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83話 ノヴァの変化

次の瞬間。

白金の翼が、ゆっくりとノヴァ自身を包み込んだ。

一枚。

また一枚。

巨大な翼が幾重にも重なり、まるで光の繭となる。

王都に静寂が落ちた。

レナは血だらけのまま目を見開く。


「進化……?」


フィリアは横たわったまま小さく呟く。


「変態」


ゼルクが地面から顔だけ上げる。


「その言い方はやめろ……」


繭に亀裂が走る。

ぴし。

ぴしぴし。

そして――

眩い閃光とともに、翼が開いた。

そこに立っていたのは、もうフェンリルの姿ではなかった。

小さな女の子。

年の頃は幼く見える。

雪のように白い髪が風に揺れ、瞳は星のような銀。

背には、身体より大きな白金の翼。

右手には純白に輝く聖剣。

左手には闇を吸い込む漆黒の魔剣。

聖と魔。

光と闇。

相反する二振りを、当然のように持っていた。


兵士たちがざわめく。


「……人?」

「天使か?」

「いや、ノヴァだろ!?」


レナは笑った。


「かわいいじゃない」


フィリアは頷く。


「強そう」


ゼルクは呆然としていた。


「白いの……お前、そうなるのか……」


少女はゆっくり周囲を見た。

倒れた仲間たち。

燃える街。

空の悪魔軍。

そしてルシエラ。

小さな唇が開く。


「……だめ」


澄んだ声だった。

レナが目を丸くする。


「しゃべった!?」


少女はもう一度、短く言った。


「こわす、だめ」


フィリアが静かに補足する。


「単語型」


ルシエラは槍を構え直す。


「姿を変えようと、所詮は獣――」


言い終わる前に、ノヴァの姿が消えた。

風すら遅れて動く速度。

次の瞬間、ルシエラの目の前。

純白の聖剣が、槍を真っ二つに断った。


「なっ――!?」


さらに漆黒の魔剣が、彼女の鎧だけを砕いて吹き飛ばす。

ルシエラは空中で数十回転し、遠くの塔へ激突した。

轟音。

悪魔軍が凍りつく。


ノヴァは空中に立つように浮かび、翼を広げた。

右の聖剣から白い光。

左の魔剣から黒い雷。

小さく、はっきりと言う。


「みんな、いじめる……だめ」


悪魔兵たちが一斉に後ずさる。

ゼルクが笑った。


「ふっ……」

「怒らせる相手を間違えたな」


塔の瓦礫を破り、ルシエラが立ち上がる。

口元から血を流しながらも笑っていた。


「面白い……!」


背後の黒い門がさらに開く。

そこから禍々しい巨大な腕が伸びてくる。

レナが顔色を変えた。


「まだ上がいるの!?」


ノヴァは二本の剣を構えた。


「くる」


白金の翼が、再び王都を照らした。

黒い門は、空そのものを裂くように開いていた。

そこから伸びる巨大な腕。

爪だけで塔ほどもある。

皮膚は黒鉄のように硬く、赤い紋様が脈打っている。

悪魔兵たちは歓喜した。


「公爵様の上位存在だ!」

「終わりだ、人間ども!」


レナは瓦礫にもたれながら顔をしかめる。


「毎回スケール更新するのやめて……」


フィリアは傷だらけのまま頷く。


「同意」


門の奥から、低く重い声が響いた。


「ルシエラ」

「手こずりすぎだ」


ルシエラは片膝をつく。


「申し訳ありません、父上」


空気が凍った。

レナが目を見開く。


「父上!?」


ゼルクが血を吐きながら笑う。


「なるほど……面倒な血筋だ」


門の奥で、二つの紅い瞳が開く。


「我が名は魔界大公ヴァルザド」

「この世界、今宵より我が庭とする」


やっとここまで来れた! 個人的に一番好きな場面!

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