも杖を掲げる。

玉座の間に、決戦の冷気が満ちた。


王城・玉座の間。

崩れた氷槍。

震える床。

天井まで伸びる氷柱。

中央で向かい合う二人。

白金の翼を持つ小さな少女ノヴァ。

そして、氷王女セレスティア。

フィリアは唇を噛み、見つめていた。


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