71話 ゼルクノヴァ・インパクト
グラシアードが大口を開く。
山脈ごと消し飛ばすほどの氷息が集まり始める。
ゼルクが叫ぶ。
「白いの!」
ノヴァも吠える。
互いの目が合う。
理解した。
次の一撃で決める。
白と黒の魔力が、空で交差し始めた。
北天王グラシアードの喉奥で、絶対零度のブレスが膨れ上がっていた。
白い光。
青い氷。
死そのものの圧力。
吐かれれば山脈が消える。
レナが叫ぶ。
「止めないと全部終わる!」
フィリアも両手に氷を集める。
「間に合わない」
その時。
空で旋回していたノヴァとゼルクの目が合った。
白銀の瞳。
赤い瞳。
言葉はいらない。
ノヴァは小さく吠える。
ゼルクは牙を見せて笑った。
「面白い。やるぞ、白いの!」
ノヴァの純白の翼が広がる。
風と光が集まる。
ゼルクの六翼が開く。
闇と雷が渦を巻く。
正反対の力。
本来なら弾き合うはずの二つの魔力が、空の中心で交差した。
白と黒が混ざる。
灰ではない。
星の核のような、眩い銀黒の光へ変わる。
レナが目を見開く。
「なにそれ……!」
フィリアが珍しく少し声を上げる。
「綺麗」
グラシアードが咆哮し、氷息を吐こうとした瞬間。
ゼルクが全翼を羽ばたかせる。
轟音。
空間が爆ぜる。
ノヴァが銀黒の流星となって射出された。
一直線。
世界を裂く速度。
その後ろに、ゼルク自身も黒雷を纏って追従する。
二頭で一つの流星。
技名
レナとフィリアが同時に叫ぶ。
「いけぇぇぇ!!」
空で二頭の咆哮が重なる。
ゼルクノヴァ・インパクト
銀黒の流星が、グラシアードのブレス直前の口腔へ突き刺さる。
一瞬、静止。
次の瞬間。
山脈全体が白黒の光に包まれた。
ゴゥ――!!
雪雲が吹き飛ぶ。
谷が揺れる。
遠方の湖が跳ねる。
レナとフィリアは衝撃で伏せた。
パウだけがなぜか楽しそうだった。
「ぱうー!」
光が収まる。
空には巨大な穴のように晴れた青空。
グラシアードは山肌にもたれ、ゆっくりと頭を下ろしていた。
鱗は砕け、王者の瞳から敵意が消えている。
「……見事」
「若き牙どもよ」
そう言い残し、古竜は深い眠りにつくように動きを止めた。
死ではない。
王として敗北を認め、眠ったのだ。
ノヴァとゼルクは、くるくる回りながら落ちてきた。
魔力切れである。
どさっ。
雪原に仲良く突き刺さった。
レナが駆け寄る。
「かっこよく締めなさいよ最後まで!」
フィリアは二頭を見下ろす。
「仲良し」
ゼルクは雪の中から顔だけ出して言う。
「違う」
ノヴァは隣で尻尾を振った。
完全に仲良しだった。




