74話 白いモフモフ
その頃ノヴァは、庭の芝生で丸くなっていた。
誰かが持ってきた肉を食べ、また寝る。
時々撫でられる。
時々褒められる。
ゼルクは夕方ボロボロで戻ってきた。
「なぜお前は追われぬ……」
ノヴァは首を傾げる。
何もしていないからである。
フィリアが通訳する。
「自然体」
仕事依頼
ギルド本部。
受付嬢が深々と頭を下げる。
「ぜひお願いしたい依頼があります!」
ゼルクが胸を張る。
「ようやく英雄らしい仕事か」
「聞こう」
受付嬢は満面の笑みで言った。
「迷子の子犬捜索です!」
沈黙。
レナが吹き出す。
「ぴったり!」
ゼルクが机を叩く。
「我は竜を討った英雄だぞ!?」
フィリアは頷く。
「でも見た目は近い」
結局、連れていかれた。
市場通り。
迷子の子犬は人混みに紛れていた。
だがゼルクは鼻を鳴らし、一瞬で匂いを追う。
裏路地。
木箱の陰。
パン屋の裏。
すぐ発見。
子犬はゼルクを見るなり駆け寄ってきた。
「わふ!」
ゼルクは固まる。
自分よりさらに小さい存在に懐かれた。
レナが拍手する。
「才能あるじゃない!」
翌日の掲示板。
第一位:ノヴァ 76%
第二位:ゼルク(小)24%
「迷子救出で株上昇!」
「黒いの、意外と優しい」
「ちょっとツンツンしてるのがいい」
ゼルクは読み上げながら震えた。
「……ツンツン?」
フィリアが淡々と説明する。
「新しい需要」
その夜。
庭で落ち着かないゼルクの前に、ノヴァが座る。
じっと見る。
そして前足で、にこっとする口元の形を作るような仕草。
レナが通訳する。
「笑え、だって」
ゼルクが顔をしかめる。
「我は威厳が――」
ノヴァがじっと見る。
ゼルクは渋々、口角を上げた。
にっ。
かなり怖い。
レナが即答した。
「それはやめて」
フィリアも頷く。
「逆効果」
その時。
王都の鐘が鳴った。
緊急警鐘。
兵士が駆け込んでくる。
「東門付近に巨大な獣出現!」
「しかも……白くて、もふもふで、やたら人気があります!」
全員がノヴァを見る。
ノヴァも自分を見る。
レナが頭を抱えた。
「人気枠のライバル来たぁぁ!!」
王都アルセリア。
緊急鐘が鳴り響く中、全員がノヴァを見ていた。
ノヴァも周囲を見回し、最後に自分の前足を見た。
自分ではない。
確認した。
レナが剣を掴む。
「東門、急ぐわよ!」
ゼルクは小型化したまま飛び乗る。
「人気枠の戦い……受けて立つ!」
フィリアは淡々と歩き出す。
「そこなの?」




