76話 「ぽむっ!」「ぼむっ!」
王城会議室。
エリシア王女も参加し、緊急会議が開かれていた。
議題。
“ぽむは何なのか”
学者A。
「巨大綿毛生物では?」
学者B。
「雪の精霊説」
学者C。
「ただのすごく丸い犬」
レナが机を叩く。
「ちゃんと調べなさいよ!」
フィリアはぽむを撫でながら言う。
「柔らかい」
会議になっていない。
それから数日。
ノヴァは以前より忙しくなった。
朝、ぽむの上で起床。
昼、ぽむと散歩。
夕方、ぽむの毛に埋まって昼寝。
レナが呆れる。
「完全に堕落してる」
フィリアは首を振る。
「快適化」
ぽむは嬉しそうに「ぽむ」と鳴く。
ノヴァも満足そうだった。
その夜。
庭の隅。
ゼルクが秘密特訓をしていた。
「我にも足りぬものは分かった……」
「丸さだ」
レナが遠くから聞いて顔を覆う。
「嫌な予感しかしない」
ゼルクは黒い魔力を練る。
体を縮める。
脚を短くする。
毛を膨らませる。
数秒後。
そこにいたのは――
黒い毛玉だった。
目だけ赤い。
フィリアが即答する。
「ちょっと怖い」
ゼルクが叫ぶ。
「なぜだ!?」
人気テスト
翌日、広場。
白いぽむ。
黒いゼルぽむ。
その間にノヴァ。
人々の反応。
「白いのかわいい!」
「ノヴァかわいい!」
「黒いのは……何?」
子どもが指差した。
「すす?」
ゼルクが膝から崩れ落ちた。
その時、街の外から兵士が駆け込んできた。
「報告!」
「西の街道に、巨大な赤い毛玉が出現しました!」
沈黙。
レナがゆっくり顔を上げる。
「増えた?」
兵士は続ける。
「しかも人々を魅了しながら転がってきます!」
フィリアが小さく呟く。
「第三勢力」
ぽむが珍しく真顔になった。
「……ぽむ」
ノヴァの耳が立つ。
ゼルクも立ち上がる。
「今度こそ我が主役だ!」
レナは剣を抜いた。
「人気戦争、次のラウンドね……!」
王都アルセリア、西門。
兵士たちが慌ただしく門を閉めようとする中、地面がずしん、ずしんと揺れていた。
遠く街道の先。
赤い何かが転がってくる。
土煙を上げ、木箱を弾き飛ばし、荷車を追い越しながら迫ってくる。
レナが目を細める。
「……速くない?」
フィリアは即答した。
「かなり」
ゼルクは小型のまま前へ出る。
「ふん。所詮は毛玉」
「我が格の違いを見せてやる」
ノヴァはぽむの上に乗って見ていた。
完全に観戦姿勢である。
次の瞬間。
赤い毛玉が城門前で急停止した。
きゅいぃぃぃっ。
地面に線が入る。
人々が息を呑む。
煙が晴れる。
そこにいたのは――
巨大な赤い毛玉。
ぽむと同じくらい丸い。
ふわふわ。
もこもこ。
尻尾だけ妙に長い。
そして目はきらきらしていた。
口を開く。
「ぼむっ!」
レナが即答する。
「鳴き声がちょっと違うだけじゃない!」
人々はざわめいた。
「赤いのだ!」
「白いのと対になる感じ!」
「熱そうでかわいい!」
ゼルクが震える。
「我の順位が……!」
フィリアは現実的だった。
「たぶん下がる」
白いぽむが前へ出る。
赤い毛玉も前へ出る。
広場中央。
白と赤。
二つの毛玉が向かい合う。
静寂。
やがて白いぽむが言った。
「ぽむ」
赤い毛玉が返す。
「ぼむ」
数秒の沈黙。
それから二匹は同時に跳ねた。
もふん!
抱き合った。
群衆大歓声。
「姉妹!?兄弟!?」
「尊い!!」
「もっとやって!」
ノヴァは二匹を見つめる。
白くて柔らかい。
赤くて柔らかい。
どちらも寝心地がよさそう。
迷わず白ぽむと赤ぼむの間に飛び込んだ。
もふん。
白・銀・赤の三段クッション完成。
ノヴァは即座に目を閉じた。
フィリアが頷く。
「可愛い」
ゼルクは吠えた。
「ならば我も!」
黒い毛玉形態へ変身。
勢いよく飛び込む。
白ぽむ。
ノヴァ。
赤ぼむ。
黒ゼルぽむ。
四段重ね。
数秒後。
内側から声。
「ぼむ!」
「ぽむ!」
黒い毛玉だけ弾き出された。
ゼルクが転がって広場の噴水に落ちた。
ばしゃあん。
レナが膝をつくほど笑っていた。
その夕方。
掲示板更新。
第一位:ノヴァ&ぽむ&ぼむ(トリオ)79%
第二位:ゼルク(濡)21%
ゼルクが濡れたまま固まる。
「……濡?」
フィリアは説明した。
「今回の評価点」




