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75/113

75話 不憫なゼルク


到着した一行が見たもの。

人、人、人。

東門前の広場は祭りのような騒ぎになっていた。


「かわいいー!」

「こっち向いて!」

「触らせて!」

「パンあげる!」


群衆の中心。

そこにいたのは――

巨大な白い毛玉だった。

丸い。

大きい。

雪玉のようにふわふわ。

体長は荷馬車ほど。

耳は小さく、尻尾は極太。

目はつぶら。

そして動くたび、もふん……もふん……と揺れる。

レナが呆然とする。


「……なにこれ」


フィリアが即答する。


「強敵」


ノヴァは真顔になった。

確かに。

人気的な意味で。

白い毛玉は、のんびりこちらを見た。

そして口を開く。


「ぽむ」


沈黙。

レナが聞き返す。


「……名前?」

「ぽむ」


もう一度言った。

ゼルクが震える。


「名前まで可愛いだと……!?」


その場で即席人気投票が始まった。

通行人たちが紙を箱に入れていく。

五分後。


結果発表。

ぽむ 61%

ノヴァ 31%

ゼルク(小)8%


ゼルクが崩れ落ちた。


「我、増えてるのに最下位……!」


レナは肩を震わせる。


「いや、8%取ってるの偉いわよ」


フィリアは分析する。


「尖った層に人気」


ノヴァはぽむを見つめる。

相手はただ座っているだけ。

時々「ぽむ」と言う。

それだけで人が集まる。

強い。

ノヴァは肉を食べる手を止めた。

本気である。

ゼルクが立ち上がる。


「白いの、共闘だ!」

「今こそ我らの合体技を見せる時!」


レナが止める。


「人気投票に必殺技使うな」


フィリアは頷く。


「街が壊れる」


ぽむはのそのそとノヴァへ近づいた。

人々が息を呑む。

白き人気者同士の対面。

ノヴァも一歩前へ。

ぽむは鼻先を近づける。

ノヴァも近づける。

数秒の静寂。

そして――

ぽむがノヴァを、ふわっと抱きしめた。

もふん。

ノヴァが白い毛に埋まる。

群衆が大歓声を上げた。


「尊い!!」

「かわいいが二倍!」

「泣ける!」


レナが叫ぶ。


「まさかの友情路線!?」


毛玉から出てきたノヴァは、少しぼさぼさだった。

でも怒っていない。

むしろ落ち着いている。

ぽむの毛、かなり気持ちよかった。

ノヴァは考えた。

敵ではない。

ベッドだ。

そのままぽむの横に丸くなる。

ぽむも満足そうに「ぽむ」と鳴いた。


翌朝の掲示板。

第一位:ノヴァ&ぽむ(セット)87%

第二位:ゼルク(小)13%


ゼルクが紙を破りかけた。

フィリアが止める。


「伸びてる」


レナが笑う。


「おめでとう、単独人気者よ」


ゼルクは空を見上げて叫んだ。


「なぜ我だけ単独評価なんだぁぁ!!」


王都アルセリア。

掲示板の前で、ゼルクの叫びが朝空に響いていた。


第一位:ノヴァ&ぽむ(セット)87%

第二位:ゼルク(小)13%

通行人たちは拍手していた。


「黒いのも頑張ってる!」

「応援したくなる!」

「不憫かわいい!」


ゼルクが凍りつく。


「……今なんと言った?」


レナが肩を震わせる。


「新ジャンル開拓したわね」


フィリアは頷く。


「不憫枠」


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