81話 平和になるかと思えば
白ぽむが突進。
もふん!!
ヴァルグは顔面から吹き飛んだ。
「ぐえっ!」
赤ぼむが追撃。
ぼふん!!
熱々の毛に包まれ転がされる。
「熱い熱い!」
青ぷむが水流で空へ打ち上げる。
しゃああっ!!
「ひゃああ!」
最後に黄ぴむ。
ぴょん。
頭上から体当たり。
ぽよん!!!
ヴァルグは港の倉庫へ突き刺さった。
ずぼっ。
足だけ出ている。
レナが拍手した。
「完璧な流れ!」
白ぽむたちは並んで立つ。
白・赤・青・黄。
月明かりの下、四体が同時に鳴いた。
「ぽむ!」
「ぼむ!」
「ぷむ!」
「ぴむ!」
フィリアが静かに訳す。
「今日から自由に生きる」
ゼルクが感心する。
「便利だな、お前」
白ぽむがノヴァへ近づく。
もふ、と頭を下げた。
仲間になろう。
そんな仕草だった。
ノヴァは少し考える。
柔らかい。
暖かい。
寝心地がいい。
答えは早かった。
ぴょん。
白ぽむの上へ飛び乗る。
丸くなる。
秒で寝た。
レナが呆れる。
「判断基準ずっとそれね」
翌朝、掲示板更新。
第一位:ノヴァ&自由毛玉連合 99%
第二位:ゼルク(努力賞)1%
ゼルクが震える。
「努力賞!?」
フィリアは肩に手を置いた。
「評価はされてる」
レナは笑いながら言った。
「次はあんたも丸くなりなさいよ」
ゼルクは空を見上げ、静かに誓った。
「……我も、もふになる」
王都アルセリア。
平和だった。
白ぽむの上で眠るノヴァ。
市場で人気者の赤ぼむ。
港の清掃を手伝う青ぷむ。
子どもたちと跳ねる黄ぴむ。
ゼルクは庭で一人、丸くなる訓練をしていた。
「……こうか」
全然丸くない。
レナが遠くから言う。
「ただ伏せてるだけよ」
フィリアは紅茶を飲む。
「努力賞」
ゼルクが吠えた。
「その呼び名をやめろ!」
空が割れる
その時だった。
王都上空。
青空に黒い亀裂が走る。
びりびりびり。
雲が裂け、太陽が隠れる。
人々が悲鳴を上げた。
市場の果物が転がり、鐘が鳴る。
レナが剣を抜く。
「今度は何!?」
フィリアは空を見上げる。
「嫌なやつ」
亀裂の中から、無数の影が降ってきた。
黒翼。
角。
赤い瞳。
空を埋め尽くす悪魔の軍勢。
先頭にいたのは、巨大な翼を持つ女悪魔だった。
漆黒のドレス。
銀の角。
手には槍。
空中から冷たく告げる。
「魔王軍四天従の一人が倒されたから来てみれば……」
「碌なのがいないな」
「ならば都合がいい」
「人間ども」
「この王都は、魔界公爵ルシエラ様が接収する」
レナが顔をしかめる。
「また名乗り長いタイプ来た」
フィリアは頷く。
「強そうではある」
ルシエラが槍を振る。
黒雷が城壁へ落ちた。
轟音。
石壁が砕け、兵士たちが吹き飛ぶ。
人々は逃げ惑った。
ゼルクの顔つきが変わる。
「遊びは終わりだ」
翼が広がる。
漆黒の本気の姿へ戻る。
白ぽむが前へ出る。
赤ぼむが燃える。
青ぷむが水を渦巻かせる。
黄ぴむが光る。
ノヴァもその上から飛び降りた。
純白の翼が広がる。
レナが笑う。
「いつものメンバーね!」
フィリアは氷槍を作る。
「十分強い」




