80話 反逆
四体は一斉に飛び出した。
白ぽむ――癒しのもふ波動。
ふわぁ……。
兵士たちの疲れが少し取れた。
「敵なのに助かる!」
赤ぼむ――情熱の熱風。
港の屋台の串焼きが全部いい感じに焼けた。
「便利!」
青ぷむ――清流弾。
石畳がぴかぴかに洗浄された。
「掃除されてる!」
黄ぴむ――元気の閃光。
眠っていた酔っ払いが飛び起きた。
「朝か!?」
フィリアが分析する。
「敵として致命的に優しい」
ノヴァは構えたまま止まっていた。
倒すべきか。
でも役に立っている。
少し迷う。
ゼルクが吠える。
「惑わされるな白いの!」
その直後、黄ぴむの光を浴びてゼルクが無駄に元気になった。
「うおおおお!! 」
レナが吹き出す。
ヴァルグは杖を地面に叩きつけた。
「ならば本来の力を見せよ!」
黒い魔力が四体へ流れ込む。
毛並みが逆立つ。
瞳が赤く染まる。
今度こそ殺気が港を包む。
白ぽむの体が巨大化。
赤ぼむの熱量が増大。
青ぷむが津波のようにうねる。
黄ぴむが雷鳴をまとう。
レナが剣を握る。
「今度はやばい!」
フィリアも氷槍を作る。
「今度は本当にやばい」
ゼルクが翼を広げる。
「白いの!」
ノヴァも純白の翼を開く。
互いに視線が合う。
また、言葉はいらない。
レナが叫ぶ。
「来るわよ!」
ゼルクが黒雷となって赤ぼむへ突撃。
「熱い相手は我がやる!」
赤ぼむと空中で激突。
爆炎。
ノヴァは白ぽむへ飛ぶ。
癒しの波動を正面から受けながら突進。
少し眠くなった。
でも殴った。
ぺし。
白ぽむが転がって倉庫に刺さる。
フィリアは青ぷむへ氷槍を放つ。
水と氷がぶつかり、港に巨大かき氷ができた。
レナは黄ぴむへ斬りかかる。
「なんでピカピカしてんのよ!」
黄ぴむは避けながら応援してきた。
「ぴむ!」
「応援するな!」
戦況は一気に傾いた。
ヴァルグが後ずさる。
「ば、馬鹿な……!」
「四方もふ獣が、人間ごときに……!」
レナが剣先を向ける。
「違うわ」
ゼルクが空から降り立つ。
「我らは人間ではないがな」
ノヴァも隣に着地する。
小さく吠える。
追い詰められたヴァルグは叫んだ。
「ならば最後の命令だ!」
「四方もふ獣よ――自爆せよ!!」
港が静まり返る。
レナが目を見開く。
「最低!」
四体の毛玉が震え始める。
ノヴァの耳が立つ。
ゼルクが牙を剥く。
次の瞬間。
白ぽむが、ゆっくりヴァルグの方を向いた。
夜の港。
ヴァルグの叫びがまだ響いていた。
「四方もふ獣よ――自爆せよ!!」
だが。
白ぽむは、ゆっくりとヴァルグの方を向いた。
赤ぼむも。
青ぷむも。
黄ぴむも。
四つのつぶらな瞳が、司祭を見つめる。
ヴァルグが一歩下がる。
「な、何だ……命令だぞ?」
白ぽむが一歩前へ出る。
「……ぽむ」
低い声だった。
赤ぼむも続く。
「ぼむ」
青ぷむ。
「ぷむ」
黄ぴむ。
「ぴむ」
フィリアが頷く。
「怒ってる」
レナが驚く。
「分かるの!?」
「なんとなく」
白ぽむは胸を張った。
「ぽむぽむ」
赤ぼむが力強く鳴く。
「ぼむ!」
青ぷむが静かにうなずく。
「ぷむ……」
黄ぴむがぴょんと跳ねる。
「ぴむ!」
ゼルクが眉をひそめる。
「何を言っている」
フィリアが通訳した。
「“もう悪いことしたくない”」
レナが二度見した。
「本当に分かるの!?」
ヴァルグは杖を振り上げた。
「黙れ出来損ないども!」
「貴様らは道具だ!」
その言葉に、港の空気が変わった。
ノヴァの毛が逆立つ。
ゼルクの翼から黒雷が走る。
レナの剣が光る。
フィリアの氷気が強まる。
そして四体の毛玉たちも、怒っていた。




